「影響力」で考える社内報の制作と運用
社内報の年間計画やコンセプトを考えたり、定期的な改善・改良を行う際に、発行目的の実現に向けて、より効果的な社内報にしていくために、何をすれば良いのか、どのような点を強化していけば良いのか、どのような考えで取り組めば良いのかといったことがわからないといったお悩みをよく耳にします。
そこで今回の記事では、「影響力」といった観点で、それらのお悩みにお応えしてまいります。
社内報の制作と運用のPDCA
社内報は発行目的の実現に向けて、何を掲載すると効果的か、どのような内容や見せ方で伝えると効果的か、どの程度の頻度で発信すると効果的かといったことを考えて実践し、実践した結果としてどのような効果が得られたかを検証し、改善点や課題を見つけて、より効果的なツールにするために、改善・改良を繰り返しながら進めていくといったPDCAサイクルで、制作や運用に取り組んでいきます。
社内報の「効果」に関する認識は意外とバラバラ
このように社内報は通常、望ましい「効果」が得られることを目指して、制作や運用が行われます。
ただ、その効果とは何かと問われると、意外と適切かつ明確に定義づけられているケースは少なく、社内報を複数のご担当者で連携して作られている場合でも、担当者間でその認識がバラバラだということも少なくありません。
また、実践したことへの効果の検証や課題の抽出にあたって、読者アンケートを行ったり、WEB社内報の場合はGoogleアナリティクスなどの閲覧データを得るツールを用いて、数値的に状況を把握し、問題や課題を見つけるといった取り組みをされている会社は多いのですが、効果とは何かを適切かつ明確に定義づけされていないことにより、読者アンケートの結果や検証データが、あまり有効に活用されていなかったり、あるいは読者アンケートの内容や、WEB社内報の閲覧データの指標を選ぶ基準があやふやになっているといったケースも多々あります。
社内報は社内の雰囲気、関係(絆)、文化を育むための影響力のある装置
このようなバラツキやあやふやな状態を解消するために、ここからは社内報の効果とは何かという点について、社内報が「情報メディア」であるという点に立ち返ってお伝えします。
「ペンは剣よりも強し」といった言葉をご存知でしょうか?
これは、報道機関などが発信する情報や言論は、直接的な暴力よりも人々に影響力があるということを例えた格言です。
新聞や雑誌、ラジオ、テレビ、Webサイト、SNSなどは、情報の伝達やコミュニケーションを媒介するための装置やシステムで、これを情報メディアと言いますが、それらのメディアから発信される情報やコミュニケーションは、先の格言が示す通り、社会の雰囲気や関係、文化の形成に対して大きな影響力を持っています。
社内報もこれらの一般的なメディアと同じ「情報メディア」ですが、この考え方で社内報とは何かを考えると、それは「発行目的の実現に向けて、社内の雰囲気や関係(絆)、文化を育む装置やシステム」となり、その優劣や効果は、発行目的の実現に向けた「影響力」の大きさによって判断することができます。
影響力とは人の心を動かす力のこと
影響力とは何か。
働きかけによって、たくさんの人の心を動かすことができる力です。
そして、その結果として、働きかける相手の意識や考え方を望ましい方向へ変容させたり、働きかける相手から望ましい行動を引き出したりする力のことです。
この考え方をもとに、影響力のある社内報とはどのような社内報なのかと改めて考えると、さまざまな情報やメッセージを社員に適切に届ける力や、それを受け取った社員が意識や考え方をより良い方向に変容することを促す力、望ましい行動を取るきっかけになる力を宿している社内報だと言うことができます。
目指す効果は社内報の影響力を高めること
このような考え方に基づくと、社内報の制作や運用において目指す効果とは、社内報の発行目的の実現に向けた影響力を高めることだと定めることができます。
そして効果測定についても、発信した情報やメッセージの内容や伝え方など、制作や運用に関する取り組みが、発行目的の実現に向けた影響力を高めるということに対して、どのような効果をどの程度もたらしたのかを測ることと定めることができるようになります。
「影響力」で改善や改良を考える社内報の制作や運用
発行目的の実現に向けた影響力を高めることが、社内報の制作や運用における効果だと定める際に押さえておくべきポイントはまず、発行目的が社内報の制作や運用のゴールであり、方向性であり、発信する情報やメッセージ、コンテンツのテーマなどの指針や基準であるということです。
そして、その上でいかに影響力を高めていくかを考えながら、社内報の制作や運用に取り組んでいくことで、社内報を効果のあるツールへと育てていきます。
取り組み方の具体策としては、社内報の制作や運用のさまざまな取り組みを考える際に、それらの取り組みの頭に「社内報の影響力をもっと高めることを目指して・・・」をつけて考えると、取り組みの方針や具体的な対策を導き出すことができます。
効果をはっきりさせることで考える基準が明確になる
例えば、社内報のリニューアルを考える場合は、マンネリ化しているから社内報をリニューアルすると考えてしまうと、方針や対策は「マンネリ化を解消する」ということが、リニューアルの目的になりますが、社内報をリニューアルするという言葉の前に、「社内報の影響力をもっと高めることを目指して」と付け足すと、「社内報の影響力をもっと高めることを目指して、社内報のリニューアルを考える」となり、何のためにリニューアルするのかが明確になります。
WEB社内報の運用の見直しや活性化を考える場合や、冊子版の社内報のデザインや見た目を考える場合、あるいは読者アンケートの設問や、閲覧データの検証ツールの指標選定においても、それらの取り組みの頭に「社内報の影響力をもっと高めることを目指して・・・」をつけることで、「何をするべきか」といったことはもちろん、「何をするべきでないか」といった、考えるべきことや、やるべきことの基準を明確に定めることができるようになります。
影響力は大きさ、広さ、速度、強さ、正しさで考える
ここからは、社内報の影響力を高めるためのポイントについてお伝えします。
まず、影響力を高めるための方向ですが、それは大きさ、広さ、速さ、強さ、正しさの5つの方向が挙げられます。
影響力の大きさ
影響力の大きさとは影響を受ける人の数で、閲覧者数やユーザー数、いいねボタンやコメント機能などでリアクションした人の数によって計測することができます。
影響力の広さ
影響力の広さとは、影響を与える情報やメッセージの範囲やバリエーションのことで、コンテンツのカテゴリー数やテーマ数など、社員に届ける情報の幅の広さが該当します。
影響力の速さ
影響力の速さとは、情報やメッセージが社員に届くスピードのことで、制作期間や公開までの期間といった、情報の発生から社員への到達までのスピードや、情報が社員に到達してから反応が得られるまでのスピードが該当します。
影響力の強さ
影響力の強さとは、社内報に対する社員の期待のレベルや愛着のレベルが該当します。
影響力の正しさ
影響力の正しさとは、情報やメッセージを正確に得る手法の採用や、発行目的の実現に向けて、情報やメッセージを正しく発信する技能のレベルが該当します。
社内報の影響力を高めていくためには、発行目的を捉えた上で、この5つのポイントを物差しとして現在の社内報を見て、どこに課題や弱点があり、何を強化すべきかを考えていきます。
影響力を高めるための取り組みの例
ここからは、5つのポイントの強化の例をご紹介します。
影響力の大きさを強化する取り組み
影響力の大きさを強化するねらいは、閲覧者数やユーザー数、リアクション数を増やすことです。
そのための主な取り組み方として、冊子の場合は社員の皆さまの役に立つ記事づくりはもちろん、手に取ってページを開きたくなるような表紙づくりや、見応えのある誌面にするためのデザインやビジュアル素材を採用するといったことが挙げられます。
WEB社内報の場合は、経営に関する情報やメッセージのほか、楽しめたり、ほっこりしたり、元気になれるコンテンツを加えるといったことや、閲覧率の高いコンテンツを公開する際に、全社メールでプロモーションをして、新たな閲覧者を呼び寄せる取り組みなどが効果的です。
影響力の広さを強化する取り組み
影響力の広さの強化するねらいは、発行目的の実現に向けた情報やメッセージを、多面的に展開することです。
そのためには、発行目的をもとに設定されているコンテンツのテーマやカテゴリーで、手薄だと感じるテーマやカテゴリーを増やしたり、冊子版だけを発行している場合は、WEB版を取り入れることで、テーマやカテゴリーの幅を増やしたりといった取り組みが効果的です。
影響力の速さを強化する取り組み
影響力の速さを強化するねらいは、重要な情報やメッセージを社員に迅速に届けるとともに、その情報やメッセージが社員の心にスピーディーに届けることです。
そのための取り組みとして、特に大きな効果が得られる方法は、WEB社内報を立ち上げることが挙げられます。冊子版とWEB版を併用している場合は、WEB版にある即時性という特性を活かして、冊子版、WEB版に載せる情報の棲み分けや、WEB版のカテゴリーを情報を届ける速さの視点で棲み分けをすることが効果的です。
また、社員の心に届く速さを強化するためには、文字数を極力減らすといったことや、見出しの工夫、写真や図といったビジュアル素材を有効に活用するといった方法が有効です。
影響力の強さを強化する取り組み
影響力の強さを強化するねらいは、社員の社内報に対する愛着度を高め、発信する情報やメッセージが社員の心に深く響かせることができる状況や状態を築くことです。
そのためには、社員の社内報に対する期待やニーズとともに、現在の愛着の度合いを、社員アンケートや閲覧データをもとに、正確に把握し、期待やニーズに応えるツールへと改善・改良したり、期待やニーズをもとに、期待をさらに高めるテーマ設定や、愛着を高めるコンテンツやデザインを取り入れるといった対策を行います。
影響力の正しさを強化する取り組み
影響力の正しさを強化するねらいは、社内報を読んだ社員から、発行目的で示している方向と一致している共感を得たり、意識の変容や行動を生み出すことです。
そのためには、発行目的の実現に必要と考えられる情報やメッセージを、社内から効率的に集めるための仕組みや体制を築いたり、社員が共感したり、意識が望ましい方向に変わるような記事づくりができるようにするための編集のスキルを高めたりするといった取り組みを行います。
まとめ
影響力のある人の言葉や行いが、たくさんの人の意識の変容や新しい行動につながるように、影響力のある社内報は、たくさんの社員の意識や行動をより良い方向へと導きます。
そしてその結果、発行目的の実現はもとより、従業員エンゲージメントの向上や、経営の持続性といったこと対して、欠かすことのできないツールになることが期待できます。
影響力を高めるための方法について、記事のなかで詳しくお伝えするには至らなかったのですが、この考え方に興味をお持ちになったり共感していただき、影響力を高めるための具体的な方法や対策を取り入れたいとのお考えお持ちになりましたら、遠慮なく当社へご相談ください。

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