レジリエンスの高い企業になるには何が必要か?
新型コロナウイルスの感染拡大による閉塞状況のもとで、多くの人が大なり小なりいろいろな不安やストレスを抱え続けている今日。レジリエンス(resilience)という言葉が注目を集めています。
もともとは「外力による歪みを跳ね返す力」という意味の物理学用語ですが、今では個人の生き方から企業経営まで、幅広いジャンルで使われるようになりました。
そこで今回は、近頃話題のレジリエンスという概念についてご紹介します。
レジリエンスが注目されている背景
弾力、回復力、復元力という意味を持つレジリエンスは、心理学や精神医学の分野では「逆境や困難、強いストレスに直面した時に適応する精神力と心理的プロセス」と定義されています。
そして近年になって、組織行動論や経営学でもレジリエンスが取り上げられるようになりました。その背景には長期にわたる経済不況、大震災・大型台風といった自然災害、収束の見通しが立たない新型コロナウイルス感染症など、予期せぬ負の衝撃に見舞われ企業活動が損なわれるケースが、2000年代に入って頻出していることがあげられます。
こうした状況下では一時的な組織のパフォーマンス低下は避けられないものの、いかに短期間で衝撃から立ち直り、元の姿に限りなく近い状態へ戻れるかどうかが、企業経営においてはとても重要です。だからこそ「これからの時代に求められる力」として、レジリエンスに注目が集まってきたのです。
レジリエンスが高い人材の6つの特徴
逆境に直面した際の強さと言えば、従来なら困難に立ち向かう姿勢、言い換えるなら「打たれ強さ」や「頑強さ」がイメージされがちでした。
しかし今日のビジネス界では環境の変化に対応できる柔軟性、つまり一旦落ち込んでもまた立ち上がれる稲穂のような「しなやかさ」が、個人や組織に求められる真の強さだという認識が広まっています。
そのためこれからの企業経営には、レジリエンスの高い人材を積極的に採用・育成することによって、組織全体のレジリエンスを向上させるという視点が求められます。
それでは、ビジネスの現場でレジリエンスが高い人とはどのような人でしょう?共通の特徴としては次の6つがあげられます。
① 自己認識力が高い人
自分の長所・短所・強み・弱みなどを正しく認識している人は、必要以上に自分を卑下したり過信したりすることもなく、ありのままの自分を受け入れられるため、レジリエンスが高い傾向にあります。
②楽観的に考えられる人
基本的に「いつかできるだろう」「きっと解決できる」「何とかなる」という考え方は、行動力を生み出す源泉にもなるため、楽観的に考えられる人はレジリエンスが高い傾向にあります。
③自己肯定感が強い人
自己肯定感が強い人は、困難を前にしても「自分ならできる」と信じて挑戦することができ、失敗しても落ち込まずそれを糧に成長できるため、レジリエンスが高い傾向にあります。
④人間関係が良好な人
ストレスの多くは人間関係が原因と言われています。職場でもプライベートでも他者と協力して物事に取り組むことができ、常に良好な人間関係を保てる人は、レジリエンスが高い傾向にあります。
⑤自制心が高い人
目の前の状況に一喜一憂せずに物事の本質と向き合える自制心の高い人は、感情の起伏が激しい人と比べてストレスを受けにくいため、レジリエンスが高い傾向にあります。
⑥思考に柔軟性のある人
大きなストレスがかかる状況下でも、思考が柔軟でさまざまな意見に耳を傾けられる人は、困難に直面してもどこかにポジティブな要素を見出せるため、レジリエンスが高い傾向にあります。
企業がレジリエンスを高めるには?
それでは次に、企業や組織がレジリエンスを高めていく方法について見ていきましょう。具体的には次の6つが考えられます。
①個人のレジリエンスを高める
レジリエンスは訓練によって後天的に身につけていくことができると言われています。
そのため社内研修やワークショップなどを通じて、一人ひとりが「ネガティブ思考をポジティブ思考に変換する習慣」「柔軟な発想で復活する力」を身につけるよう、サポートするのも有効な方法です。
②社員同士の連携を高める
社員同士や部署間の連携が取れている組織は、難局に直面しても意思の疎通が図りやすいので、レジリエンスが発揮しやすくなります。
日頃から社内の風通しが良くなる仕組みをつくり、部門の垣根なく協力し合える企業風土を根付かせるようにしましょう。
③シナリオプランニングを行う
組織のレジリエンスを高める有効な方法のひとつに、シナリオプランニングがあります。これは「全体を見渡す視点で物事を把握し、起こり得る未来を複数想定し準備しておく」経営戦略手法です。
シナリオを複数作成して、それぞれに対応策やリスクヘッジを準備しておくことで、突発的な危機に見舞われても迅速に対応できるようになります。
④現場が主役の組織づくりを行う
現場の人たちが自ら考え、決断・実行する企業風土があれば、危機に際して物事を柔軟かつスピーディーに動かしやすくなります。
「現場が主役の組織」は、一人ひとりのレジリエンスがもっとも発揮されやすい労働環境と言えるでしょう。
⑤社外とのネットワークを強化する
大きなトラブルが発生した際、社内の努力だけでは手に余り、問題を解決できない場合が多々あります。
万一の事態に備え、日頃から調達先、外注業者、販売先、行政など社外のネットワークと良好な関係を構築しておくことが大切です。
⑥多様性を尊重した組織づくりを行う
レジリエンスの高い組織は、状況への対応策をいくつも生み出せる柔軟さを持っています。それを可能にするのは多様性であり、同質な人間同士の集まりはついつい物事への見方が一面的になりがちです。
しなやかな強さを持つためにも、ダイバーシティ&インクルージョンの推進が必要となります。
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■インナーコミュニケーションの視点から見るダイバーシティとインクルージョン
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まとめ
ビジネス環境が目まぐるしく変動し、不確実性がますます高まっている現代において、個人と組織のレジレエンス強化は企業にとって重要な課題となっています。
企業のレジリエンスを高めていくためには、組織を構成している社員一人ひとりのレジリエンスを高めていくことが必要不可欠です。そしてレジリエンスを形成する要素を正確に理解し、効果的なトレーニングを重ねていくことで、レジリエンスは後天的に向上させることができます。
先行きが見通せない時代の危機管理としてはもちろん、社員のメンタルヘルスを守るという観点からも、積極的に取り組んでいくべきテーマのひとつとなりそうです。
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