バーチャルオフィスツールは社内コミュニケーションをどのように進化させるのか?
コロナ禍を機に企業でのリモートワークやテレワーク導入は加速しましたが、それに伴い「社員同士のコミュニケーションが希薄になった」「仕事の進捗状況が分かりづらい」「生産性が低下した」などの問題点も浮き彫りになってきました。
そこで、近年導入が進み始めたのが「バーチャルオフィスツール」です。今回は現在注目が集まっているバーチャルオフィスツールの概要や、導入のメリット、今後の可能性などについてわかりやすく解説します。
バーチャルオフィスツールとは?
バーチャルオフィスツールとは、自宅など離れた場所にいるメンバー同士が、WEB上のバーチャルな擬似オフィスにより、まるで同じ事務所の空間にいるような感覚で気軽にコミュニケーションが取れるクラウドサービスツールです。バーチャルワークスペース、クラウドオフィスツールなどと呼ばれることもあります。
テレワークのデメリットであるコミュニケーション不足の解消につながり、比較的簡単に導入できることから、これからのニューノーマルな働き方に適したソリューションとして期待されています。
バーチャルオフィスツールの主な機能
バーチャルオフィスツールには、イラストやアバターを取り入れたポップなものから、フォーマルでも使えるものまで多様なタイプがありますが、共通して備わっている機能は次の3つです。
コミュニケーション機能(通話機能)
ほぼ全てのバーチャルオフィスツールに、チャット、ビデオチャット、音声(ボイス)チャットの3つの機能が装備されています。
これらを状況に応じて使い分けることにより、ちょっとした声がけや質問、雑談、挨拶などコミュニケーション不足の解消につながります。
画面・資料共有機能
バーチャルオフィスツールは、画面や資料などを簡単に共有できる機能を備えています。
パソコンの画面を同時に見ながら確認したい時、資料を一緒に見たい時、チェックや指示を受けたい時などに役立ちます。
座席・ルーム設定機能
バーチャルオフィスツールの特徴的な機能が座席・ルーム設定機能です。
社員はそれぞれアバターを作り、仮想のデスク前に着席したり会議室に入ったりして業務を行います。
どこで誰が何をしている、誰と誰が会議しているなどの状況が視覚的に把握できるので、話しかけるタイミングを見つけやすくなります。
バーチャルオフィスツールを導入するメリット
バーチャルオフィスツールを導入するメリットとしては次の3つが挙げられます。
コミュニケーションが円滑になり、頻度が上がる
SlackやChatworkのようなビジネスチャットツール、ZoomのようなWEB会議ツールとは違って、バーチャルオフィスツールは常時接続されているのが特徴です。
Zoomのように毎回URLを発行する必要もなく、相手のアバターをクリックするだけですぐに音声通話ができるものもあるので、電話をかけるよりも手軽に話し始めることができます。
そしてリアルなオフィス空間と同様、誰が何をしているのかが一目で把握できるため、業務上必要な会話はもちろん、雑談などのカジュアルなコミュニケーションも取りやすくなります。
社員に適度な緊張感を与えられる
自宅でテレワークを行う場合、誰も見ていない状況が気の緩みにつながったり、仕事とプライベートの境目が分かりづらくなったりすることも珍しくありません。
その点バーチャルオフィスツールは社員同士が常につながっており、互いの業務の様子がアバターで表現されるため、周囲の視線を感じる環境が生まれ、適度な緊張感を保って仕事ができます。
テレワークをしながらも、出社時に近い生産性を維持できる点で大変有効だと言えるでしょう。
リモートワークによる孤独感を解消できる
リモートワークの経験がある人なら、誰とも接することなく一人黙々と作業を続けることに、孤独感やストレスを抱いた経験がある人も少なくないはず。社会的な動物である人間にとって、他者とのコミュニケーションは精神衛生上大切な要素です。
バーチャルオフィスツールを導入すれば、他者とつながっている感覚、仲間が隣にいる感覚が常に得られます。実際のオフィスにいるような状況が生まれるため、孤独感が解消されるだけでなく、チームの一体感の維持・醸成にも有効です。
バーチャルオフィスツールの主なタイプ
バーチャルオフィスツールは、重視する機能・目的などにより次の4タイプに分けられます。
オフィス再現重視型
臨場感のあるオフィスをバーチャルに再現し、メンバー相互の会話やコミュニケーションの自然発生を促すタイプ。
仮想空間に出勤しメンバーの足音が聞こえる演出などを盛り込んだ「RISA」や、最大1フロアに150人が出勤でき、さらに複数フロアを追加できる「FAMoffice」、リアルなフリーアドレスオフィスのように、オフィスマップ内のテーブルに着席し、ワンクリックでテーブル単位での会話を始められる「Oasis」などがこのタイプです。
イベント・交流重視型
オフィス機能に加え、仮想イベント会場としての機能も提供するタイプ。
展示会やワークショップ、交流会などでの利用を想定した「oVice」は、メンバー同士の会話がクローズドにならず、距離が近いアバター同士の会話が自然と耳に入るのでイベント用途にも適しています。
また「Sococo」は、想定利用人数60人以上の特大規模レイアウトや、広い部屋が複数ある講義用レイアウト、イベント会場を模したレイアウトなど100種類以上のオフィスレイアウトが用意されています。
作業効率重視型
アバターなどパソコンに負荷がかかる機能を持たず、テレワークでのコミュニケーションをサポートする役割に徹したタイプ。
「声のバーチャルオフィス」がコンセプトの「roundz」は、在席状況などのステータスは一覧で確認でき、声掛けはワンタッチで可能。画面共有機能やマウスポインタ共有機能なども備えています。
「LIVEWORK」もアバターやフロアマップがない代わりに、一定時間毎にPCのカメラで撮った映像が一覧表示され、メンバーの顔が見える仕組みになっています。
管理・マネジメント重視型
入退室ログ管理やメンバーが使用しているアプリの確認などができ、勤怠管理や生産管理ができるタイプ。
例えば「Remotty」は、メンバーの入退室時間を自動で記録し「見える化」しています。「VoicePing」も作業タイマーと作業内容の入力ボックスで記録したメンバーの活動状況を、長期・短期のスパンで確認できます。1on1ミーティングや活動状況の把握も可能です。
バーチャルオフィスツールが拓く新しい働き方の可能性とは?
この先コロナ禍が落ち着いた後も、ニューノーマルな働き方はますます浸透し、フレキシブルなワークスタイルを望む人は着実に増えていくでしょう。
バーチャルオフィスとリアルなオフィスを柔軟に組み合わせ、社員自身が「出社するか?リモートワークか?」を選択できるようになれば、生産性は上がり無駄なコストの削減にもつながります。
こうしたフレキシブルな勤務形態の実現は、グローバル化のさらなる加速にもつながります。
高齢化と若年層の人口減少が進み、海外からの人材雇用が増えていくこれからの時代。バイブリッドなオフィス環境をいち早く構築できれば、優秀な人材をボーダーレスに採用することができ、ビジネスの可能性も大きく広がるでしょう。
まとめ
リモートワークがますます浸透していく中、バーチャルオフィスツールはメンバー間のコミュニケーション不足や、社員が抱える孤独感の解消に最適なソリューションと目されています。
ただその一方で、常時繋がっていて便利であるが故に、常に「監視されている」感覚を覚えストレスに感じる人もいるようです。実際の導入に際しては、メンバー間でしっかりとコンセンサスを得ることが必要になるでしょう。
その点をクリアすれば、バーチャルオフィスツールはこれからの企業にとって、不可欠なアイテムになるかも知れません。
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