「分かち合い」で考える社内報ツールのすみ分け方法
働き方やビジネス環境が大きく変化するなかで、社内報もその影響を大きく受けています。従業員に届ける情報のテーマや内容のみならず、社内報ツール(紙・WEB・動画)のすみ分けについても考える必要性を感じているではないでしょうか。
今回の記事では、これまでさまざまな場面で紹介してきた社内報ツールのメリット・デメリットといったような考え方とは異なる着眼点からお伝えしてまいります。
ツールのすみ分けと最新の動き
社内報ツールとして、これまでは紙とWebをいかにすみ分けるかが問われてきました。Webでは双方向性に長けた機能や、環境への意識の高まりや具体的なアクションがより強く求められるなかで、会社のペーパーレス化やDX導入をはじめとしたデジタル技術を、経営や事業の基盤にする動きやコロナ禍による在宅勤務・リモートワークなど働き方の多様化といった流れを受けて導入が進んでいます。また、経営層や従業員からもWeb版への完全移行を要請されるといった会社も急増しています。
このような流れのなか、紙とWebそれぞれの良さがあるとしながら、ツールごとの見方の違いや、働き方を含めた従業員の行動様式をとらえて、自社にとって最適な方法は何かを模索し、試行錯誤を繰り返しながら最善策が検討されています。
一般的なツールのすみ分け方には“抜け落ちている”観点がある
社内報ツールのすみ分けを考えるポイントとして簡単に整理すると、
① ツールの機能
② 情報の届け方
③ 情報を出せる速さ
④ 発信する情報の量
⑤ 情報を見る場所
に分類されます。
そして、それぞれのツールの特性やメリット・デメリットを比較し、適切かつ効果的な運用策の検討を行いますが、このようなツールの比較には、極めて重要な観点が抜け落ちています。社内報は、社内の人・社内×社外・社内×社会との「関係性」をより良くしていくためのツールであり、その関係性をより良くしていくために、従業員が会社や経営陣、他の従業員、社外や社会など、さまざまな関係者と想いを分かち合えるようにするといった「分かち合い」の観点です。
ツールのすみ分けに「分かち合い」の観点を加えよう
「分かち合い」とは、理知的な情報のみならず、喜びや悲しみ、うれしさ、苦しみなど、感情や情緒といったことも含めたコミュニケーションのことを指します。
関わり合う相手が目にしている情景や、あるいは言葉や行動の裏側にある、それまでのさまざまな経験や体験なども、「分かち合い」を生み出すために欠かせないコミュニケーションの要素です。
この「分かち合い」の観点を視野に入れて考えると、その先に想い描くゴールイメージにはこれまでとは全く異なる景色が広がり、そのイメージをもとに社内報のツールのすみ分け方を検討すると、それぞれのツールのより良い活用策をはじめ、会社や従業員の皆さまにとっての社内報の新しく魅力的な在り方が見えてくると思います。
そしてまた、「分かち合い」こそが、社内報づくりで考えるべき本当の「双方向性」なんだとも考えられるようになると思います。
「分かち合い」で見るツール毎の違い
ここからは「分かち合い」の観点で社内報の主なツール、紙・Web・動画の違いについてお伝えします。それぞれの特徴を「分かち合い」の観点でまとめると以下になります。
紙:情況や情景
Web:知識、経験、体験
動画:想い、意志
「情況」や「情景」を分かち合う=紙
紙で優位性がある「情況」や「情景」とは、記事で語っている人の頭の中にある景色や、語られている情報に含まれる世界観のようなものです。
これは紙が得意とする「写真」と「余白」、文字などの多の掲載要素との関係性によって表現できるものです。
写真は表情や風景の断片を、サイズやトリミングも含めて意味として切り取り、他の掲載要素との関係性を踏まえて意図的な配置を行って見せ、瞬時に読者の感情に響かせ、記憶に留めるという機能や効果があります。
余白には文字では語り得ない佇まいや空気感のような、ノンバーバルな情報を表現することができます。こういったコミュニケーションはWebのように、見るデバイスによって見え方が異なるツールで行うことは極めて難しく、紙ならではのものと言えます。
もちろん動画でも情況や情景を見せることは可能ですが、記者や語り手の頭や心の中にある象徴的な視界や、語られている情報に見られる情況や情景を、見る人の視界に届けてそれを分かち合うという点では、写真や余白を駆使できる紙に優位性があると言えます。
「知識」「経験」「体験」を分かち合う=Web
知識や経験、体験はWebのみならず、紙や動画でも伝えることは可能です。しかし、Webはこれらを「速やかに」「たくさん」「誰もが」といった点で、紙や動画よりもはるかに有効なツールと言えます。
社内報では紙版でも、従業員同士の知識や経験、体験の共有をねらいとする取り組みが行われていますが、やはり紙にはページ数や情報量等その頻度に応じて、印刷コストが増えていくというデメリットがあり、加えて従業員に届けるために一定の時間が必要になります。
そのため、「速やかに」「たくさん」の知識や経験、体験を分かち合うという点では、紙のような制約やコストの影響が小さいWebが、圧倒的に優位なツールとなります。
動画もさまざまな技術や、それを編集する時間を要する点を踏まえると、「速やかに」「たくさん」という点ではWebの静的な記事のほうが圧倒的に優位です。
また、Webには「いいね」やコメント機能はもちろん、さまざまなコミュニケーション機能を組み込むことが可能ですので、それらの機能次第ではありますが、誰もが情報を広く伝えることが容易に行える点は、紙や動画にはないメリットだと言えます
「想い」「意志」を分かち合う=動画
「想い」や「意志」は、それらを語る人の心に宿る多面的な感情や、多大なエネルギーを持つ情報です。文字や写真、図、色だけでそれらを豊かに表現することには、極めて高度な技術が必要だったり、それらの技術を駆使したとしてもやはり限界があり、作り手と読み手双方の、時間や労力といった点でも、あまり効率的ではありません。
その点、動画は映像や音声、音楽、テロップをはじめ、構図やトーンといった撮影技術のほか、スローモーションやタイムラプス、高速度な場面展開やシーンの切り替えしなど、動画ならではの時間的な編集技術を駆使した演出や表現が可能であり、紙やWebでは難しい、人の心の中に宿る想いや意志を、それらともにある多面的な感情や多大なエネルギーとともに、視覚や聴覚を通して見る人の心に豊かに届けることが可能となります。
さらに動画には、見る人の「没入感」を生み出せるという、紙やWebでは生み出すことができなかった体験を、従業員の方たちに届けることも可能となります。
また動画にはBGMや場面展開などによって臨場感を超える、語り手と一体となるような「没入感」を生み出すことも可能だという点は、今後の社内報のすみ分け方や、それぞれのツールの効果を考える上で、ぜひ検討のポイントに加えていただくことをおすすめします。
まとめ
働き方の多様化が進み、人と人との距離の取り方が難しく、絆という感覚がますます希薄になることが増えていく。そう考えたとき、社内報のツールのすみ分け方に「分かち合い」という切り口を入れて頂くと、社内報はこれまでにはない、瑞々しく豊かで、会社と従業員の皆さまにとってかけがえのない、新しいお役立ちツールになり得るのではないかと思います。
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