社内報づくりの基本【後編】
社内報は、社内のさまざまな「関係性」をより良い方向に導くためのツールです。
ここで言う「関係性」とは、たとえば経営と社員、社員と社員、社員と社会、社員と仕事など、さまざまなものを含んでいます。
そのための主な役割としては、経営の想いを届けたり、社員同士をつなげたり、働く意欲が高まるような情報を提供したりといったことが挙げられます。
社内報はこのように、関係性をより良い方向へ導くことを大きな目的として、さまざまな役割を持たせて運用する、会社にとってかけがえのないメディアだと言えます。
今回の記事では具体的にどんな目的で社内報が発行されているのか後編をお送りします。
◾️前編はこちらhttps://labo.liaison-kikaku.co.jp/column/h05_10088/3715/
定番コンテンツにもひと工夫を
テーマとしては定番と言えるものでも、読まれる社内報にするために工夫した事例はたくさんありますので、そういったコンテンツの一部をご紹介します。
新入社員紹介
毎年恒例の新入社員紹介のコンテンツは主に、新入社員一人ひとりからコメントを寄せていただいたり、アンケートに答えていただいて、その結果を掲載したりするものが多いと思います。
新入社員紹介は比較的よく読まれるコンテンツですので、そのままでも問題ない場合も多いのですが、少し工夫を加えることで、先輩社員も関われるコンテンツになります。
たとえばアンケートについて、新入社員にだけ問うのではなく、先輩社員にも答えていただき、それを対比して掲載したり、新入社員へのアンケートで、仕事をするにあたって不安に感じていることを聞くと同時に、先輩社員には不安に感じることをどうやって克服したのかを聞く内容にすると、社内報を媒体とする双方向のコミュニケーションコンテンツにすることができます。
プロジェクト密着・取り組み紹介
華々しい成果が出たプロジェクトだけでなく、過酷なチャレンジに取り組んでいる途中のプロジェクトにフォーカスすると、現在進行形の内容を伝えることができると同時に、取り組みが社内報に掲載されることで、そのチャレンジに取り組んでいる人たちにすると、全社的に応援してもらっているような印象を受けるコンテンツにすることができます。
また、会社として望ましい結果につながらず、社内から「失敗」と受け取られているプロジェクトでも、その過程や結果はゼロかイチかの世界ではなく、さまざまなチャレンジの足跡や、部分的な成功は数多くあることが少なくなく、それらを取り上げることで、「失敗だったけれども有益な機会」だったといった認識へ変えるコンテンツにすることもできます。
役員の素顔・横顔
あえて「カジュアルな素顔」を見せることで、経営層との距離を近づける効果が期待できます。
社内報編集者の職場体験レポート
職場の人に自分の職場を紹介していただく職場紹介コンテンツではなく、社内報編集者がその職場で仕事を体験してきたという建て付けにすることで、その職場の人には見えない魅力や仕事の奥深さを伝えることができます。
数字で見る○○
数字は量や規模感を伝えるだけではなく、見せ方や切り取り方次第で、非常に注目度の高い要素にさま変わりする要素ですので、あまり関心が持たれづらい情報も、その効果を活かすことで、読まれるコンテンツにすることができます。
読者にとっての「お得は何か」を押さえる
ここまでで、読まれる社内報のコンテンツ作りや工夫についてをお伝えしてきましたが、コンテンツを作る際にはテーマだけでなく、「これは一方的なコンテンツになっていないかな?」といった姿勢で、一度立ち止まってみることも大切です。
情報と一緒に読者への想いも届ける
社員に読まれたり、役に立ったりする、効果的な社内報のコンテンツはいずれも、社員が「読んでよかった」「ちょっと得した」と思える要素が含まれていることが多いのです。
例えば、「この発想は目から鱗」といったような考え方や、「ウチの会社がこんなすごい取り組みをしているとは知らなかった」といった情報が含まれているコンテンツなど、「小さな気づき」や「自社のトリビア」がその代表例。
こうしたコンテンツが社内報に含まれると、その社内報は社員にとって何かを「伝える」ツールから、何かが「伝わってくる」へと成長していきます。
その根本には、読者である社員の皆さまに、何らかの「お得」を届けたいといった、編集者の想い。
この想いが社員に届くと、社内報は社員の心に響くツールへと成長していきます。
定番企画と新しい切り口のバランスを
とは言っても、すべてのコンテンツにこのような工夫を施すことは、業務としての負担が増大するため、作り手サイドの業務バランスを考えたコンテンツ作りも大切です。
また、ニュースのような記事は「さらっと読める」ことが読者にとっての価値だったりもします。
つまり、裏を返すと、すべてがしっかり工夫されたコンテンツではなく、読みやすくて、何が書いてあるのかある程度予測できる定番のコンテンツもあることで、読者は安心して一冊を読み通すことができ、さらにはそのようなコンテンツが、工夫を加えた重みのあるコンテンツを引き立てる役割を果たしてくれることになり、飽きずに最後まで読み通してもらえたり、大切な情報をしっかりと届けるツールにすることができるのです。
そういった読者にとっての価値の観点を踏まえながらツール全体を見渡して、読み手にとって「新鮮」で「安定感」があり「リアリティー」が伝わってくるなど、「読み手にとって心地よさとワクワクのバランスがとれたリズム」をつくるという考え方で取り組むことが、社内報作りには欠かせない姿勢とも言えます。
読まれる社内報の掲載要素
ここまでは読まれるコンテンツについてお話をしてまいりましたが、ここからは読まれる「掲載要素」についてお伝えします。
読まれる社内報の主な掲載要素は「人」
多くの企業で行われた読者アンケートを見ると、「社内報でいちばん興味がある内容は?」という問いに対して、最も多く挙げられるのが「人」、つまり社員に関する記事です。
たとえば、他の部署の人がどんな仕事をしているのかを知りたいといった意見や、人がどんな想いで働いているのかを知ることができたといった感想が、業種を問わず、さまざまな会社の社内報のアンケートでたくさん寄せられます。
つまり、「会社のこと」を伝える場合でも、それを「人」で伝える切り口で何かできないかと考えてコンテンツの企画を考えていくことが、読者の視線を集める社内報にする、極めて有効な手段と言えます。
「人」を取り上げる切り口のバリエーション
社員を紹介する記事と言っても、「自己紹介」や「インタビュー」だけではありません。
読者の関心をひきつけるためには、切り口を広げることがポイントになります。
例えば、職種ごとの仕事の内容を紹介するコンテンツでも、「仕事の裏側」といった切り口にすることで、さまざまな職種の人に、普段は見えにくい仕事を語っていただくことができます。
同じように、さまざまな職場の業務内容を紹介する場合も、「私のこだわりアイテム」といったタイトルで、仕事に使う道具を切り口にして、それを何にどのように使っているのかを人に語っていただくコンテンツにすることができます。
このように、コンテンツを考える際にはテーマと合わせて、人をいかに取り上げるかといった視点で企画を練り込んでいくと、読まれるコンテンツにすることができると同時に、企画や見せ方の幅も広がっていきます。
「人の見せ方」にもバリエーションを
取り上げる人が同じでも、見せ方を変えるだけで印象は大きく変わります。
たとえば、社員インタビューでは、入社から現在までの成長の軌跡を描くコラムを加えたり、その人の周辺の方から「その人らしさ」を語っていただくコメントを掲載することで、人の見せ方がより豊かになります。
そのほか、部署や世代を超えた対話で社員の本音を引き出すといった「方法」から、その方法が有効なテーマは何かないかと考えることも可能です。
こうした工夫によって、たくさんの人が載っている社内報に留めることなく、人を多彩に載せたり、「人間らしさ」や「温度感」に触れることができる、共感や親しみが感じられる社内報にしていくことが可能となります。
読み手の興味を惹きつけるタイトル
読まれる掲載要素としてここまでは「人」についてお伝えしましたが、それと同じくらい大切な要素に、記事の「タイトル」が挙げられます。
たとえば先ほどお伝えしました「数字で見る○○」のような、キーとなるものを前面に押し出すタイトルや、「今に活きるあの『失敗』」など、意外性を感じたり、人の興味をくすぐるようなタイトルは、読者の目を惹きつけます。
さらには、そういったタイトルを社内報のなかにいくつか散りばめると、それが起点となって、他の記事も読まれるといった相乗効果を生むこともあります。
読まれる社内報にするためのポイントをわかりやすく紹介
りえぞん企画が運営する「社内報ラボ」では、はじめて社内報制作に携わる方に向けて、読まれる社内報づくりにするためのポイントを、社内報づくりのステップに分けて、連載でご紹介していますので、ぜひそちらもご覧ください。
https://labo.liaison-kikaku.co.jp/column/h10_10073/3294/
社内報制作FAQ
ここまで、社内報の目的から読まれるためのポイントまでお伝えしてきましたが、最後は、社内報制作のご担当者の皆さまからよくいただくそのほかの疑問について、Q&A形式でまとめてお伝えします。
Q1:社内報にもターゲット設定って必要ですか?
A:はっきりと絞り込みをする必要はありませんが、「想定読者」を意識することは大切です。
社内報は社内全体に向けて発信するものですが、すべての社員にとって同じように響く内容というのはなかなか難しいものです。
だからこそ、「この企画は若手社員が共感しやすいかな?」「このメッセージは管理職にも意識してもらいたい」など、誰に伝えたいかを意識するだけで、企画の深みや切り口が変わってきます。
Q2:社内報のアンケートってやった方がいいですか?
A:社内報は読者のためのツールですので、読者の声を聞いて作ることが大切です。
また、読者の声は、改善や企画づくりのヒントの宝庫です。
たとえば、年に1回、簡単なWebアンケートを実施するだけでもOKです。
アンケートの内容は主に、読んでいる企画・読んでいない企画、今後取り上げてほしいテーマのほか、役に立つ?楽しい?読みやすい?といったような、社内報の印象や受け取り方についても聞くと、社内報のレベルアップに効果的です。
なお、社内報は回答率を上げることも重要ですので、アンケートの設問や選択肢の量を可能な限り絞り込むことと、答えやすいような選択肢にするといった工夫もポイントです。
Q3:社内報は定期的に刷新した方が良い?
A:社内報に関連する社会的な動向は概ね3〜5年程度で変化し続けているため、定期的な刷新は必要だと考えます。
特に近年は、社内の環境も社員の働き方も、どんどん変化しているため、社内報もその状況を見据えてアップデートしていくことが必要です。
一方で、会社によっては「デジタル移行を急ぎすぎて情報格差が生まれた」などの声もあります。
大切なのは、「誰にとっても、必要な情報がきちんと届く」こと。
この点をしっかり捉えながら、社員の立場に寄り添って進化していくことが大事です。
社内報の定期的な見直しを考える前に、まずは一度、第三者の視点から今の社内報を分析してはいかがでしょうか?
りえぞん企画では「社内報の無料診断」を行っておりますので、ぜひご活用してみてください。
Q4:社内報の業務を効率化するにはどうすればいいですか?
A:全てをゼロから作るのではなく、定番企画の編集やデザインはテンプレート化して、業務の安定化を図ります。
社内報制作には、情報収集・取材・原稿作成・デザイン・校正など、たくさんの工程があります。
これらを毎回、順番に追っていくような作り方をしていると、膨大な時間と労力が必要ですが、コンテンツのいくつかをテンプレート化することで、制作進行が安定化すると同時に、しっかりとチカラを注いで作るコンテンツに、時間や労力といったリソースを割くことができるため、テンプレート化は決して「手抜き」ではなく、クオリティーの高い社内報作りといった点でも有効な考え方となります。
Q5:マンネリ化を防ぐにはどうすれば良い?
A:読者の「心の動き」を意識した企画づくりが有効です。
その方法は、この記事から「何をどう感じとってほしいか」といったことや、読む前と後で気持ちや感情にどんな変化を起こすかといった「読後感」を視野に入れると、記事の印象がグッと変わります。
Q6:社内報づくりにはどんなスキルやセンスが必要ですか?
A:一番大切なのは、「会社と社員への好奇心」です。
もちろん、文章力や編集力、デザインセンスなどはあれば心強いですが、いちばん大事なのは、会社のさまざまな取り組みの現場、さまざまな人の仕事に好奇心を持って、少しでもたくさん触れる機会を築いていくことです。
また、好奇心を持つということは、単なる心構えといったことではありません。
というのも、たくさんの人に読んでもらえる社内報へと成長させることに成功している会社の共通点の一つに、「好奇心の連鎖」があります。
そのためにも、読まれるための方法やテクニックを身につけることと合わせて、あるいはそれ以上に、社内のさまざまな場所や動きに好奇心を持ちながら社内報づくりに臨み、そこで感じた興味を社内に広く連鎖させていくといった考え方で取り組んでいただければと思います。
Q7:編集委員会、あまり機能していないのですが、どう活かせばいい?
A:基本は部署代表として「現場の声」を届ける役割を担っていただく。
編集委員会を「企画や改善を話し合う場」としていたり、編集委員の方を「記事づくりの協力者」として接していると、編集委員の皆さまにとってはハードルが高く感じられたりして、うまく機能しなくなっていきます。
そこで、まずは「現場の声」を届ける役割を担っていただくといった考え方で、編集委員会では掲載した内容やデザインの印象について、意見を交わすことから始めることをおすすめします。
さらに、編集委員の方にコンテンツのアイデア出しや、記事づくりで協力をしていただく場合は、定期的に「勉強会」を開くことをおすすめします。
例えば、他社の事例を用意して委員の皆さんに共有し、興味のあるコンテンツを選んでいただいたり、スマホで上手に撮影するため研修のような会を開くと効果的です。
まとめ
社内報は、社内のさまざまな関係性をより良くする可能性を大いに秘めているツールです。
在宅勤務をはじめ、働き方がますます多様化していくことで、社員同士のつながりも以前より弱まりつつある今、会社にとっても社員の皆さまにとっても、かけがえのないツールであることは間違いありません。
社内報ラボでは、そんな状況をしっかりキャッチしながら、社員の皆さまに期待され、愛される社内報づくりに役立つノウハウや情報を、これからもお届けしてまいります。

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