【社内報】連載・定例コーナーのフォーマットデザイン
社内報づくりを行う際に「フォーマットデザイン」という言葉を耳や口にすることは多いのではないでしょうか。
今回の記事ではそのフォーマットデザインについて、少し原理的なお話をまじえながら、その取り入れ方や要点、取り入れるための流れについてお伝えしてまいります。
フォーマットデザインを作る意味
社内報をはじめ雑誌や広報誌など、冊子状の定期刊行物では主に、特集のような号単位でテーマを変える記事と、連載や定例と言われるような、毎号同じテーマで掲載対象を変える記事で組まれています。
このような定期刊行物は通常、レギュレーションといった、レイアウトやカラーリング、写真の表現、写真や図と本文などの文字情報のバランス、誌面全体から醸し出す印象や雰囲気についての基準を設けて、その基準をもとに制作を行います。
デザインのレギュレーションは、その冊子が何を伝えるものなのかといったことや、どのような認識を受け手に持たせるのかといったことを定める「コンセプト」や、それに基づく統一性の在り方といった、媒体に持たせる趣旨やねらい、特性にあわせて、媒体ごとにオリジナルで作成します。
その意義や意図は、たとえデザイナーが代わっても、冊子の印象や雰囲気が変わらずに保ち続けるようにすることのほか、さらには重要な点としては、社内報などの定期刊行物が工業製品だということが挙げられます。
つまり、他の工業製品と同様、発行日という納期はもちろんですが、制作費、印刷費といった費用を要するなど、期待される品質と効率、採算といったQCDを統合的に考慮して、各分野の専門家を稼働させて制作するにあたって、デザインのレギュレーションは極めて重要なものとなります。
連載や定例コーナーのフォーマットデザインとは、そうした考え方のもとで冊子全体のレギュレーションに沿って作成する、そのコーナーの趣旨に合わせたデザインの枠となります。
まずは誌面のマージンと版面を決める
フォーマットはまず、冊子全体に共通させる、誌面のなかで文字や写真などのビジュアルを配置する最大の範囲を決めます。
この枠の外側から冊子の縁までの間のことをマージンと言い、枠の内側を版面(ハンヅラ)と言います。
マージンを広くすると版面は狭くなり、版面を広くするとマージンは狭くなります。ただ、これは単にどちらが広くてどちらが狭いかという話ではなく、マージンが広いと上質な印象になったり、逆に班面を広くとるとたくさんの情報が詰まった冊子だといった印象を醸し出すなど、それらの広い狭いもまた、読者に対するその媒体の意味や意図を伝える重要な情報(ノンバーバルな情報)となりますので、版面やマージンをいかに設計するかということが、社内報などの冊子をデザインする上で、最初かつ最大の要点となります。
また、ノンブルと言われるページの数字や、柱と言われるノンブルの横に配置する、冊子の名称や号数などを記すパーツの位置とそれらの文字のサイズも、マージンや版面を決める際に同時に検討します。
次に本文の段数を決める
本文の段数の「段」とは、ページの中で区分けする本文の塊のことを言い、縦書きの社内報の場合は通常、四段や五段が基準となり、横書きの社内報の場合は二段か三段が基準となります。
ただ、この「段」の数の違いもノンバーバルな情報としてさまざまな影響があります。
通常は段数が多いとカジュアルな印象になり、少ないと厳かな印象になります。
ですの、若手社員を重点ターゲットにする場合は段数を増やしたり、トップメッセージに威厳を持たせたい場合は段数を減らしたりします。
とは言っても段数を増やし過ぎると一行あたりの文字数が少なく読みづらくなったり、段数を減らすことで一行あたりの文字数が増えて読みづらくなったりといったことにもつながるため、通常はA4の縦書きの冊子の場合は最小二段、最大五段、横書きの場合は最小二段、最大三段とされており、縦書き横書きともに一段にしたい場合は、段の幅を縮めて段の上下(縦書き)や左右(横書き)に余白を加えたり、写真などを配置したりして、可読性を確保します。
また、段数を増やすことで、段と段の間の余白が多くなり、結果的に掲載できる文字数が減りますので、こういった点からもフォーマットを決める際に、段数をどうするかという点は、先ほどのマージンや版面を決める際と同様、しっかりと練っておく必要があります。
少し余談ですが、上級者のテクニックとして段数の決定にあたり、変則四段や変則五段(縦書き)、変則二段や変則三段(横書き)などを設定する場合もあります。
これは段と段の間の余白を均一にするのではなく、どこかの間だけ広くとるという方法です。この方法をとる目的は、動きを感じる誌面にしたり、風通りのよい誌面にすることで、予めフォーマットという、レイアウトや装飾を施すための基盤となる設計図に、その意図を組み入れることにあります。
コーナーの意図や主なターゲットに合わせて図版率を決める
マージンや版面、段数が決まると、通常はここからコーナーごとの意図や特性に合わせた基準を設定していきます。
その際、まずは図版率を決めます。
図版率とは図と版、つまり図が写真やイラスト、図表といったもの、版が見出しや本文を表しており、図と版の比率のことを指します。
図版率において図の率が高い場合はビジュアルの多い、見る誌面といった印象で、版の比率が高い場合は読み物といった印象になります。
一般的には図の率が高い方が、若い方たちには好まれる傾向にあるとされているのですが、図の率を高めることで、言葉で伝える情報が少なくなるといった懸念を持たれる場合があると思います。
ただ、写真のキャプションは図に入るため、図版率の図の率を高めながらも、キャプションを充実させることで、文字による情報を確保することも可能です。
一方で、図の率が高くても、写真やイラストの大半を本文の流れのなかに組み入れたり、表組に入れる文字数が多いと、ビジュアル型ではなく読み物型の印象になる場合があるため、結果的には文字情報の多い誌面やそのように感じる誌面となり、図の率を高める効果は薄らいでしまいかねません。
逆に版の率を高める効果としては、この誌面には大切なことが記されているといった印象になる場合が多いため、トップメッセージなどでは他のコーナーと比較して、版の率を各段に高めることが効果的だと言えます。
ジャンプ率によってターゲットを狙い撃ちする
ジャンプ率とは本文とその他の掲載要素の大きさの差や、掲載要素同士の大きさの差、あるいは写真に写る対象物の大きさの差のことを指します。
ジャンプ率が大きいとインパクトが強く、躍動感のある印象や力強さのある印象になり、小さいと真面目な印象や大人っぽい印象になります。
そのため、若手社員の頑張りを伝えるような誌面にしたい場合は、一枚の写真を大きく扱ったり、複数の写真を扱う場合もその大小差を大きくしたり、同じサイズの写真でも片方はアップにして、もう片方は引きの写真にしたり、あるいは本文に対して見出しを大きく太くしたりすると効果的です。
その逆で、大人っぽい印象やスマートな印象にする場合は、ジャンプ率を落とすことで、その印象を醸し出したりします。
これらの印象は版面内の余白の扱い方も影響するため、ジャンプ率だけでねらい通りの誌面にするには完全ではないのですが、誌面の印象に対して極めて大きく影響しますので、デザインの前の企画の段階で、誰の気持ちに響かせたいコーナーなのか、どのような印象や読後感を持たせたいのかを具体的にしておき、デザインする際にその意図を頼りに、どのくらいの差を持たせれば、その意図が実現するのかを検討されることをおすすめします。
コーナーの意図にあった共通エレメントを作成する
エレメントとは要素のことを指しますが、共通エレメントとは、例えばコーナータイトルや、そのコーナーに配置する図形、イラスト、見出しや本文の書体などが該当します。
コーナーごとの意図はもちろん、個性を表すためには先にお伝えしているような、マージンや版面、段組み、図版率、ジャンプ率だけでは十分ではなく、パッと見るだけでそのコーナーが何を伝えようとしているコーナーなのかを伝える必要があり、その役割を果たしてくれる素材が共通エレメントとなります。
なお、共通エレメントは各コーナーの個性を出すために不可欠だということをお伝えしましたが、なかにはそういったエレメントを持たずに、どのコーナーのタイトルも同じ表現にしている冊子もあります。
特にページ数の少ない冊子や、特集のウエイトが大きい冊子の場合は、コーナーごとの共通エレメントを持たないことで統一感を高めたり、特集のインパクトを強くしたりするといった工夫がなされていたりもします。
確かにコーナーごとに設定するエレメントが過剰に装飾されすぎると、冊子全体としてはうるさく感じたり、あるいはエレメントだけではなく、冊子の中で段数や図版率を変えすぎると、冊子ではなくチラシの寄せ集めのようなものになってしまいますので、コーナーごとの共通エレメントや、先にお伝えしたコーナーのフォーマットデザインを作るさまざまな要点は、冊子全体の統一感を踏まえながら、バランスを見て判断していくことが大切です。
掲載する素材を配置する枠を決める
連載や定例コーナーのフォーマットデザインを決めることは、先ほどお伝えした共通エレメントの一つであるコーナータイトルのデザインや、掲載する素材の種類、あるいは量といったことだと認識されている方も多いかと思います。
ただ、冒頭でお伝えしました通り、コーナーごとのフォーマットデザインを決める意義や意図は、冊子づくりにおけるQCDを調整することだとお伝えしました通り、コーナーごとの個性を出すことだけではないという認識が大切です。
この点について、それを直接的に決定づける点が、掲載する素材を配置する枠を予め定めておくことです。
これがないと、毎回真っ白なキャンバスに絵を描くような作業となり、効率性が極めて低く、完成する誌面の精度も改善ではなく毎回刷新することになりますので、品質が高まらなかったり、余計なコストが必要になったりします。
ただ、その枠は絶対的なルールではなく、あくまでも基準というレベル感に留めておき、号を重ねるごとに改善や改良を進めることは大切ですし、ときにはそれを少し逸脱させることで、小さいながらもこれまでとの違いが出ますので、その号だけの個性が表現できたりもします。
繰り返しになりますが、大切なことは最初に決めたルールを守り抜くことではなく、それはあくまでも最初の段階での最善の枠組みとしてとらえ、改善や改良、創意や工夫をしていくことが、ルールを守ること以上に大切だと思いますので、QCDを考慮しつつも、常に最善を目指して取り組まれることをおすすめします。
まとめ
今回は連載や定例コーナーのフォーマットデザインの考え方と、取り入れるためのポイント、その進め方についてお伝えしました。
社内報のデザインは「エディトリアルデザイン」という、数あるデザインの専門領域のなかの編集物のためのデザインという領域に該当します。その領域はグーテンベルグが印刷機を発明して依頼、さまざまなナレッジが開発されており、さらに歴史をさかのぼると、レオナルド・ダ・ビンチ、あるいはギリシャ神殿などにある黄金比など、古代ギリシャなどで培われたナレッジや、神様の法則といわれる自然科学や自然哲学などが基礎となっている、いわば人類が社会的発展を遂げる過程のさまざまな叡智が結集された領域なのです。
社内報づくりは何かと大変ですが、ときにはそのような人類共通のロマンを胸にして、その創造過程を歩んでいるんだといったような思いで、社内報づくりをされてはいかがでしょうか。
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