社内報コラム

D2Aとは何か?流通業界で今一番ホットなビジネスモデルを解説

D2Aとは何か?流通業界で今一番ホットなビジネスモデルを解説

BtoBやBtoCは既にビジネス用語として定着しましたが、近年、流通業界を中心にD2CやP2C、そして2022年になってD2Aという言葉が話題に上るようになってきました。

そこで、ECの世界で今一番ホットなキーワードの一つであり、ここ数年のうちに一消費者として皆さんも一度は体験する可能性があるD2Aについていち早く解説します。

D2Aとは何か?

ネット上で多彩な社会活動が営める3次元仮想空間のメタバースでは、分身であるアバターを通して不特定多数の他者と交流したり、商取引をしたりすることが一般的なスタイルとなります。

D2A(Direct to Avatar)とはそのアバターに向けて直接、仮想空間内で身に着ける服や靴、バッグといったアイテム等を販売する新しいビジネスモデルのことです。

スタートアップ企業やベンチャーキャピタルの動向を調査する米国の調査会社CB Insightsは、D2Aを2022年の12大テクノロジートレンドの一つに挙げています。また、世界的なトレンド予測会社のWGSNは、「実世界に存在しないアイテムをデザインし、アバターに直接販売するD2Aコマースによって、ブランドはサプライチェーンの要らない新しい収益源の開拓が可能になる」と、その可能性に言及しています。

さらに、1月に開催された世界最大規模の小売展示会「NRF2022」でもD2Aは大きなトピックとなり、「主な小売業はどこも参入するだろう」と予測されています。

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D2Aの市場規模と成長性

ブルームバーグ・インテリジェンスの試算によると、メタバースの市場規模は2024年までに世界中で8千億ドル(約92兆4200億円)に達すると予想されています。

また、世界有数のリサーチ企業である米国ガートナー社は、「2026年までに26%の人がメタバースで1日1時間以上過ごす」と予測。具体的な行動目的として「仕事」「ショッピング」「教育」「人との交流」「エンターテインメント」の5つを挙げており、その主役となるのはアバターです。
同時にガートナー社は、「2026年までに世界の組織の30%がメタバースに対応した製品やサービスを持つようになる」とも予測しており、そうした製品の多くはD2A市場向けになると見込まれます。

つまりアパレル・ファッション業界や流通業界を中心に、D2Aは新たな収益を生み出すビジネスチャンスの場として大きな期待がかかっているのです。

D2A市場の主役はZ世代とその周辺

今後人々がオンラインで過ごす時間が長くなり、メタバースへのアクセスがもっと手軽になれば、バーチャル空間における“私”としてのアバターを持つことは、ソーシャルメディアのアカウントと同じくらい一般化すると考えられます。

特に10~20代のZ世代の間では、既にアバターは自己表現手段の一つになりつつあります。アバターの顔を変えたり洋服を着替えたり、アクセサリーを身に着けたりしながら、バーチャル空間の中でリアルな世界の自分に捉われないおしゃれを自由に楽しんでいるのです。

例えば「メタバースの本命」や「ゲーム版YouTube」などと呼ばれ、世界中から1日約5千万人がログインするゲーミングプラットフォーム「Roblox(ロブロックス)」では、ユーザーの5人に1人が毎日アバターをアップデートしているというデータがあります。2021年には、有料・無料合わせて58億個のデジタルアイテムが入手されました。

また、米国のリサーチ企業カンターの調査(2021年12月)によると、Z世代の33%はソーシャルメディアのプラットフォームでデジタルファッションを、75%はゲーム内でアバター用の装備等デジタルアイテムを購入した経験があると回答。さらにはZ世代とミレニアル世代の各40%が、ブランドが提供する独自のデジタル商品の購入に興味があると答えています。

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D2Aへの参入事例

米国の投資銀行モルガン・スタンレーは、ファッションブランドでのデジタル需要は、2030年までに500億ドル(約5兆9000億円)に達すると予測しました。

こうした流れを機敏に察知したいくつかのハイブランドは、D2A市場に着目していち早く参入を開始。続々とデジタルアイテムをリリースし、ブランディング確立の場としてD2Aを活用し始めています。

NIKE(ナイキ)

複数の靴を履き回すリアルな世界と違って、仮想空間上のアバターは一度履いた靴を長期間履き続けるため、NIKEはブランドへの愛着をより深化させる空間としてメタバースを利用しています。
2021年11月にはRoblox内に「NIKELAND」を開設。ここではゲームを作成したり、他のプレイヤーが制作したゲームを体験したりすることができる他、アバターが着用するナイキのアイテムも用意されています。
また、全世界3億5000万人超のプレイヤー数を誇る世界最大級のゲーム「Fortnite(フォートナイト)」内でもスニーカーのデザインを提供。コラボイベントを開催するなど積極的なプロモーションを行っています。

Ralph Lauren(ラルフローレン)

ラルフローレンは2021年8月より、全世界で25億人近いユーザーを有するSNSアプリ「ZEPETO(ゼペット)」に進出しました。
仮想空間内にはニューヨークのマディソン通りの旗艦店や、コーヒーショップなどラルフローレンゆかりのスポットを再現。アバター向けのポロシャツや季節のコレクション、スケートボードなど約50種類のファッションアイテムを用意し、アプリ通貨「ZEM」で購入可能となっています。
他にもラルフローレンは、アバター作成アプリ「ビット文字(Bitmoji)」とのコレクションや、「Snapchat(スナップチャット)」とのタイアップ、欧州のeスポーツチーム「G2 Esports(ジー・ツー・イースポーツ)」とのタイアップなどD2A市場で積極的に活動しています。

GUCCI(グッチ)

グッチもZEPETOでラルフローレン同様の取り組みを行っていますが、2022年2月10日には、月間アクティブユーザー数が最大100万人を超え、オリジナルコンテンツの構築ができる人気のメタバースプラットフォーム「The Sandbox(ザ・サンドボックス)」で、仮想空間上の土地「LAND」を購入したことを発表しました。
詳細は明らかではないものの、『Vogue Business』の情報によると、2021年にローンチされた「Gucci Vault」によるデジタルファッション体験や、デジタルアイテムの購入などが提供される予定です。

まとめ

上記の事例だけでなく、他にもBurberry、FENDI、Louis Vuitton、Dolce & Gabbanaなどの一流ブランドがD2Aに参入しただけでなく、個人のデザイナーが高収入を得た成功例もネット上を賑わせています。

グローバルに拡大を続けているD2A市場で、アバター用アイテムを通して若い世代にブランドの世界観を浸透させ、自分らしさを表現する手段として愛用されれば、リアルな世界でのブランド価値向上にも大いに寄与するでしょう。

実際の年齢や体型、容姿に縛られることなく、ネット上のもう一人の“私”が自由に着飾って仕事をしたり、学んだり、遊びに出かけたりする日がもうそこまでやって来ているのです。

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