社内報のデザインで押さえておくべき7つのポイント
誌面を開いた瞬間に伝わる「印象」を情報として考える
読者は誌面上の文章や写真、図、イラストから情報の全てを受け取るのではなく、誌面をパッと開いたときの「印象」も情報として受け取ります。
また、文章などで伝えられる情報は、内容を理解するための情報ですが、「印象」という情報は、読者がその記事を読むかどうかを、瞬時に判断します。
特に社内報は、仕事の合間に読まれることが多く、読み飛ばされがちなツールです。読んで欲しい、あるいは理解して欲しい情報には、「印象」という情報を他のツール以上に重視する必要があります。
正しいスタイルを選んで印象を情報化する
印象を情報として設計するためは、デザインのスタイルを、文字などで伝える情報を踏まえて正しく選ぶことです。
スタイルとは日本語では「様式」と表現されますが、もう少し簡単に表現すると、誰もが共通して感じる見た目の「クセ」のようなもの。
例えば、身近な例で言うとインテリアでよく使われる、ヨーロピアンやアジアン、モダン、ナチュラルなどが、インテリアの場合のスタイルの表現です。
このようにスタイルがその意図に沿って明確に表現されていると、パッと見たときに誰もが「ヨーロッパっぽい」とか「近代的」といった印象を、無意識に感じ取ります。
社内報のスタイルの考え方は服装やメイクに近い?
インテリアだけではなく、特に服装やメイクはTPOに合わせるといった点で、社内報に近いと言えます。
どういうことかと言うと、服装やメイクをTPOに合わせて考える場合、自分自身の主観だけで考えるのではなく、自分自身が相手に伝えたい内面的なものを、相手がそれを正しく受け取ってくれるような外見として表現できるものを選ぶと思います。
社内報の誌面も同様に、文字などで伝えようとしている内面的な情報が、読者に瞬時に正しく伝わると同時に、読者にその情報に興味を持ってもらえるようにと意図して、見た目である印象、つまり外見的情報を最適なものにすることが、読まれる情報にするために欠かせないポイントなのです。
社内報のデザインのスタイルは知識として学ぶことができる
服装やメイクのように、普段の生活に関するスタイルは、文化的な背景や経験を通じてほぼ無意識に学びますが、社内報のスタイルとなると意識的に学んでいく必要があります。
社内報を含むエディトリアルデザインは、服装やメイク、あるいはインテリアや建築、製品のデザインと同じく、社会の工業化の歴史のなかで、カタチや色に対する共通性のある無意識の反応を、科学的に解き明かすような学問によって導き出されたり、その研究が進められたりする過程で、知識や情報になっていますので、ここからはその知識や情報についてお伝えします。
スタイルとトーン&マナーの関係について
社内報のデザインを含むエディトリアルデザインのスタイルは、インテリアや建築のように、学校の教科書に載るような体系化まではされていません。
ときにはヨーロピアンやモダンといった言い方をしたりしますが、これはエディトリアルデザインの場合、スタイルではなく調子、つまりトーンと言います。
ちなみにトーン&マナーという言葉を聞いたことがある方は多いと思いますが、トーン&マナーとは、目指すスタイル、つまり読者に伝えたい印象としての情報を正しく設計するためのルールのことを言います。
社内報のデザインのスタイルを考えるための7つのポイント
ここからはスタイルを考えるためのポイント7つについてお伝えしてまいります。
- 揃え
- 書体
- 視覚度
- 図版率
- ジャンプ率
- グリッド拘束率
- 版面率
このなかの「揃え」と「書体」は聞きなじみのある言葉だと思いますので、先に簡単に説明しておきます。
揃え
揃えとは、横書きの場合は、右揃え、左揃え、センター揃え、両端揃え、縦書きの場合は上、下、センター、両端揃えがあります。
これらは通常、どれが読みやすいかといった観点で、横書きの場合は主に、左揃えか両端揃えが選ばれますが、デザインのスタイルと言う点では読みやすさだけではなく、印象という情報と関連づけて考えます。
左揃えの場合は読みやすい一方で、ノーマルな印象になります。
センター揃えは格式高い印象に、右揃えはカジュアルさや元気さ、自由さを表現する場合は、右揃えを選択する場合もあります。
ただ、右揃えを頻繁に使用すると、その効果は薄らぐと同時に、冊子全体が読みづらいものになってしまうので、ここぞという場面に残しておくことが望ましいです。
書体
書体は主に、明朝体とゴシック体があります。欧文フォントの場合、明朝体のような書体をセリフ書体、ゴシック体のような書体をサンセリフ書体と言います。この他にも筆文字やカリグラフィ書体、ポップ書体などがあります。そして、ほとんどの書体に、Light、regular、Boldといった、太さの設定があります。
それらはそれぞれ醸し出す印象が異なり、一般的に明朝体やセリフ書体は、繊細さや優雅さ、上質、高級といった印象を醸し出します。ゴシック体は力強さ、堅実さ、親近感、安定感、カジュアルといった印象を醸し出します。いずれも太さによって、あるいは角の丸みによって印象は変わります。筆文字やポップ書体などは、それぞれに強い個性があり、見出しでその個性を活かして、誌面のスタイルを決定づけるといった使い方をします。ただ、これらの書体は通常、明朝体やゴシック体とは異なり、可読性が低いため本文には使用しません。
視覚度
揃えや書体についてはビジネス系のソフトでも意識するポイントですので、既に理解されている方も多いと思いますが、ここからの内容は少し専門的なポイントですので、できる限りわかりやすくご説明します。
まずは視覚度。視覚度は「本文の文字に対する、写真やイラスト、図などのビジュアル素材の強さの度合い」を表しています。タイトルを強く打ち出す誌面も視覚度が高いと言えます。
つまり、文字だけの場合は視覚度が低く、写真やイラストを大きく配置したり、たくさん使用したりすると、視覚度が高いということになります。
視覚度を高くすると、読み手の目に留まったり印象に残りやすくなったり、比較的カジュアルな印象になるといった効果があります。一方で厳かな印象や知的な雰囲気を醸し出したい場合は視覚度を低く抑えます。
図版率
図版率とは誌面に占める写真やイラスト、図と文章の面積の比率のことを表す言葉です。図版率は視覚度と似た言葉ですが、視覚度が強さを表していることに対して、図版率は視覚素材の面積の比率、つまり%で表す言葉です。
図版率の%が小さい、つまり視覚素材の面積が小さいということは、文字が多い誌面だということになります。図版率が小さい誌面は視覚度も低くて訴求力は弱くなります。また、その印象としては固い、まじめ、古いといったもの。一方で図版率が大きく、視覚素材の面積が大きい誌面は視覚度が高く、インパクトが強くなります。印象としては用いる視覚素材によって、カジュアルさや柔らかさ、親しみやすさをはじめ、誌面の表情をさまざまな方向で豊かに演出することが可能となります。ただし少ない視覚素材で図版率を極端に大きくすると、その誌面には動きがなくなり、何も語りかけてこない誌面になる可能性があるため、目で確認しながら最適なバランスを考えることが必要となります。
ジャンプ率
ジャンプ率とは誌面に配置する素材の大小差の比率を表す言葉です。誌面に配置する素材とは、写真やイラスト、図だけではなく、本文やキャプションなど、文字も含みます。ジャンプ率は誌面のスタイルを決める大きなポイント。写真などの視覚素材も本文などの文字も、ジャンプ率を大きくすると元気で活気のある誌面になり、小さくすると上品で格調の高い、落ち着いた印象の誌面になります。
なお、誌面の印象は配色や使用する書体、視覚素材の内容、余白の大きさなども影響しますので、ジャンプ率だけでこれらの印象や雰囲気を設計することはできないのですが、扱う素材だけでは目指す印象や雰囲気を醸し出すことは難しく、ジャンプ率を適切に取り入れることで、その誌面はメッセージ性の高い、極めて効果的なものとなります。もちろん、それらの素材とジャンプ率との関係が悪いと、逆の効果が生まれる可能性があります。
また、ジャンプ率はテクニックの一つではなく、どのような誌面にも発生する視覚効果であり、更にはちょっとの変更でバランスが崩れることもありますので、常に意識しながら、修正のたびに違和感がないかを目で見て検証し続ける必要があります。
グリッド拘束率
グリッド拘束率とは、文字や視覚素材を配置する際の「秩序」を守る比率を表します。グリッドとは、誌面に設定するルールの一つで、目に見えない方眼紙の線のようなもの。主なものとしては「段組み」があります。グリッドはあまりに専門性が高い内容ですので、詳しい説明は省きますが、グリッド拘束率とは、グリッドという誌面の秩序からの逸脱の度合いを表しています。考え方としては逸脱度が高いと、読みやすさや見やすさが高まるとともに、まじめさや、静かさなどを表現しやすい一方で、動きを感じづらい誌面になります。グリッド拘束率が低いと、自由で開放的な印象を醸し出せますが、読みづらくなったり、動きがありすぎて、どこから見れば良いのかがわからない誌面になる可能性があります。
上手な活用法としては、誌面全体はグリッド拘束率を高めておき、目立たせたい一部分だけをグリッドから少しずらすといった方法。整然とした誌面の一部に違和感をつくることで、その違和感に目線を向けさせるといった効果が得られます。
版面率
最後は版面率。版面は「はんめん」や「はんづら」と読みます。版面率とは、誌面の四つの辺と、見開きの真ん中の辺の余白であるマージンと、文章や視覚素材を配置する部分の比率のことを指します。
注意する点としては、先ほどお伝えした視覚度や図版率、ジャンプ率などとは違い、版面率は基本的には見開きごとではなく、冊子全体の共通のルールとして設定します。
つまり、普段は意識することが少ないマージンですが、このスペースの広さやバランスによっても、誌面の印象は大きく変わることに加えて、版面率は冊子全体に影響しますので、他のポイント以上に慎重に検討する必要があります。
まとめ
少し専門的なお話になりましたが、今回お伝えしたポイントを意識しているか否かによって、デザインのクオリティに各段の差が生まれます。
また、お伝えした内容は社内報のみならず、他のツールはもちろん、企画書づくりなどで使用されているパワーポイントのデザインやレイアウトの見やすさや説得力を高めるためにも効果的です。今回お伝えした内容が、社内報のレベルアップのお役に立てることはもちろんですが、企画書づくりなど、皆さまの普段のお仕事のイメージアップや生産性の向上のお役に立てると嬉しく思います。
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