読まれる社内報にするためにトーン&マナーを取り入れよう
社内報担当者は、読まれる社内報をつくるために、読者が興味を持つ情報を掲載したり、面白い切り口を考えたり、わかりやすく読みやすいデザインにしたりと…さまざまなアイデアを絞り出します。
今回はそんな工夫や努力と併せながら取り組むべきデザインのトーン&マナー(以下、トンマナ)についてお伝えします。
社内報の存在感をマネジメントするのがトンマナ
まず読まれるためには、従業員(以下、読者)一人ひとりが社内報に対して「何のツールなのか」「他のツールと何が違うのか」「読むことで何が得られるのか」という何らかのメリットを感じられるように工夫すること。これを意識することが社内報担当者の腕の見せ所と言えます。
企業や自社商品の「ブランディング」と同様、社内報で掲載する内容も、読者が目にするほんのわずかな時間で「メリットを感じ取れる」ようにすることや、継続的にそれを感じ続けてもらうために、パッと見たときの印象や雰囲気を意図的にコントロールし続けることが求められます。
トンマナとはコミュニケーションの基準のことを指す
トンマナはブランディングで用いられる場合が多いため、ここではコーポレートブランディングを例に、その必要性と意味についてお伝えします。
多くの企業では持続的に顧客や社会から選ばれ続けるためにコーポレートブランディングに取り組みます。自社の存在意義や他社との違い、顧客や社会に提供する価値を明確に定めるとともに、その定めたことに基づいて社内外へ発信します。つまり、その企業が顧客や社会から選ばれ続けるためには、企業の価値や取り組みのレベルを高めるだけではなく、それらをデザインなどで適切に表現していくことも重要となります。
例えば、企業ロゴやコーポレートサイトをはじめ、社内外とのコミュニケーションを図るツールに統一感のあるデザインやカラーリングを施すなど…。この見た目をコントロールしたりマネジメントしたりする基準のことをデザインのトンマナと言います。
社内報のトンマナの設定の流れ
ブランディングにおけるトンマナについてはご理解いただけたかと思います。これは社内報をつくることでも全く同じで、多くの読者から選ばれ続けるためには、社内報の発行目的を明確にブランディングし、その考え方のもとで印象や雰囲気をマネジメントし続けることが求められます。
ここからは、社内報のトンマナの定め方についてお伝えします。
トンマナを定める主な流れとしては
- 社内報のアイデンティティを定める
- ポジショニングで他との違いを明確にする
- 他との違いをイメージで表す言葉を選ぶ
- 選んだ言葉にふさわしいサンプルを集める
- サンプルをもとにデザインの基準を定める
- 考えた基準をもとにラフデザインを作成する
となります。
社内報のアイデンティティを定める
アイデンティティとは他者との違いや個性、独自性のことを言いますが、社内報におけるアイデンティティは、会社側と従業員、社内すべてのコミュニケーションのなかでの立ち位置や役割のことを指します。
これらは社内報をはじめ、イントラネット、掲示物、社内イベント、人事や総務などからの連絡ツールなどの社内ツールのほか、コーポレートサイトやCSR報告書、統合報告書など社内外を対象としたツール、さらには日々の職場内の対話や会話も含めて、従業員が情報を受けたり発信したりする事など全てを含みます。
社内報のアイデンティティを定めるためには、こうした従業員を取り巻く多種多様なコミュニケーションのなかで、社内報がどのような役割を果たすツールなのか、どのような価値をもたらすツールなのか、他とは何が違うのかを洗い出して、他にはない個性や独自性を、発行目的と照らし合わせながら具体化することが必要です。
ポジショニングで他との違いを明確にする
ブランディングにおけるポジショニングとは、自社と競合他社との違いなどを二次元マップで表すことです。社内報も同様、①のアイデンティティを基に二次元マップを描いて、他のコミュニケーションとの違いを視覚化していきます。これにより誰もがそれを認識できる状態とします。
こうすれば社内報のアイデンティティがより鮮明になり、社内報制作時にさまざまな立場の方たちと連携する過程で、目指す方向性を共有できたり、意思疎通がやりやすくなったりします。
他との違いをイメージで表す言葉を選ぶ
アイデンティティとポジショニングが明確になると、目指すべき社内報のイメージが徐々に浮かび上がってきますが、そのイメージを言葉にして社内報に携わる仲間にも伝えてみます。具体的には、②で紹介した社内報二次元マップに対して、自身のイメージを言葉にしながら、社内報以外のシーンにも適した言葉を考えてみましょう。
選んだ言葉にふさわしいサンプルを集める
アイデンティティやポジショニングを具体化するための言葉選びが終わりましたので、それらを視覚的に表現するデザインのイメージを探っていきましょう。
イメージを表すためにはデザインに関する一定のスキルが必要なことと、③の言葉選びと同じように仲間へのイメージ共有にも高いレベルが求められますので、通常はこのタイミングではデザイン着手はしません。
社内報は企業情報ツールのなかでも雑誌やフリーペーパーなどにデザインが近いので、③で選んだ言葉のイメージに近い誌面をサンプルとして複数集めて、②の二次元マップの社内報の位置に貼り付けます。併せてイメージとは異なる誌面も集めてこれらも二次元マップに貼り付けていきます。
サンプルをもとにデザインの基準を定める
この段階までくると目指すべき社内報のイメージが鮮明かつ具体的になると同時に、他のツールとの違いもはっきりと見える状態になります。
最後はその状態を実際に運用していくためのデザインの基準を定めましょう。
デザインのルールは主に、フォントとカラーのバリエーション、レイアウトのバランスや間のとり方、写真やイラストなどビジュアル素材の様式などですが、社内報では編集者がすべてを決められるものではなく、経営側や他の部門からの要望を受けて掲載する情報も多く、これらをあまり厳格に定めるのではなく、柔軟性を持った基準や指針としておく程度に留めておきます。基本的にはキーフォント、キーカラーといったように、基準となるビジュアル要素の様式を定めます。
考えた基準をもとにラフデザインを作成する
デザインのトンマナは①~⑤の手順で完了するのですが、最後のプロセスとして⑤で定めた基準をもとに原寸サイズのデザインを作成してみましょう。これをラフデザインと言います。
ラフデザインを作る意図は①~⑤で考えたことをカタチにすることのほか、実際に作ってみることによって想像していたデザインが現実的に難しいといったことや、考えが不十分だったといった、基準の過不足を検証することにも役立ちます。そのためラフデザインは、掲載を検討している全コーナーでつくります。
もちろんこのタイミングでは原稿があるわけではないので、仮の見出しを作成したり、誌面に載せようとイメージしている写真に似た写真を用いてデザインを作っていきます。
社内報のラフデザインを描くコツについてはこちらへ
トンマナで社内報への愛を育む
読まれる社内報にするためには、発行目的をもとに会社として伝えるべきことを発信して、従業員に役に立つ情報を掲載するだけではなく、社内報が従業員の視点から「何のツールなのか」、他のツールとは「何が違うのか」「何が得られるのか」など明確かつ瞬時に伝える必要があります。
つまりデザインについて本当に大切なことは、情報を読みやすくしたり、興味を惹くための装飾を施したりすることだけではなく、「社内報というツールが自分にとって何なのか」を表現し続けるための手段だと言えます。
社内報担当者は、それらを継続・発展させて、社内報の個性や独自性を育み続け、多くの従業員から愛される社内報にしていくことが極めて重要な役割だと言えます。
まとめ
社内報でトンマナを取り入れる意義は、従業員と社内報とのより良い関係性をデザインの観点で整えるといった品質面での効果も大きいのですが、同時にデザインを決める際の理由づけにすることができたり、見せ方を決めるときの判断に説得力を持たせたりすることができるというメリットもあります。
これは社内報を作る過程で上司などに報告したり相談したりする場面や、デザイナーとの打ち合わせや修正の依頼の際に非常に有効で、その結果として社内報制作に関する業務の効率性も高まりますので、ぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか?
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