社内報コラム

ストックフォト(レンタルポジ)の著作権を知ろう

ストックフォト(レンタルポジ)の著作権を知ろう

ストックフォトとは、商業利用されることを前提として販売・レンタルされている写真や画像などのマルチメディア素材のことを指します。かつては写真のポジフィルムでレンタルされていたことからレンタルポジ(又はレンポジ)と言われていました。現在では主にインターネット上で写真等の素材データが提供されていることが多いです。

ストックフォトは、広告・出版等の目的で制作会社が素材を選び、使用料を支払うことで利用できるという非常に有用なものですが、その素材である写真は誰かが撮影・制作した著作物ですので、著作権などの権利の問題が常に気になるところです。

本記事では、ストックフォトに関する著作権等の権利関係について解説します。

記事監修:弁護士 南 陽輔

ロイヤリティフリーとライツマネージドの違い

ストックフォトは、素材の提供会社から購入(レンタル)するものですが、その購入(レンタル)時の契約内容として、大きく分けるとロイヤリティフリーとライツマネージドの2種類があります。

ロイヤリティフリーは、一定の料金を支払うことで、その後の利用は基本的には自由にできるというものを指して使われます。ロイヤリティ(使用料金)がフリー(無料)であることを示しています。

これに対して、ライツマネージドは、使用ごとに用途や期間、地域などを特定して契約し、利用することができるようにするものを指します。ライツ(権利)をマネージド(管理)することを示しています。

ロイヤリティフリーでは、一定料金支払えばあとは繰り返し何度でも利用できるという特徴がありますが、対象素材が無名作家の作品などに限定されていたり、素材の独占使用ができないなどのデメリットもあります。

ライツマネージドは、ロイヤリティフリーに比べると費用が掛かる傾向にありますが、素材を独占使用でき、また、対象素材に著名作家の作品も含まれているなどのメリットがあります。

ロイヤリティフリーとライツマネージドのいずれで契約するかについては、素材の利用目的等に応じて個々に判断していくのが良いでしょう。

使用の際に注意すること(著作権)

ロイヤリティフリーとライツマネージドのいずれで利用するにせよ、素材の利用に際しては、以下の点に注意しておいた方が良いでしょう。

素材の著作権、被写体の肖像権などの権利関係

ストックフォト素材を提供会社と契約して使用料を支払って取得したものであるので、著作権の問題はないはずと思われる方も多いですが、実は必ずしも大丈夫とは言えません。
提供会社側が著作権者の許諾を得ずに無断で提供してしまっている場合もあります。

この場合、著作権者から著作権侵害を理由に損害賠償請求や利用の差止を求めて訴えられてしまうと、利用者も損害賠償責任等を負うケースもあるのです。

また、写真素材の被写体の肖像権についても注意が必要です。被写体となっている人物が被写体となる事に同意してらず、肖像権を侵害されていると訴えてくるおそれもあります。

これらの点の対策としては、まずは購入時に素材の著作権者が誰であるかなどの表記があるかを確認し、次に提供会社の利用規約でどのように定められているかをしっかりと確認するようにしましょう。

例えば、国内の提供会社としてのメジャーどころで、ゲッティ、アマナ、アフロなどが挙げられますが、ゲッティでは利用規約において提供素材について著作権やパブリシティ等を侵害するものではないことを表明・保証し、もし侵害があった場合には顧客に補償する旨を定めています。他方で、アマナでは、利用規約で著作権や被写体の肖像権などの確認は利用者が自己の責任で行うものと定められています。アフロでは、著作権についてはアフロ側のものであることを保証していますが、被写体の肖像権については利用者の責任で確認することとされています。

このように提供会社によって保証する内容が違いますので、素材を取得する際には利用規約に目を通し、自身で著作権・肖像権について確認することとされている場合には、購入前にしっかりと確認するようにしましょう。

二次使用

素材に加工・改変を加えるなど、素材に利用者の創作性を与えた場合、その完成したものは二次的著作物として、利用者にも著作権が発生する可能性があります。ただ、それによって元の著作者の権利がなくなるのかというと、そうではありません。

著作権法では、二次的著作物についても元の素材(著作物)の著作権者の権利が認められています。そのため、二次的著作物に素材の著作者のクレジット表記等を付さずに利用した場合には著作権侵害となってしまうリスクがあります。

こうした二次的著作物の利用について、どこまでが許されるのか、どのようにすれば利用可能なのかについては、素材の提供会社に確認を取り、協議して進めるようにしましょう。

また、素材のそのまま利用している場合において、例えば利用者が素材を使用して制作したものを納品した後、納品先のクライアントから素材の元データの提供を求められるケースもありますが、この場合にも注意が必要です。

提供会社としては、素材をデータとして利用することは許諾していても、利用者のクライアントなどの第三者への素材データの譲渡を認めているとは限らないからです。

この点については、提供会社の利用規約を確認し、ハッキリと判断できない時は直接提供会社に確認するなどして対応するようにしましょう。

なお、ロイヤリティフリーで取得した素材を、自分のライセンスで一度ダウンロードして使用した後、他の媒体でその素材を使用することについて、基本的には問題ありませんが、その使用の態様によっては提供会社が定める禁止事項

に該当するケースもありますので、他の媒体で使用する前に提供会社の利用規約に違反しないか確認するようにしましょう。

使用期間

ロイヤリティフリーでは基本的には使用期間の制限がないことが多いので問題となる事は少ないと思われますが、ライツマネージドの場合には使用期間の制限にも注意が必要です。例えば、素材をライツマネージドで購入してホームページの一部に使用している場合、気付かないうちに使用期間が経過してしまっていることが起こり得ます。

この場合には追加のライツマネージドの使用料を支払うか、ホームページ内の素材を削除して利用しないようにするなどの対応を取る必要があります。

完全無料素材の取り扱いについて

ストックフォト素材の中には、完全無料で提供されているものもあります。中には一般人が無料提供している写真などもあります。

ただ、無料で提供されているということは、より慎重に著作権などの権利関係を確認する必要があります。

完全無料ということは、提供者は何ら利益を得ないということですので、著作権者に対価を支払って著作権者の許諾を得るということを行っていない可能性が高くなります。また、一般人が無料提供している写真については別の第三者の写真(著作物)を自身のものと偽って提供している危険性があります。

こうした完全無料の素材を使用する場合には、著作者は誰か、被写体の肖像権などに問題はないかをしっかりと検討しなければなりません。

しかし、そうした確認を取ることは難しい場合もあるので、できればきちんとした提供会社から使用料を支払って取得した方が安全であると言えるでしょう。

まとめ

事業活動を行う上で、広告等は非常に重要です。できるだけ感心を引くためには魅力的なストックフォトを活用したいというのは当然のことです。ただ、そのために使用したストックフォトが実は後から著作権等の権利を侵害するもので利用の停止や損害賠償を支払わなければならない事態となってしまうと、結果として損失のほうが大きくなってしまうということも起こりかねません。

そのような事態を回避するためには、ストックフォトを取得する際に提供者の利用規約を見たうえで、素材の著作権者と被写体の許諾の有無など権利関係を事前にしっかりと確認するようにしましょう。

社内報に関するご相談、問い合わせはこちらから

関連記事