【読まれる見出しの基礎知識5】 見出しの考え方と事前の準備を知る
見出しに関するお悩みを解決することを目的に、見出しの考え方やつくり方、考えるタイミングや理解しておくべき役割などを、じっくり全7回にわたってお伝えしている本連載。5回目となる今回は、見出しづくりの考え方と事前の準備についてです。
社内報とその他の見出しづくりのノウハウの違い
これまでの連載でお伝えしているとおり、社内報の見出しの目的は「情報と読者の関係を築く」ことです。
一方で、一般的に見出しづくりは「記事を端的に要約すること」、「結論をシンプルにまとめること」と紹介されていることが多いと思います。
一般的なノウハウが社内報の見出しづくりとなぜ異なるのかというと、一般的に見出しをつくる際はあらかじめ読者がその情報を得たいという欲求がある場合が多いことに対して、社内報は従業員の欲求に基づく情報ばかりではないからです。競合する媒体もから読者に「選ばれる記事にするための見出しづくり」に主眼が置かれています。
ところが社内報は、基本的に他のツールと競合することがないため、一般的な見出しのように、選ばれる見出しにすることよりも、読者である従業員一人ひとりの「読もう」といった欲求を喚起することが求められるのです。
社内報の見出しに対する読者の価値と事前準備
社内報は通常、強制的に読ませるものではなく、読むか読まないかは、読者である従業員一人ひとりの意思に委ねられるものです。そのため、社内報の見出しには、読者である従業員の欲求と直接関係しない情報についても「読みたい」というを生み出すことが必要となります。
つまり、従業員が見出しを見た瞬間に、記事の内容に対して直感的に自分にとって必要な情報だと「価値」が感じられるものになっていることが望ましいのです。
商品やサービスであれば、その内容が支払う金額よりも大きければ、価値があるものとして購入され、逆に小さければ価値がないものとして購入を見送られます。
社内報の記事の場合は、その記事を「読む」ための「時間」や「労力」との対比によって価値が測られると言えます。さらに、その記事の価値は、内容そのものに対してはもちろんですが、まずは見出しによって判断されることとなります。
そこで、社内報の見出しは、一般的な見出しのように内容の要約や結論だけを踏まえるのではなく、読者が記事を読む価値を感じるようにするにはどうすれば良いかを考える「事前準備」が必要になってきます。その事前準備とは以下の2つです。
社内報の見出しづくりの事前準備
・ 情報を読者にとっての意味として理解すること
・ あらかじめ読者の欲求を知っておくこと
情報を読者にとっての意味として理解すること
一つ目の「情報を読者にとっての意味として理解すること」とは、記事で伝える情報が、読者にどのような効果をもたらすかの観点で捉えることです。
最近さまざまな会社が取り組み出している「DX(デジタルトランスフォーメーション)」を例にお伝えします。
社内報でこのような新しい考え方や取り組みを取り上げる場合、企画段階では、従業員一人ひとりの理解や自分ごと化を促すことをねらいに、DXの意味や必要性、会社の方針や計画、取り組みの内容を紹介したりすることが多いのではないでしょうか。
その際に見出しを「DXとは何か」や「DXがスタート」などにすると、従業員がDXについて詳しく知る必要性を感じている場合は問題ないのですが、そうではない場合、その記事を限りある時間と労力を費やしてまで読む価値がないと感じる人が出てきてしまいます。
すると、本来ならDXについて詳しく知る必要性を感じていない人にしっかり読んでほしい記事であるにもかかわらず、逆にターゲットに届かない記事となってしまうのです。
情報の知識を得る
そこで、DXが従業員にとってどのような意味を持っているのかを、見出しをつくる前に探ることが必要になります。
まず、伝えようとしている情報の基本的な認識や知識を、社内報担当者ご自身が正しく、しっかり持つことから始めます。
たとえばDX推進の背景は、中長期的な視点で競争優位性を確保し続けるために最新のデジタル技術を経営の中核に据えて、経営の意思決定やビジネスモデル、仕事のプロセスなど、経営の全体構想を抜本的に見直し、生産性の大幅な向上を図ることにあります。
このように、伝えようとしている情報の全体像をしっかり認識・理解します。
情報と読者との関係を探る
次に、その認識や理解をもとに、その情報と従業員との関係を探ります。
DXであれば、部門を超える規模で仕事のフローやプロセスの刷新、組織体系の抜本的な変更、仕事の役割や成果の刷新、行動変容など、従業員との関係は働く環境や働き方が大幅に変わる点にあります。
また、働き方やコミュニケーションに関する考え方、仕事の意味や目的を、DXに基づく新しい価値観や方法論をもとに、一斉にアップデートすることが求められることも従業員に大きく関係してきます。
このように、情報と従業員との関係を探ることで、その情報の従業員にとっての意味を考えることができます。
なお、ここでお伝えしている意味とは、辞書で解説されているような普遍的なものではなく、情報に対する認知度や社内の状況などによって内容が異なるものです。
社内報で伝えるDXの意味を、「従業員の活躍の機会や場がこれまでとは異なる可能性が出てくること」「デジタル技術に強い人だけが優遇されるのではなく皆に新しいチャンスが巡ってくる取り組みである」と考えたとします。
すると、先ほどの「DXとは何か」、「DXがスタート」のような表現ではなく、「DXの視点で再発見!自分自身の新しい強み」や「DX推進と新しい働き方のより良い関係」など、読む意味を含めた見出しにすることができます。
あらかじめ読者の欲求を知っておくこと
続いて、従業員一人ひとりが貴重な時間や労力を割いてでも「読みたい」と感じる記事にするための見出しを作る事前準備の二つ目のポイント、「あらかじめ読者の欲求を知っておくこと」についてお伝えします。
読者の欲求は、読者が社内報に求めることと深く関係しています。
読者が社内報に求めていること
・ 会社の動きを知ることができる
・ 会社の方針や経営者の意向を知ることができる
・ 製品やサービスの裏側を知ることができる
・ いろいろな部門や職場の人や仕事を知ることができる
・ 仕事の役に立つ情報やノウハウを知ることができる
・会社について外からどのように見られているかを知ることができる
・仕事以外のことも含めて「ほっこり」できる
これらの情報を社内報に求める背景
<会社や仕事に対してよりポジティブに取り組んでいくための欲求>
・ もっと活躍できる可能性や方向性を知っておきたい
・ 会社のイメージとか他社との違いを具体的に知っておきたい
・ 仕事中にリラックスしたり息抜きができる何かが欲しい
<会社や仕事に対するネガティブを払拭したいといった欲求>
・ 会社や今後の仕事に対する不透明さをなくしたい
・ 仕事を進める上での不安を予め取り除いておきたい
・ 業務をもっと効率化して業務負荷や残業を減らしたい
これらの欲求は社内報に対する読者の「機能的な欲求」です。これに対応する価値を「機能的価値、機能的ベネフィット」と言います。
そして、商品やサービスに人がお金を費やすのは、機能的ベネフィットよりもむしろ「情緒的ベネフィット」が大きく影響すると言われています。情緒的ベネフィットとは、たとえば安心感や高級感、上質感といった、その商品やサービスによって得られる情緒的な欲求に対応する価値のことを言います。
社内報の場合はどうでしょうか。
社内報の情緒的価値(情緒的ベネフィット)
・ 高揚感が得られること
・ 安心感が得られること
・ 特別感が得られること
・ 連帯感が得られること
・ 優越感が得られること
このように、従業員が「〇〇感を得られること」が、社内報での情緒的ベネフィットと考えられます。
つまり、読まれる社内報になるかどうかは、機能的な欲求を満たしているかどうかと、従業員が求める「〇〇感」を見出しから直感的かつ瞬時に感じ取れるかどうかが、結果を大きく左右する分岐点となります。
これを先ほどのDXの例でご紹介した「DXとは何か」と「DXの視点で再発見!自分自身の新しい強み」とで比較してみます。
前者には読者の機能的な欲求や情緒的な欲求、対応するベネフィットが見出せないですが、後者には「全体像や結果が見えない新しい取り組みへの不安を解消したい」という機能的な欲求と、「安心感」や「期待感」が得られるという情緒的な欲求に応える表現となっているのがお分かりいただけるでしょうか。
まとめ
ここまでお伝えしてきたように、社内報の見出しは一般的に紹介されている見出しづくりとは異なるノウハウやテクニックが必要となります。
一定のテクニックを身につけることも必要ですが、いかに従業員の状況や気持ちに寄り添えるかによって、読まれるかどうかがが決まるのではないかと思います。ぜひ、見出しづくりの参考にしてみてください。
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