社内報コラム

【エンタメの世界はヒントであふれている】 第1回 南総里見八犬伝から学ぶ

【エンタメの世界はヒントであふれている】 第1回 南総里見八犬伝から学ぶ

皆さんは、曲亭馬琴(きょくてい ばきん)によって著わされた『南総里見八犬伝』(なんそうさとみはっけんでん)をご存じでしょうか。

昨年公開され話題になった、山田風太郎原作による『八犬伝』という映画で新たに認識された方も多いかと思います。

そして『ドラゴンボール』や『ONE PIECE』をご存知の方は、もっと多いのではないでしょうか。

これらの作品と『南総里見八犬伝』は密接な関係にあり、その関係性については各所で語られていますが、あえて繰り返すなら「運命に導かれた“仲間探しの冒険”、“絆と奇跡”による“究極目的の達成”」が人々を魅了してやまない、といったところでしょう。

今回の記事では『南総里見八犬伝』の系譜は、なぜ人々を魅了してやまないのか〜少年ジャンプワールドからヒントは探れるか?〜としてインターナルコミュニケーションのヒントをシリーズでお伝えしていきます。

『南総里見八犬伝』というストーリーテリング

『南総里見八犬伝』は少年ジャンプワールドとも言えるストーリーテリングの基盤でもあるのです。

ストーリーテリングという手法は、ここ最近では“ナラティブアプローチ”として、インターナルコミュニケーションの世界でも活用されるようになってきています。

人々が惹かれ続ける物語の系譜

運命・冒険・仲間探し・絆・奇跡、という5つのキーワードを基盤とした物語が“究極目的の達成”という大団円を迎える物語に、人は200年以上も魅力を感じ続けてきて、おそらく、それはこれからも変わらないでしょう。

もっとも、『南総里見八犬伝』は『水滸伝』や『三国志演義』の影響を色濃く受けていて、それらも合わせるとおよそ500年以上ということになります。

この普遍的な物語の系譜には基盤となる5つのキーワードだけでなく、“玉”や“痣”、“得意技”や“各々の武器”といったような、重要アイテムや登場人物の特徴も受け継がれている作品も多く、それぞれの物語に厚みと多様性をもたらしています。

皆さんご存じ『ドラゴンボール』や『ONE PIECE』以前では、70年代に絶大な人気を誇り、少年ジャンプ読者を激増させた『アストロ球団(これも少年ジャンプですね)』では、“玉”や“痣”といったファクターがストレートに引用されていて、数々の魔球や必殺技が繰り出されるバトルはとても熱量が高く、『南総里見八犬伝』から少年ジャンプワールド形成へ至る記念碑的な作品ともなっています。

『ダンダダン』〜異形の物語の交錯〜

『南総里見八犬伝』のもう一つの重要なファクターである“オカルト的要素”にも目を向けてみましょう。

『南総里見八犬伝』をより魅力的な物語として、その超常現象や霊能力が渦巻く世界が大きな役割を果たしていますが、“玉”というアイテムをオカルティックな世界における霊的エネルギーの象徴として物語の核に据え、展開する物語が『ダンダダン』と言えるでしょう。

妖怪変化、霊的な影響、運命の糸。とりわけ、妖怪変化といった異形の者たちに『ダンダダン』では宇宙人たちという近代以降のオカルティックな世界を加味し、数百年の時を超えて運命の物語は交錯していきます。

どちらの物語も、仲間が集結して敵と戦い勝利し(時には敵だった者が仲間になっていくこともあり)、オカルティックな体験を共有することで登場人物たちの絆(エンゲージメント)は深まっていき、信じ合い、助け合うことで自然と一体感が生まれ、個々の能力を遥かに超えた力を発揮していく様が描かれていきます。

展開はテンポ良く魅力的で厚みがあり、その少年ジャンプワールド的な世界は、それを享受する人の感性によって変容し、私たちの心を揺さぶり、新たな視点を与えてくれ、私たちの心を掴んで離しません。

これは、意図されたオマージュなのでしょうか。

時代と文化を超えた、人々を引き付けてやまない物語の普遍性が偶然にも交錯したのでしょうか・・・。

しかし、そこだけにスポットを当てて探りを入れるのは野暮というものでしょう。

余談になりますが、『ダンダダン』では過去のレガシー作品に対する多様なオマージュも散りばめられています。

著名な作品からの多くの引用。他にも、気づいた時には思わずニヤリとしてしまう、たった一コマしか出てこない引用などなど。

これらさまざまな角度から私たちを楽しませてくれる仕掛けたちも、演出面において、何らかのヒントになるかもしれません。

そこに、ヒントはあるかもしれない

ここまで駆け足かつ、かいつまんで『南総里見八犬伝』の系譜について触れてきましたが、人を惹きつけてやまない物語の普遍性から、何らかのヒントが見えてきたのではないでしょうか。

例えば、何らかのプロジェクトをインターナルコミュニケーションにおいて発信し、周知させようとした際に、真っ先に思いつくのは社内報で取り上げることかもしれません。

しかし、ただ単にプロジェクト内容とメンバーを羅列しただけでは、その意義や効果、熱い思いはなかなか伝わらないでしょう。

なぜなら、その手法では、そのプロジェクトの“物語”が見えてこないからです。

では、その“物語”を紡いでいく時に、どのようにすれば、その意義や効果、熱い思いをドラマチックに伝えることができるのでしょうか。

そのヒントは『南総里見八犬伝』という物語の系譜の中にあるのではないでしょうか。

映画でも小説でも漫画でも、それらを楽しむ中で心に響き、記憶に残った作品をもう一度、今度は別の角度から再見してみても面白いかもしれません。

ただし、あまり固くならず、肩の力を抜いて楽しむことを心がけてください。

自然と心のアンテナに響いたものから得たヒントであることが重要です。

なぜなら、それを享受する人々には、自然とその“物語”に心を揺さぶられてもらいたいからです。

ここまで述べてきたことは、一つの解釈にすぎません。

皆さんは、『南総里見八犬伝』の系譜からどのような視点を導き出すのでしょうか?

また、全く別の作品の系譜から、既に大きなヒントを探りあてているのでしょうか?

次回の【エンタメ世界はヒントであふれている】もご期待ください!

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