社内報コラム

アンコンシャス・バイアスとは?具体例と改善方法をご紹介

アンコンシャス・バイアスとは?具体例と改善方法をご紹介

アンコンシャス・バイアス(unconscious bias)とは、人が無意識に抱いてしまう偏見や、根拠のない思い込みのことです。日常の中にありふれているため、往々にして「大したことではない」「よくあること」と見過ごされがちですが、放置しておくと職場にさまざまな弊害をもたらします。

そこで今回は、アンコンシャス・バイアスが昨今注目され始めた背景、具体例、組織にもたらす悪影響、改善策などについて解説します。

アンコンシャス・バイアスが注目される背景

外国籍の人材、女性管理職、障がい者、LGBTなど、ここ数年で労働者の属性や働き方はますます多様化し、ダイバーシティ&インクルージョンが加速しています。また、多くの企業が取り組み始めたSDGs(持続可能な開発目標)の中にも、「不平等の撤廃」や「ジェンダー平等」が目標として掲げられています。

こうした流れの中、ダイバーシティ&インクルージョンを円滑に推進し、職場での差別や不平等を撤廃する上で不可避な課題として注目されているのが、無意識の偏ったモノの見方=アンコンシャス・バイアスへの対処です。

アンコンシャス・バイアスは過去の経験や見聞を通して自然と培われ、誰もが持っているものなので、それ自体が悪というわけではありません。むしろ、物事を瞬時に判断する高速思考を可能にするというプラスの側面もあるほどです。

ただ、自らのアンコンシャス・バイアスに無自覚だと、そこから由来した言動が知らず知らずのうちに相手を傷つけたり、チームに負の影響を与えてしまうこともあります。そのため多様化が進む今日では、これまで以上に注意を払う必要があるのです。

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職場にあふれているアンコンシャス・バイアス

一般的な職場でどのようなアンコンシャス・バイアスがあるのか、いくつか例を挙げてみましょう。

• 男性社員が育児や介護休暇を申請すると「奥さんは?」と聞かれてしまう
• 子育て中の女性社員には、出張や大型の案件の依頼は控えた方が良い
• 体力が必要な仕事には男性社員を配属している
• 営業には体育会系出身者が配属されることが多い
• 年配の社員はITに関する知識や技術に疎いと思われている
• 柔軟な発想が必要な取り組みには若手を中心にチームをつくる
• 女性は気配りが上手なのでサポート業務に向いていると考えている
• 外国人労働者は日本の文化に合うのかとつい心配になる
• 障がい者に難易度の高い仕事を任せるのは荷が重いと思う
• 残業をしない社員は昇格や昇進には興味がない
• 残業や休日出勤の多い社員は“仕事に熱心”と評価される
• 学歴、世代、性別、血液型などでレッテルが貼られがち

上記は職場にあふれているアンコンシャス・バイアスのほんの一部ですが、性別、年齢、人種、言葉、文化の異なる多様な人材がともに働く組織では、こうした無意識の偏見が誰かを傷つける要因になります。

誰の心にもありがちな心理だからこそ、「思い込みや決めつけがないか?」と常に自省する姿勢が大切です。

アンコンシャス・バイアスの主なタイプ

アンコンシャス・バイアスは、下記のようないくつかのタイプに分類されます。

正常性バイアス

危機的状況に陥っても都合の悪い情報やデータを無視・過小評価し、「自分は大丈夫」「我が社には関係ない」などと思い込もうとすること。

目の前にある重大な問題への対処が遅れてしまう危険性をはらんでいます。

集団同調性バイアス

「皆そう言っている」「我が社はいつもこうしている」など、所属集団内の常識や主流の考え方に同調し、周りにも同調を強いること。

悪習やコンプライアンス違反に対して、誰も意見しなくなる恐れがあります。

ステレオタイプバイアス

性別、年齢、国籍、職業などの属性に対する先入観や、根拠のない思い込みをもとに物事を判断する姿勢のこと。

採用・配属、従業員個々のパフォーマンスなど広い範囲に悪影響を及ぼします。

 確証バイアス

自分の意見や価値観に合う情報だけを集め、反証データや反論を排除する姿勢のこと。

客観的・科学的な判断を否定することになるため、意思決定において重大な過ちを犯す危険性があります。

権威バイアス

「トップや上職の意見は正しい」と思い込むこと。
ランクが低い人の意見は有益でも無視されるため、やがて社員は自ら考えることをやめ、モチベーションも下がり、その結果組織全体のパフォーマンスが低下します。

ハロー効果

ある人物を評価する際、目立つポイントだけに注目して偏った判断をすること。
「体育会系なので耐性がある」「学歴が高い人は優秀」といった考え方がそれに相当し、採用・配属時のミスマッチなどを引き起こします。

アインシュテルング効果

慣れ親しんだ考え方や過去の成功体験に固執し、別の視点を無視してしまうこと。
これまでにないユニークな提案が出されても、前例がないと許可されないような企業体質はその典型です。

アンコンシャス・バイアスが職場にもたらす影響

 組織への影響

アンコンシャス・バイアスは組織全体に悪影響を及ぼします。特に管理職やリーダーの言動に思い込みや偏りが見られると、部下の発言や行動が抑制され、下記のような形で企業活動のパフォーマンスを停滞させます。

• 採用・昇進・評価・人材育成における公正さの欠如
• コミュニケーション不全と人間関係の悪化
• 組織の多様性の阻害
• 職場における停滞感のまん延
• ハラスメントやコンプライアンス違反の常態化
• イノベーションの阻害
• 離職率の増加

対応を怠るとやがて深刻な問題へと発展し、場合によってはハラスメントの告発やブランドイメージの失墜など、社会的信用を失いかねません。

従業員への影響

職場におけるアンコンシャス・バイアスの影響は、下記のように個々の従業員にも波及します。

• モチベーションの低下
• 疎外感、孤独感
• 自発的思考、発言の低下
• 過大評価、または過小評価
• 言い訳と弁解の増加
• 挑戦意欲の低下
• 成長の阻害

差別や偏見を持っている本人に自覚がないため、年齢・性別・学歴などに対する無意識の思い込みが会話に滲み出てしまい、職場の人間関係を悪化させるケースも少なくありません。

アンコンシャス・バイアスをどう改善するか?

アンコンシャス・バイアスの改善には、従業員一人ひとりが客観的に自分を見つめる機会につながるような、専門的知見を踏まえた研修の導入が有効です。

研修には専門家による講義、事例をもとにした動画研修、外部ツールを活用したオンライン研修などがあります。

まずは個々人が持っている「無意識の偏見」と向き合うことから始まり、職場での対処方法やコミュニケーションの取り方を、さまざまなケーススタディから学んでいきます。

重要なのは、自身や周囲が持つ偏見・思い込みに気づき、職場に内在する多様性を認め合うことです。こうした取り組みは女性や若手社員、マイノリティに対するハラスメントの予防・防止にも役立ち、ダイバーシティ&インクルージョンの促進にもつながります。

まとめ

アンコンシャス・バイアスの改善は、採用率の改善、離職率の低下、多様な人材の確保、社員のパフォーマンス向上、生産性向上、ハラスメントの防止、企業イメージの向上など多くのメリットをもたらします。

人材獲得競争の激化により、多様性を受け入れる組織作りが必然となった今日。アンコンシャス・バイアスの排除は、企業経営における必須要件になりつつあると言えるでしょう。

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