サードプレイスとは?定義や具体例、メリット、導入時の注意点などを明解に解説
働き方改革やコロナ禍をきっかけとしたリモート勤務の普及を背景に、多くの人にとって仕事とプライベートの両立は重要な課題となっています。そこで見直されてきたのが、仕事とプライベート以外の第三の居場所=「サードプレイス」の重要性です。
今回はサードプレイスの概要と意味、特徴、メリット、具体的な事例などについて分かりやすく解説します。
サードプレイスとは何か?
サードプレイスとは、仕事に関わる「職場」やプライベートな「家庭」とは異なる第3の居場所を指す言葉です。米国の社会学者レイ・オルデンバーグが、1989年に出版した書籍「The Great Good Place」(日本名「サードプレイス〜コミュニティの核になる『とびきり居心地よい場所』」で初めて提唱しました。
当時のアメリカは自動車依存型の都市社会で、社会のコミュニティは失われ、人々は家庭(ファーストプレイス)と職場(セカンドプレイス)を往復するだけの状態になっていました。
ファーストプレイスである家庭は、寛げる場所ではあるものの、親や配偶者、子供と関わるなかで一定の責務とストレスが生じます。またセカンドプレイスである職場は、社会的な生活を営む場所であり、仕事や役職上の目標を達成するために、本来の自分とは違う振る舞いを演じることが少なくありません。
オルデンバーグは、こうしたストレスの多い現代社会を生き抜くには、義務感や責任感から解放され、自分自身をリラックスさせられる第3の居場所=サードプレイスが必要だと考えたのです。
サードプレイスの定義
サードプレイスはどこでも良いわけではなく、一定の条件を満たす必要があります。オルデンバーグは、サードプレイスの定義として次の8つの条件を挙げています。
1. 中立な場所
2. 平等な場所
3. 会話が重視される場所
4. 近づきやすく親しみのある場所
5. 規則的な場所
6. 目立たない場所
7. 陽気な雰囲気がある場所
8. 家から遠くない場所
総括すると、「多様な出自や価値観・背景を持つ人々が、お互いの社会的立場や属性などを気にすることなく、気楽に交流できて心が安らぐ身近な空間」と言えるでしょう。
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サードプレイスの具体例
サードプレイスになり得る場所は、国や文化的な背景などによって異なります。世界的には「イタリアの食堂」「ドイツの居酒屋」「フランスのカフェ」「イギリスのパブ」などが代表的です。
ただ日本人の場合は、海外の人ほど「見知らぬ人とのコミュニケーション」に対して積極的ではなく、どちらかといえば「顔見知りの客やスタッフと会話が楽しめる場所」という方がイメージに近いかも知れません。
その観点ではカフェやバー、居酒屋、スナックなどが一般的で、広い意味ではジムや公園などもサードプレイスに当たります。お店以外でも、地元のお祭りや子育てサークル、習い事、読書会、ボランティア活動といった人と交流する集まりも、サードプレイスとしての役目を果たしています。
サードプレイスのメリット
サードプレイスが生み出すメリットとしては次の4つが挙げられます。
新たな学びや刺激が得られる
仕事や家庭における人間関係は固定化されやすく、そこから新しい刺激を受ける機会はどうしても少なくなりがちです。
その点多様な人が集うサードプレイスは、職業や性別、出身地などが異なる人と関わる機会が得られます。また、異なる価値観を持った人と交流することで、今まで考えたことがなかったアイデアや考え方に触れることができます。
職場と自宅の往復だけでは得られない、新しい学びや刺激が得られるわけです。
リラックス、リフレッシュ効果がある
自由に足を運んで、社会的な立場や地位、上下関係を気にせず交流できるのがサードプレイスの特長です。集う人々の肩書きや暮らしの様子などを知らないからこそ、過剰に遠慮したり謙遜したりすることなく、リラックスした状態の素の自分でいられやすいのです。
そうした経験は日常の忙しさや仕事の重圧を忘れさせ、硬直しがちな視点や発想を柔らかくもしてくれるので、心身がリフレッシュできるきっかけになります。
主体性を高めることができる
サードプレイスへの参加は自主的であり、どのコミュニティに参加し、その中でどのような活動を行い、どの程度の頻度で出向くかは全て自分次第です。
指示待ちの姿勢では何も活動できません。自らの意思で行動することにより、自然と主体性が高まっていきます。
そうして自ら動く意識を身につけられれば、どのような環境でも主体性を発揮できるようになれるでしょう。
注目され始めたサードプレイスオフィス
コロナ禍で働き方に多様な選択肢が生まれたことで、ビジネスにおけるサードプレイスの意義に気づいた企業が、新たな「働く場所」としてサードプレイスを導入する動きが現れ始めています。
そうした空間は「サードプレイスオフィス」と呼ばれ、次の6つのタイプが挙げられます。
1. 会社のオフィス以外のシェアオフィス
2. サウナなどの施設に併設されたシェアオフィス
3. 自宅に近いシェアオフィス
4. バケーションを兼ねたワーケーション
5. 都会から離れた場所のサテライトオフィス
6. 会社内に設置したサードプレイス
シェアオフィスはフリーランスや起業家が利用するイメージが強いですが、近頃はリモートワークの普及により、サードプレイスとして活用する人が増えています。シェアオフィスの中にはサウナなどを併設した施設もあり、顧客ニーズを上手に汲み取っています。自宅で仕事に集中できない人には、自宅に近いシェアオフィスが人気です。
また、コロナ禍を機に観光地やリゾート地をサードプレイスにする「ワーケーション」が注目されている他、都会から離れリフレッシュできるサテライトオフィス、会社内に設置したサードプレイスも、気分転換を兼ねた場所として人気です。
サードプレイスオフィス導入時の注意点
サードプレイスオフィスを導入する際には、下記の点に注意が必要です。
勤務状況が管理しづらくなるため、勤怠管理システムや業務可視化ツールを活用して、社員の勤務状況を把握できる仕組みを整えねばなりません。
また、上司と部下のミーティングを定期的に行う、成果主義の評価制度に切り替えるなど制度の見直しも必要です。
セキュリティを構築・強化する
サードプレイスオフィスはセキュリティ面が万全でない場所もあるため、個人情報が入ったUSBメモリの紛失、フィッシングサイトへの誘導などのリスクがあり、セキュリティ対策の強化が必要となります。
コミュニケーション方法を考えておく
サードプレイスオフィスを活用すると、どうしても対面でのコミュニケーションが減少し、社員の孤独感を助長する可能性があります。
例えば、毎朝のミーティング前に雑談をする、チャットでこまめに連絡を取り合うなど、コミュニケーションを密にする方法を考えておきましょう。
まとめ
一個人として自らを開放できるサードプレイスを持つことで、心身のリフレッシュができるだけではなく、主体性の向上や新たなアイデアの創出などの効果が期待できます。
また企業にとっても、社員のストレス軽減やモチベーションアップ、業務効率改善などの効果が期待でき、組織全体のパフォーマンス向上につながるため非常に有効です。
今後のオフィス戦略や働き方を考える際に、一度積極的に検討されてみてはいかがでしょうか。
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