【エンタメの世界はインナーコミュニケーションのヒントであふれている】第9回 インナーコミュニケーションの“動脈硬化”には“ユーモア”が効く?

映画『スティング』的ユーモアと一体感。
昨年(2025年)9月16日、名優であり名監督でもあったロバート・レッドフォードさんが亡くなりました。“演技と製作の両方で成功を収めた映画人”の地位をハリウッドで初めて確立した人物としても有名で、数々の名作に出演し、また、数々の名作の監督・プロデューサーを務めてきました。
そんなロバート・レッドフォードさんの出演作の中でも、ポール・ニューマンと共演した『スティング』は、特に筆者のお薦め作品です。
今回は、その『スティング』の魅力をインナーコミュニケーションの課題解決に役立つヒントを探る視点から見ていきます。
目次
“仕掛け”を共有すると、関係が温まり血流が良くなる
1973年公開のこの映画をご覧になったことがある方は多々いらっしゃることと思いますが、半世紀以上にも渡って愛され続けているのはなぜでしょうか?
ロバート・レッドフォードとポール・ニューマン演ずる詐欺師コンビが悪党を手玉に取る物語は、巧妙に仕掛けられる「だましの連鎖」に終始ワクワクしっぱなしです。最後の“大どんでん返し”に「やられた!」と思いつつも、観終えたあとの気分には、なぜか清々しいものがあります。
この物語は、最後の“大どんでん返し”に向かって仲間と共に様々な仕掛けを施していく過程に面白さがありますが、それはプロジェクトの共有の面白さでもあります。
プロジェクトの進行は、一つの目的に向かって様々な仕掛けを進めていきますが、インナーコミュニケーションが動脈硬化を起こしている組織は、「目的=ゴール」だけが強調され、仲間と一緒に進んでいく感覚が弱くなります。
その動脈硬化がうかがえる現象として、
- 情報が詰まる
伝わらない
来ない
流れない
- 部署間に壁ができる
“あっちはあっち”
“ウチはウチ”
- 上下の会話が重くなる
本音が言えない
誤解を恐れる
聞かれてもうれしくない
- 何をやっても「儀式化」してしまう
定例会議
定例報告
定例の資料づくり
などが挙げられます。
そこで、ちょっとしたことですが例えば「このメールの意図は?」「この会議の目的は?」「このプロジェクトの裏テーマは?」といったようなことが共有されると仕掛けの意味が深化され、メンバー間の会話が増え壁が薄くなり関係性が温まり、血流が良くなります。
成功だけを求めるのではなく。共に進める感覚、そして、呼吸を合わせる快楽(=楽しさ)が主役になることで、コミュニケーションが円滑に流れ出します。
情報共有自体が“楽しいゲーム化”されることで、その楽しさがチームの積極性を生み出すかもしれません。人は“楽しい”と感じる行為には積極的になるのですから。

ユーモアという“カテーテル”により、一体感も増していく
映画の中では、スコット・ジョプリンの名曲「ジ・エンターテイナー」が軽快なエッセンスとなり、絵本のように場面を仕切るタイトルカードにより「古き良き時代の寓話」として描くことで、殺しや裏切りの世界が“粋なエンタメ”へと昇華します。また、悪役を演ずるロバート・ショウの芝居にもどこかしたコミカルな部分があり、ユーモアとスタイルを醸し出しています。
そして、主人公と仲間たちは、ユーモアさえも共有しながら悪党を手玉に取る仕掛けを進めていきます。
そのユーモアは何をもたらすのでしょうか?
主人公の仲間たちは、様々な合図、ウインク、軽口、ジョークなどを交えて連携していきます。そしてそれらは、軽快なリズムや遊び心を生み出し、固い話をスムーズに浸透させていく効果を生み出します。
もう一つ、大袈裟に言ってしまえば“ある種の恐怖”をも溶かす効果にもつながります。多くの場合、先に述べた、組織における動脈硬化の正体は“恐怖”です。もしくは、“正しさの過剰”とも。
すなわちそれは、怒られたくない、嫌われたくない、だから余計なことを言いたくない・・・最終的には失敗したくない、という感情です。この“見えない恐怖”が血管をキュッと細くし、動脈硬化をもたらすのです。
勿論、ここで言うユーモアとは「“ミスを正当化する”ことではない」ということは言うまでもありません。ユーモアという“カテーテル”を通すことにより、心理的安全性が生まれ、会話も増え、仲間と一緒に進んでいく感覚も強まり、一体感が増すという効果が期待されるのです。
大団円の先にあるもの。“余韻のユーモア”が、次につながる空気を育む
そして物語のラスト、主人公たちはユーモアを備えた一体感により大団円を迎え、メンバーたちは「ククッ」と笑って各々の居場所へと去っていきます。
それは、決して成功を誇示せず、失敗を責めず、結果を静かに共有し合うということです。そんな軽やかな空気が次のプロジェクトへの余韻となって流れていきます。
動脈硬化から解き放たれたチームは、次のプロジェクトでも必ずや大団円を迎えることができるでしょう。こうした軽やかさは、高い成果を出すチームの特徴と言えるのではないでしょうか。
インナーコミュニケーションの力で、そんな組織へとアップデートしていくのは、あなたのちょっとしたユーモアかもしれません。

余談:観る者を巻き込む仕掛け
最後に少しだけ、ユーモア目線とは違う話をしておきます。
この作品は、敵を嵌める仕掛けのみならず、観る人々を「あっ」と言わせる仕掛けも散りばめられています(ネタバレになってしまいますので本稿では語りません。未見の方は観てのお楽しみということで)。特にラストの仕掛けは圧巻ですが、こういった仕掛けは観るものを観客から“体験者”へと変えていきます。
インナーコミュニケーションの重要なツールである社内報においても、読者を巻き込んでいく仕掛けを施し、社員参加型の企画に仕立て上げる手法は多々ありますが、何か「あっ」と言わせ、体験者にさせるヒントを映画『スティング』から探ってみるのも面白いのではないでしょうか。

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