社内報のコンセプトって? 考え方のプロセスや事例を紹介
読まれる社内報をつくるためには、「会社として発信する情報のテーマや内容」を考えることはもちろん、「読者である社員の皆さまがどうすれば「読みたい!」と感じるか」考えること、そして、この2つをどう結びつけるかを考えることが大切です。
この3つの「考える」はつまりコンセプトを考えることを表しています。
今回の記事では、読まれる社内報をつくるためのコンセプトの考え方や、社内報のコンセプトを考えるときのポイントについてお伝えします。
コンセプトは「人」と「モノやコト」を結びつける考え方
読まれる社内報にするために、もっとも大切なことは「社員の皆さまの役に立つ社内報」にすること。そして、「社員の皆さまに役立つ社内報」をつくるためにもっとも大切なことは、コンセプトを持つことです。
コンセプト
1. 概念。観念。
2.創造された作品や商品の全体につらぬかれた、骨格となる発想や観点。「コンセプトのある広告」。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
シンプルに言い換えると、コンセプトとは「対象となる人」と「モノやコト」を結びつける考え方です。
商品やサービスの場合、対象となる人はターゲットとなる生活者、モノやコトは商品やサービスそのものとなり、それらを結びつけるための新しい価値を示すものがコンセプトです。
たとえば、有名なコンセプトにスターバックスの「第三の場所(Third Place)」があります。それまでの喫茶店やカフェは、くつろいだりおしゃべりをしたりする場でしたが、スターバックスは「家庭でもなく職場でもない、第三の場所」というコンセプトで、カフェの新しい価値を表現し生活者にとってほかにはない唯一の場を創造しました。
その結果、スターバックスは「カフェ」でも「喫茶店」でもなく、「スタバ」という固有名詞で選ばれる存在となりました。
このように、コンセプトは対象となる人のこれまでの認識や価値観を変えたり、比較される競合から抜け出すほどのパワーがあります。
また、コンセプトがあると、店舗の開発やインテリア設計、ツール類のデザインはもちろん、従業員の意識や働き方に至るまで、すべての関係者が共通のイメージを理解することができるので、世界中にショップを展開してもブランドとしての雰囲気や「らしさ」を統一的に生み出すことが可能となります。
コンセプトを持つことで社内報も社員の皆さまにとっての価値を示すとともに、その価値をつくるすべての人の認識を一致させることが可能となり、その結果「読まれる社内報」をつくり続けることができるのです。
社内報のコンセプトは「発行目的」と「社員の皆さま」をつなぐ考え方
「対象となる人とモノやコトを結びつける考え方」というコンセプトの定義を社内報にあてはめると、対象となる人は「社員の皆さま」、コトやモノは「発行目的」。つまり、社内報のコンセプトは「社員の皆さま一人ひとりと発行目的を結びつける考え方」になります。そして、社内報のコンセプトを考えることは、「発行目的と社員の皆さま一人ひとりとを結びつける考え方は何か?」への答えを探ることになります。
では、その答えとはどのようなものなのかをお伝えするために、まずはいくつかの社内報のコンセプトの例をご紹介します。
コンセプト例1:「がんばりのサプリメント」
「ドキドキ」「ワクワク」「うるうる」「ほっこり」「クスッ」の5つの切り口で、社員の仕事やプライベートの活動に対する「がんばり」や「がんばる意味」「がんばれる理由」を聞いて共有し、みんなの明日を支える。
コンセプト例2:情熱のトレジャーマップ
仕事やプライベート活動に宿る「情熱」や「こだわり」といった、人の行動の深層に迫って「思い」を掘り起こし、それらを他の社員につなぐことで、事業や部署などの組織の枠を超える人と人のつながりを生み出す。
コンセプト例3:未来づくりの舞台裏
経営ビジョンや方針、さまざまな現場に共通する問題、社会課題など、組織の横串となるテーマを入り口に、それらにチャレンジする職場や社員のがんばり、乗り越えるためのアイデアや工夫などを共有し、未来へのさまざまなアクションやマインドを共有する。
いかがでしょうか。
担当者自身が感情レベルで何としてもやってみたい!と熱く感じられるかどうか。このコンセプトなら社員の皆さまに読まれるだけではなく、つくり手である自分自身も、社内報のテーマや内容、表現について「こんなことをすべき」「こんなことをやりたい」「このようにしていきたい」とアイデアやイメージが、無限にあふれ出てきそうと感じられるものになっているかどうか。これが、「社員の皆さま一人ひとりと発行目的を結びつける」ことへの答えです。
社内報のコンセプトを考えるときは、社内の状況に対する問題意識と発行目的を意識しながら、社員の皆さまが「読みたい!」と感じるアイデアを何度も何度も行ったり来たりしながら考え抜くことが大切です。
アイデアはパソコンの前やデスクからは生まれない
では、「社員の皆さま一人ひとりと発行目的を結びつける」アイデアを生み出す方法についてお伝えしていきます。
まずはコンセプトを考えるときの注意点から。コンセプトを考えるときは以下の3つのルールを守ることが大切です。
コンセプトを考えるときのルール
- 発行目的や会社の状況は頭の片隅によける
- 読者アンケートの集計結果などのデータに頼らない
- デスクやパソコンの前では考えない
通常の業務のように対応しようとすると、どうしても論理的に考えようとしてしまいがちです。けれども、アイデアを考えるときやイマジネーションを膨らませるときは、論理的な思考が邪魔になる場合が多々あります。
もちろん、考えるための情報やきっかけが何にもない状態ではアイデアは浮かばないため、発行目的や会社の状況、読者アンケートについては、アイデアのきっかけやイマジネーションのヒントとして細かな点を気にすることなく、おおまかに捉えておきます。そして、「どんな社内報があったら会社の考え方、いろいろな問題に関することを、みんなに興味を持て読んでもらえそうかな?」と、自由にイメージを膨らませます。
とは言え、普段からコンセプトを考えるトレーニングをしていない人が、いきなりコンセプトを考えようとしても、なかなか思うようにアイデアやイマジネーションは出てこないものです。
そこでおすすめするのが「何かに例えて考える」方法です。先ほどのコンセプトの例も「サプリメント」や「トレジャーマップ」、「舞台裏」といった例えで表現していました。
コンセプトは何かに例えて考える
- 人の元気に役立つもの
- 人の気持ちを高めるもの
- 人の興味をくすぐるもの
コンセプトを何かに例えて考えるときは、人が欲しいと思うものや興味を持つものを選びます。その例えに対して組織の課題を解決するために、社員や組織の「何」に作用させるかを考えます。先ほどのコンセプト例では、「がんばり」や「情熱」、「未来づくり」へ作用させたいと考えられています。
このような発想で、「ああでもない」「こうでもない」「これならどうか」「ここを少し変えてみては」と、発行目的や会社の状況との間を何度も何度も行き来し、さらにそれらの考えで実際に社内報をつくるとしたらどのようなものになるかをイメージし、アイデアを深めたり広げたりしながら「これなら読まれる!」を発見します。
ここまでくれば、「こんな社内報をつくりたい!」というアイデアが、かなり鮮明にイメージできる状態になっているかと思います。
コンセプトメイキングはここまでです。
あとは、このコンセプトをもって上司や関係者、あるいは役員や社長などの納得や承認を得るための企画書づくりへと移行します。コンセプトづくりとは異なり、上司の納得や承認を得るための企画書では、論理性が重要です。そのため、コンセプトメイキングで考えたアイデアや、そのアイデアの必要性としてイメージしたことを論理的に整理することが大切です。
コンセプトを論理的に整理する
1)社内報の立ち位置から見た会社の状況への問題意識や、読者アンケートから得られた情報やデータで現状を整理。
2)それらをもとに社内報の課題を具体化
3)そして、考え抜いてできあがったコンセプトを示す
4)次に課題に対してコンセプトによって何をどのようにして解決するのかといった考えをまとめます。
こうして作成した企画書で、ぜひ新たな社内報へのリニューアルを社内で進めてみてください。
社内報の読者アンケートの作り方はこちらへ
まとめ
先ほどの3つのコンセプトは、いわゆるタテヨコナナメのコミュニケーションに対して、ひとつ目はタテ、2つ目はヨコ、3つ目はナナメに重点が置かれていることに気づかれましたか? 今回の記事は「読まれる社内報にする」という趣旨でしたので、この点についてはお伝えしませんでしたが、コンセプトを考える際には是非この観点も加えてください。
また、コンセプトワークやコンセプトメイキングは慣れやトレーニンングが必要です。仕事では実践する場面が少なく、また、必要なときには一定のレベルが求められるため、たとえば料理をするときや旅行をするときなど、日常生活のなかで試してみることをおすすめします。
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