社内報における年間計画の考え方と手順
社内報の年間計画に関する考え方や内容は各社さまざまあります。
今回の記事では、「計画」という考え方や意義を踏まえて、各社の社内報の年間計画に関する考え方をお伝えします。
ただ、大切なことは計画を立てることではなく、目的や中長期的な目標に向けて実行することですので、お伝えすることを全てを取り入れる必要はないと思います。
そういった考え方で読み進めていただくことで、社内報のご担当者の方々の、社内報の年間計画を立てる上でのお困りごとやお悩みを解消するような、お役に立てる情報や新たなヒントなどもあるかと思いますので、ぜひご覧ください。
社内報づくりに年間計画が必要な理由
社内報の年間計画が必要な理由は主に3つあります。
①社内報をレベルアップさせる
②制作進行を安定化させる
③予算を適切かつ有意義に使う
①社内報をレベルアップさせる
社内報に限らず、何かでレベルアップを図るには、ゴールを定めるとともに、ゴールから見た今を現在地として認識し、ゴールと現在地の距離を測り、必要なステップを導き出すことが有効だとされています。
社内報の年間計画は、社内報のゴールと現在地の間にある問題や課題を捉え、それを解決していく手順や段取りを考えて、次年度の1年間で何をするかを具体化することです。
では、社内報のゴールとは何か。
それは発行目的が叶ったときの社内の状態や状況です。発行目的は基本的に、会社が目指す姿と直結していますので、発行目的が叶ったときの状態や状況とはつまり、会社が目指す姿であり、これが社内報のゴールだと言えます。
また、社内報のゴールと現在地の間にある問題や課題は何か。
それは、社内のタテ・ヨコ・ナナメの3つの方向の関係にある垣根や壁、隔たりと、従業員と社内報との距離感です。
社内報の年間計画づくりは、社内の3方向の関係にある問題や課題と、従業員と社内報の距離感の問題や課題の解決策を、会社が目指す姿というゴールへの道筋を年という単位で構築し、運用していくための指標や基準づくりですので、これを毎年しっかり考えるということは、結果的に社内報をレベルアップさせていくということにつながります。
②制作進行を安定化させる
制作進行を安定化させるとは、制作進行にムリやムラ、ムダが発生しないように、予め時間的な制限や制約を設けておきます。
社内報づくりは製品開発や製造と比べると、非常に少ない人数で行うため、業務が属人化しやすいという特徴があります。
業務が属人化すると、仕事にさまざまなムリやムダ、ムラが発生し、仕事のコントロールが効かなくなってしまうため、社内報制作では年間計画を立てることをお勧めします。
③予算を適切かつ有意義に使う
社内報制作の予算は通常、1年間で割り出されます。
そして、その予算は通常、冊子版では1年間で発行する号数で割り振ったり、Web版では月単位で割り振ったりします。
もちろん、このような使い方でも問題はないのですが、限りあるお金をいかに有効かつ有意義に使うかという点で、使う月と抑える月を上手にやりくりする家計と同じように、社内報も、しっかり予算を掛けて重みやインパクトを感じるような号と、予算を抑えながら最善を尽くす号を分けて、上手にやりくりを考えるという方法も、年間計画を立てることによって可能となります。
社内報の年間計画の書面に入れる項目・内容
「計画」を立てるという観点で必要な項目ですが、社内報の場合は年間計画を、年間で実施する特集のテーマや、一部のコンテンツの入れ替え、あるいは改訂といったことを指す場合もありますが、以下の内容をご覧いただくことで、特集のテーマの考える際の意外な観点が得られるといったことにも役立つ部分もあるかと思いますので、ぜひご一読ください。
年間計画に必要な項目・内容
- 発行目的・編集方針
社内報の年間計画をはじめ、計画とは目的を果たすためのプロセスを、内容軸、時間軸、予算軸で定めるものです。そのため、計画書には発行目的や、発行目的を果たすための方法の指針である編集方針を記す必要があります。
発行目的や編集方針は一般的に、単年度で変更することはありませんが、年間計画には毎回、必ず記載しておくことが望ましいです。
- 年間の目標・KPI
年間計画とは、目的を果たすまでの道筋を描き、1年間でその道筋のどの点まで到達するかを定めて、それを数や量で表すことです。そして、目標とはその数や量のことを指します。
ただ、社内報は目的、つまり発行目的が数値で表しづらい場合や、社内報だけに求められる内容ではない場合が多いため、年間計画にあたっては、発行目的と関連づけて目標を定めるのではなく、社内報の編集業務に関することを目標にするという例が多くみられます。
その例としては、閲覧率の向上や社内報制作に関する業務量、あるいは業務時間の削減などがあります。
KPIの場合は発行目的をKGIとして計測可能な指標を設けるため、発行目的と直結する数値を記すことが必要となります。
- 年間のテーマ・コンセプト
年間のテーマとは、次年度に実行する社内報の内容やその全体像のほか、重点的に取り扱う課題などで、年間のコンセプトとは、次年度の社内報の有り様を定めたものとなります。
テーマはイメージしやすいと思いますが、コンセプトは少しイメージしづらいと思います。さらに、コンセプトを定めるためには発想のテクニックや知見、知識も必要ですので、コンセプトを作り慣れていない方はまず、年間のテーマを定めることをお勧めします。
- コンテンツのテーマ・掲載対象
コンテンツのテーマは年間のテーマを、コンテンツの種類で分類し、号や回などに割り振って行きます。特集についてもこの項目に記します。
掲載対象は、割り振ったテーマをもとに、具体的に何を取り上げるか、どこを取り上げるか、誰を取り上げるかを記します。
- 予算配分
予算配分ではまず、年間の予算を号や月に分け、その中から印刷など、固定的な金額を差し引いた金額を編集費用として各コンテンツに配分していきます。
このとき、特集のテーマや内容をもとに、上手なやりくりを考えて割り振るように検討し、特集のプランを再調整することをお勧めします。
<冊子版>
- 1号あたりの標準ページ数とコンテンツ
冊子版については1号あたりの標準のページ数とコンテンツを示します。
こうすることで予測し得ない情報を入れなければならなくなったり、変更が求められるようなことが起こった場合でも、当初計画していたものを基準に調整したり対応したりすることが可能となります。
- 年間の特集テーマ
特集はテーマによって編集や制作負荷に差が出ます。年間計画を立てる際に特集のテーマを明確にしておくと、事前に準備を進めるといった調整が可能となり、社内報制作に関する業務のムラやムリを抑えることにつながります。
- 編集スケジュールと担当の割り振り
各号の編集スケジュールを個別に立てるのではなく、年間計画を立てる段階で1年の間に発行する各号のスケジュールを予め立てておくと、個人としても業務量のバランスを調整することができるとともに、関係者の調整もスムーズになります。
また、編集スケジュールを予め具体化しておくことで、担当者同士での役割分担も事前に取り決めることができるようになります。
<WEB版>
- コンテンツ別更新スケジュール
WEB版はガントチャートといわれる、横軸にカレンダーを、縦軸にコンテンツを置いた表で管理し、運用していきます。
記事の編集期間や公開のタイミング、頻度はコンテンツごとに異なりますので、更新スケジュールはコンテンツごとに検討し、それらを一覧で見られるようにします。
- コンテンツ別の掲載テーマと担当の割り振り
コンテンツ別更新スケジュールの表には、それぞれのコンテンツの更新ごとのテーマと担当者の名前を記入します。
社内報の年間計画を考えるポイントと手順
社内報の年間計画を考える手順はさまざまですが、そのなかでも確実に押さえておくべきポイントと、そのポイントに基づく手順についてお伝えします。
社内報の年間計画を考える4つのポイント
①タテの関係の問題や課題
②ヨコの関係の問題や課題
③ナナメの関係の問題や課題
④社内報の問題や課題
①タテの関係の問題や課題
タテの関係は、上司と部下の関係をはじめ、経営と従業員といった上下の関係を表します。
社内報において、この関係で捉える問題や課題は、上司と部下の関係よりも、経営と従業員との関係の方が、年間計画を立てる際に押さえておくべきポイントの主な対象となります。
具体的には、企業理念やビジョン・経営戦略・経営方針・経営計画に対する従業員の認知や理解、共感のレベルが該当します。
また、仕事に対する意識やモチベーションのレベルや、経営層と従業員との距離感も対象になります。
②ヨコの関係の問題や課題
ヨコの関係は、同僚や同期といった関係のほか、部署間の関係など、従業員を中心にした横方向の関係を表します。
社内報において、この関係で捉える問題や課題は、同僚や同期の関係はもちろんですが、より広範囲な見方で、部門や職種などの垣根を越える相互の理解や尊重、全社的な一体感といったことが対象になります。
近年は「ダイバーシティ&インクルージョン」が経営課題として重視されるようになりましたが、これも社内全体や職場内の良好で良質な人間関係やその意識づくりという点で、社内報ではヨコの関係を問う、重要な対象と言えます。
③ナナメの関係の問題や課題
ナナメの関係は、一般的には従業員を起点にして、その従業員から見た場合の部署を越えた全ての関係と言われます。ただ、社内報の場合は、従業員それぞれが直接関係しているわけではないけれども何らかの影響がある関係や、あるいは従業員と間接的につながっている関係を表しています。
主な対象としてはステークホルダーとの関係など、会社を起点とする関係や、企業風土やカルチャーといった、人やモノではない、雰囲気や「らしさ」といったことが、その対象となります。
④社内報の問題や課題
①〜③は社内報として対応すべき問題や課題でしたが、社内報の問題や課題は、社内報と従業員との関係における問題や課題を示しています。
その内容は、例えば読まれる度合いや効果が対象となります。読まれる度合いとは、対象となる従業員の何割が見ているかといったことで、閲覧率が該当します。効果とは認知や理解、共感、意欲といった、読まれたテーマに対する読んだ従業員の意識の変化や深化が該当します。
そのほか、伝え方や見せ方を含めた社内報に対する愛着や好き・嫌いといった点も、年間計画を立てる際に押さえておくべきポイントの主な対象となります。
社内報の年間計画を考える手順はまず、①〜④の観点でゴールを起点に問題や課題を網羅的にとらえます。
それをもとに、次の1年間でゴールに近づくために達成しておくべきことや、達成しておきたいこと、つまり次年度に目指すこと(到達地点)を決めます。
そしてその到達地点に辿り着くために、いつ、どのようなことをするのかを、先ほどの①〜④の観点で整理して、スケジュールや予算計画として具体的に落とし込んでいきます。
社内報の年間計画を立てる際の注意点
ここまで、社内報の年間計画を立てる理由、必要な項目や内容、考えるポイントや手順についてお伝えしてまいりましたが、最後に注意するべき点についてお伝えします。
社内報の年間計画を立てる際の注意点は3つです。
・共有できる
・実行できる
・調整できる
共有できる
これは、社内報制作に関わる人の誰が見ても、この1年間で何を目指して、いつ、どのようなことをするのかといったことが明確にわかるということです。
また、関係者全員が一丸となって意欲的に取り組む機運を生み出すことも大切ですので、この計画を実行することが、目指す姿へのステップとして、あるいは解決したい問題や課題に対して有効だと感じられる内容になっていることが、より良い計画にするために欠かせないポイントとなります。
実行できる
計画を立てる際に欠かせないポイントの二つ目は、確実に実行できる根拠や裏付けがあることです。計画は周囲と関係し合いながら実行していくための指標や基準ですので、実行できる確からしさがない計画は、希望や願望、あるいは無謀と言えます。
加えて、これは「共有できる」の際にもお伝えしましたが、いつ、どのようなことをするのかといったことが示されていない計画は、実行することが不可能ですので、これらが具体的に示されていない計画は計画ではなく、単なる「想い」です。
調整できる
どれだけ緻密な計画でも、その先には予測不可能なことや、計画を妨げる出来事がたくさん待ち受けています。
そのようなことが起こった場合でも対応できるように、計画に柔軟性を持たせておくことや、そういったことが起こることを想定しておくことはもちろん、その認識を関係者とも共有しておき、予測不可能なことや計画を妨げることが起こったと同時に、速やかに対応する準備や対策をしておくことが大切です。
まとめ
社内報の年間計画を綿密かつ網羅的に立てようとすると、お伝えしたようなことに全て対応する必要があります。
ただ、冒頭でもお伝えしましたように、本当に大切なことは、計画を立てることではなく、目的や中長期的な目標に向けて実行することと、実行できる計画を立てることです。
お伝えした情報が、社内報の年間計画を立てられる際の何らかのお役に立つことができると嬉しく思います。
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