クリエイターエコノミーは世の中をどう変えるのか?誰もが表現者になれる時代の新たな価値創造について
近年、世界でホットなテーマの一つとなっている「クリエイターエコノミー」。その市場規模は加速度的に拡大し、今後もさらに成長し続けるだろうと言われています。
そこで今回はクリエイターエコノミーについて、その概要や注目されている背景、世の中に及ぼす影響、そして企業にどのようなビジネスチャンスをもたらすのかを考察します。
クリエイターエコノミーとは?
クリエイターエコノミーとは、クリエイターが自らのスキルを活かして収入を得ることによって形成される、主にWEB上の経済圏のことを指します。その市場規模は世界で約1,042億ドル、日本円で約11兆円(2021年5月時点)と推定されています(NeoReach Social Intelligence API 社、Influencer Marketing Hub 社の共同調査)。
これまでクリエイターという言葉は、作家、陶芸家、画家、カメラマン、デザイナー、音楽家、映画監督など、限られた一部の表現者のみを表すのが一般的でした。
しかし今日では、YouTuber・ブロガー・インスタグラマー・ゲーム配信者・インフルエンサー・ライバー(ネットでライブ配信を行う人)など、幅広いジャンルで創作活動を行っている個人全般を指す言葉になっています。
こうしたクリエイターたちが、ネット上でファンやスポンサーと直につながり、コンテンツや作品を発表・販売して収入を得られる時代が到来したわけです。
SignalFire 社(米国)のデータによると、世界で 5000 万人超がクリエイターとして活動中で、そのうち 200 万人超がプロフェッショナルとして生計を立てています。
日本でも多くの人がクリエイターとして活躍しており、副業や趣味で創作活動を行って収入を得る人も増えています。
なぜクリエイターエコノミーが注目されているのか?
クリエイターエコノミーの拡大には、大きく分けて2つの背景があります。Web環境の進化と、社会情勢の変化です。
Web環境の進化としては、YouTubeの隆盛、SNSの発達、D2Cサイトの発達、クリエイター向けプラットフォームの進化などが挙げられます。いずれも、クリエイターが収益を上げやすくなる環境が整いつつあるという例です。
社会情勢の変化とは、主に新型コロナ禍による影響です。
コロナ禍で人々の外出機会が減り在宅時間が長くなったことで、YouTube、TikTok、各種ライブストリーミングなどでコンテンツを配信する人(クリエイター)、及び閲覧する人(オーディンス)が増えました。その一方で、BASE、Shopify、eluなどのD2Cプラットフォームを利用して個人がECサイトを開設。クリエイターとして自作の手芸やアート作品、グッズなどを販売することも容易になりました。
コロナ禍を機にこうした創作・販売(課金)活動を始めた人は多く、それに伴いクリエイター向けサービスもさらに発展する流れができたわけです。
これらの複合的要因から、クリエイターエコノミーが一躍注目されるようになったと言えるでしょう。
クリエイターエコノミーの登場は世の中をどう変える?
クリエイターエコノミーの登場により、新たな経済活動・消費活動が生まれつつあります。特に、個人でも収入を得る手段が増えたことが一番の大きな変化です。
YouTubeやインスタグラムなどのSNSを活用すれば、誰でも簡単にクリエイターとして活動できます。また、個人でマネタイズができるプラットフォームも増えており、今後は一部のトップクリエイターでなくとも、収入を得られるチャンスが広がるものと予想されます。
こうして新たなマネタイズの手法が普及すれば、さらに新たなサービスが開発・提供され、消費活動も一層活性化すると見込まれます。
一個人が消費者・供給者のどちらにもなれるようになった点で、クリエイターエコノミーの登場は大きな意味があると言えるでしょう。
クリエイターエコノミーの3つのカテゴリー
クリエイターエコノミーは、主に以下の3つのカテゴリーに市場が分けられます。
メディアプラットフォーム
Instagram・YouTube・Twitch・TikTokなど、配信コンテンツを作るための機能を内包するサービスのことをメディアプラットフォームと呼びます。
各メディアプラットフォームは、コンテンツの高度な処理に必要な最先端技術を提供し、クリエイターたちの新たなビジネス展開を支えています。
インフルエンサーマーケティング
SNS の浸透によって万単位のフォロワーを持つ発信者=インフルエンサーが登場、人によっては有名タレント並みの影響力を持つに至りました。
そこで企業が彼らに対価を支払い、SNS 投稿を介して商品をPRするインフルエンサーマーケティングが台頭。それに伴い、企業とインフルエンサーの間に立って契約交渉やマネジメントを行う代理店も出現するなど、市場規模は2022年までには150億ドルに成長すると予測されています。
オーディエンス(ファン)が直接課金するサービス
例えば、BASE やココナラで自ら商品やサービスを販売することや、note、Substackで文章をマネタイズすることなどが挙げられます。
他にもクラウドファンディングで出資を募ったり、ストアカやUdemyでオンラインコースを販売したり、17LIVE や SHOWROOM などオーディエンスが投げ銭(ギフティング)をするサービスなども含まれます。
クリエイターエコノミーが企業にもたらすビジネスチャンスとは?
クリエイターエコノミーの進展は、個人だけでなく企業にも新たなビジネスチャンスをもたらします。
例えば下記に挙げたような、クリエイターが求めるサービスやプラットフォーム、インフルエンサーマーケティングを活用したい企業のニーズに応えるサービスを提供できると、商機の拡大につながるかもしれません。
- クリエイターをサポート・マネジメントするサービスの提供
- コンテンツの作成に便利なツール・メディアの提供
- クリエイターが活躍できるプラットフォームの運営
- インフルエンサーマーケティングへの参入
- クリエイターとコラボしたコンテンツや製品の制作
- プランニング・効果測定といった分析ツールの提供
ほかにもコンサルティング、キャンペーンプランニングなど多彩なビジネス展開が考えられます。もちろん既存の企業だけでなく、スタートアップにとっても大きなビジネスチャンスが広がるでしょう。
まとめ
インターネットが普及しデジタル化が浸透するまでは、企業が生産したものを個人が消費するという「一方向」の経済活動が主流でした。
それに対してクリエイターエコノミーは、消費者としてのみ経済活動を行っていた個人が、発信・販売者側としても活動できる「双方向」の経済圏となっています。
無名の個人でもクリエイターとして活躍して生計を立てられるという、ひと昔前では考えられなかったことが今、世界の新たな価値基準となりつつあります。
まさに今後の働き方やライフスタイルを考えていく上で、私たち一人ひとりが大きな転換点を迎えているのかも知れません。
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