社内報コラム

はじめてのWeb社内報

はじめてのWeb社内報

情報のタイムリーな発信や検索性の高さ、部署や拠点をまたいだ展開のしやすさといった理由などから、Web化を進める企業が急速に増えてきました。

そこで今回の記事では、はじめてWeb社内報を立ち上げるといった方や、はじめてWeb社内報をリニューアルするといった方、はじめてWeb社内報の担当者として仕事を任された方に、

  • 紙とWebの違い
  • Web社内報をはじめる際の手順
  • よくあるつまずきポイント
  • 読まれるコンテンツの作り方
  • 社内報のツールの選び方
  • 制作会社との連携

など、Web社内報の立ち上げやその後の運用に関するさまざまなポイントについて、はじめての方でも安心して取り組めるように、わかりやすく整理してご紹介します。

Web社内報の立ち上げ方や運用の方法について、ご紹介してまいります。

目次

紙の社内報とWeb社内報の違い

紙の社内報を長年続けてきた企業にとって、「Web社内報」への移行は、媒体としての種類や情報の伝え方だけではなく、業務の内容や進め方までが大きく変わる転換点にもなります。

そこで、まず理解しておくポイントとして、紙の社内報とWeb社内報の主な違いについてお伝えします。

紙との違いを理解する

紙の社内報とWebの社内報では、見た目の違いだけでなく、その機能や役割に本質的な違いが存在します。最大の違いは、紙が「プッシュ型」、Webが「プル型」のメディアであるという点です。

・プッシュ型(紙)

編集部が定期的に発行し、部署や個人へ直接配布するスタイル。手元に届くため「目に触れる」ハードルが低く、紙面に触れてもらいやすい。一方で、編集から印刷・配送までのタイムラグがあり、速報性や更新性に限界があります。

・プル型(Web)

基本的に読者が自ら見に来るスタイル。タイムリーな更新が可能で、行事連動型の発信や速報にも対応できます。スマホやPCからアクセスでき、離れた拠点や在宅勤務者にも同時展開できる反面、「読んでもらうための導線づくり(通知・リマインド)」が必要です。

このように、情報が確実に読者の手元に届く紙の社内報は一方で、読後の反応や関心を定量的に測定することが困難です。

 

その点、Web 社内報は読者の反応や関心、閲覧状況、閲覧行動などを、定量的かつタイムリーに把握することができます。

 

ただ、Webの社内報は読者が自らアクセスして読む「プル型」のメディアであるため、情報の届け方に工夫が求められます。たとえば、記事更新時に社内チャットやメールを使って通知したり、定期的に「おすすめ記事」や「人気記事」をピックアップして紹介するなどの導線設計が必要になります。

 

このほか、Web社内報の有効性としては、

  • 場所や時間といった制約を超える
  • 危機時にも強くてBCPにも有効

といった点があげられます。

制約を超えるWebの利便性

紙の社内報は保存性や読みやすさに優れている反面、印刷・配布に時間とコストがかかります。特に全国に拠点を持つ企業では、配布のタイムラグや紛失リスク、在宅勤務者への対応などが課題となります。一方、Web社内報ならPCやスマートフォンからいつでもどこでもアクセスでき、こうした物理的制約を解消できます。

危機時にも強いWeb社内報

BCP(事業継続計画)の観点からも、Web社内報は有効です。災害時や感染症拡大時など、出社が困難な状況でも、社員への迅速な連絡やメッセージ発信が可能になります。これは、危機管理における大きな利点です。

紙とWebを含む社内報の全体像を捉えるならこちらの記事が参考になります。

社内報づくりの基本【前編】

 

Web社内報の立ち上げステップ

ここからはWeb社内報をはじめて立ち上げる際のポイントについてお伝えします。

はじめに明確化すべき「目的」と「ターゲット」

Web社内報を立ち上げるにあたって、最初に行うべきは「なぜやるのか(目的)」と「誰に向けて発信するのか(ターゲット)」を明確にすることです。

目的の例としては、「経営情報の浸透」「拠点間の一体感醸成」「エンゲージメント向上」「従業員の行動変容促進」などが挙げられます。

目的が曖昧なまま進めてしまうと、関係部門の合意形成が難しくなったり、方向性のブレにつながるため、初期段階で丁寧にすり合わせることが重要です。

編集方針と体制を整える

目的とターゲットが定まったら、それに基づいた編集方針を策定し、社内での制作・運営体制を整えます。

特にWeb社内報では、更新頻度や発信スピードが求められるため、担当者任せにならない「協力体制」が不可欠です。

人事部門・経営企画部門・広報部門など、関係する部署を巻き込んだ体制づくりが求められます。可能であれば、編集会議の定例化も効果的です。

コンテンツ案の設計とスケジュール

次に行うべきは、掲載するコンテンツの設計と発信スケジュールの設定です。

定番のカテゴリとしては「経営メッセージ」「部署紹介」「社員インタビュー」「トピックス」「社内イベント」「福利厚生情報」などがあり、Web社内報ならではの「速報」「ランキング」「双方向コンテンツ」なども検討できます。

季節や行事に応じた特集テーマを企画することで、年間を通じた計画的な発信が可能になります。

トーン&マナーとライティングルールの整備

紙の社内報でも一定の編集基準が存在するように、Web社内報にも記事の書き方や表現ルール、タイトルの付け方、写真やイラストの扱いなどを定めた「編集ルール」を用意するとよいでしょう。

これにより、記事間のトーンが揃い、媒体としての統一感が生まれます。また、複数の担当者が記事を作成する場合の教育・指導にも役立ちます。

社内への周知とローンチ計画

発行に向けて、社内への告知やローンチ(公開)計画も欠かせません。

Web社内報は「読みに来てもらう」メディアであるため、公開直前の告知が非常に重要です。社内チャット・メール・ポスター・朝礼など、あらゆる手段を使って、社内報の開設をアナウンスしましょう。

また、初回号は特に「見てもらう工夫」を凝らすことで、継続的な読者獲得につながります。

 

Web社内報立ち上げの標準的なステップについてはこちらの記事も参考になります。

Web社内報の立ち上げ方

 

年間の編集計画について詳しくはこの記事も役立ちます。

社内報における年間計画の考え方と手順

つまずきポイントとその対策

ここからは、Web社内報の立ち上げや運用を行っていると、必ず訪れる「つまずき」のポイントについてお伝えしていきます。

「書く人がいない・集まらない」という壁

Web社内報の運営において、最も多く聞かれる悩みの一つが「書き手の確保」です。

特に立ち上げ当初は、関係部門に協力を仰いでも「忙しいから」「文章が苦手で」と敬遠されがちです。

この課題への対処法として有効なのが、「型」を提示することと、「聞き書き」の仕組みを取り入れることです。

 

たとえば、

①きっかけ

②工夫

③結果や変化

④次の目標

といったように、テンプレートとなる構成を予め用意しておけば、書き手は話の順序を考えずに済みます。

また、広報担当やライターがインタビュー形式で話を聞き、原稿化するスタイルは、本人の負担も軽減され、内容の質も高められるため非常に効果的です。

「更新が続かない」という課題

最初は張り切ってスタートしても、更新が滞ってしまうという悩みも多くあります。

Web社内報は定期的な更新によって信頼や習慣性が生まれるため、「出せない月」が続くと読者の関心も薄れてしまいます。

この課題に対しては、事前の「編集カレンダー」の作成と「余裕を持った記事ストック」が効果を発揮します。

まず、年間を通じた企画案と更新スケジュールを策定し、それに沿って記事制作を進めます。

さらに、常に2〜3本のストック記事を持っておけば、急な差し替えや執筆遅れがあっても柔軟に対応できます。

こうした仕組みづくりは、メディアを「回す」うえでの土台となります。

「読まれない」という落とし穴

「せっかく書いたのに読まれていない」ことも、社内報担当者にとって大きなストレスの一つです。

読まれない理由には、「存在を知らない」「読みにくい」「興味が持てない」など様々あります。

これらに共通する対策は、「読者目線の徹底」です。

 

たとえば、タイトルの工夫一つで記事の注目度は大きく変わります。

「〇〇が変わった3つの理由」「新人が驚いた××の仕組み」といった問いかけ型や、数値入りのタイトルは、関心を引きやすい傾向にあります。

また、記事内の言葉遣いや内容の構成も、専門用語を避けて読みやすくすること、エピソードや感情の動きなどを盛り込むことが効果的です。

「価値を感じてもらえない」という不安

紙の場合は読者の「手に取る」という行動が、遠くからでも見ることができますが、Web社内報はそういった、読者の反応を直接感じることが難しい媒体です。

そういった点から、業務として「本当に意味があるのか」「手間の割に成果がわからない」といった気持ちになることもあると思います。

これを払拭するには、「成果」を可視化する仕組みを取り入れることが有効です。

たとえば、記事ごとの閲覧数やクリック数などを定期的にレポート化し、関係部門や経営層に共有するだけでも、「反応がある」ことの認識が広がります。

さらに、読者アンケートや社内SNSでのコメント・リアクションを取り入れることで、社員の反応を具体的に把握できます。

こうしたデータをもとにPDCAを回していくことで、社内報の存在価値は徐々に認識されていきます。

このように、Web社内報における「つまずき」は多くの企業で共通していますが、それぞれに有効な対策があります。

次章では、それらのつまずきを乗り越えた先にある「Web社内報の可能性」について掘り下げていきます。

 

見出し・画像・導線設計の工夫についてはこちらで詳しく解説しています。

Web社内報を活性化するポイント30 第一部 「見られるためのポイント10」

 

成功事例から学びたい方はこちらの事例集をご覧ください。

見られる!読まれる!WEB社内報の成功事例21選

 

ファン獲得を目的とした継続的な企画についてはこの記事もおすすめです。

Web版社内報のファン獲得 アイデア7選

Web社内報が生む価値と未来

ここからは、先ほどの「つまづき」を乗り越える方法などについてお伝えしていきます。

「届ける」から「関わり合う」へ

Web社内報の最大の特長は、単に情報を一方向に「届ける」ものではなく、双方向的なコミュニケーションを可能にする点にあります。

紙媒体においては、読者の反応を直接知ることは難しく、フィードバックも限られたものでした。

一方、Web社内報では、閲覧数やクリック率、滞在時間といった行動ログの取得が可能であり、読者の関心や反応を可視化できます。

 

さらに、コメント機能やリアクション機能、社内SNSとの連携などを通じて、読者の声を直接拾うことができるため、「情報を伝えたかどうか」ではなく、「関わり合えたかどうか」を検証しながら改善していくことができます。

これは、社内における情報の流通を「一方通行」から「対話」へと進化させる重要な一歩です。

このように、紙ではできなかった「関わり合う」といった観点で、コンテンツづくりやサイトの運用をしていくと、他の社内媒体にはない、唯一の価値を持ったツールに育てていくことができます。

組織の空気を可視化するメディアへ

Web社内報は、単なるお知らせや活動報告を掲載するだけの場ではありません。

 

社員の言葉や表情、現場のリアルなストーリーを取り上げることで、組織の「空気感」や「温度感」を可視化する役割を担うことができます。

 

例えば、現場の工夫やチャレンジ、仲間とのやりとり、嬉しかったことや悔しかったことなどを記事として発信することで、無機質だった会社の情報に血が通い、読者の共感や関心を生み出します。

 

これは、いわば「組織文化のメディア化」とも言える取り組みです。

 

社内報が持つこの力は、理念の浸透や風土づくり、エンゲージメントの向上にも直結します。

 

社員が「自分たちの会社のことをもっと知りたい」「自分の仕事がどうつながっているのかを知りたい」と思えるようになるための土壌をつくるのが、Web社内報のもう一つの大きな価値なのです。

 

社員の声が企業価値を高める時代へ

近年では、従業員による発信が企業ブランドに影響を与える時代になっています。

 

社外向けSNSにおける社員の投稿が、企業の透明性や信頼性を示す材料となることも珍しくありません。

 

Web社内報は、社員が企業の価値や活動を正しく理解し、語れるようになるための「土台」として機能します。

 

また、Web社内報で取り上げられた記事が社内だけで完結するのではなく、外部向けのオウンドメディアや採用広報、営業資料などと連携し、広報やブランディングにも活用される事例が増えています。

 

社員のリアルな声や行動を記録し、蓄積していくWeb社内報は、未来に向けた「企業アーカイブ」としての価値も併せ持っているのです。

Webも中心に据えるのは「人」

デジタル技術の進化により、社内報も常にアップデートが求められる時代になりました。

 

音声や動画を活用したインタビュー、スマートフォンで気軽に読めるUI設計、AIを活用した記事分析など、手法も多様化しています。

 

しかし、どれだけツールが進化しても、その中心にあるのは「人の思いを届ける」ことに変わりはありません。

 

今後も、Web社内報は企業におけるコミュニケーションの中心的な存在として、その役割を拡大していくことでしょう。

 

情報を届ける手段としてだけでなく、社員一人ひとりが自分の声をもち、他者の声に耳を傾ける場として、企業の未来を支える「共感のメディア」としての可能性が広がっています。

 

Web社内報の情報設計と運用設計

続いて、Web社内報を立ち上げて運用していくステップについてお伝えします。

「どのような関わりを築くか」から考える

Web社内報の企画・運用において、最初に考えるべきことは「何を載せるか」ではなく、「どのような関わりを築くか」という目的の明確化です。

 

Web社内報は、単なる情報の羅列ではなく、組織の状態や課題に応じた戦略的な情報発信や情報を通じたコミュニケーションの場であるべきです。

 

たとえば、組織の一体感を高めたいのであれば、他部門の取り組みや社員の横顔が見える記事が有効ですし、経営戦略の浸透を図りたいのであれば、ビジョンや戦略を具体的に伝えるコンテンツが求められます。

 

情報の発信は目的と連動して設計されるべきであり、漫然とコンテンツを更新することがWeb社内報の価値を損なう原因にもなります。

情報の「棚割り」と「役割分担」

Web社内報の情報設計においては、「情報の棚割り」、つまり情報を分類・整理して配置することが重要です。

 

紙媒体では、ページ構成という物理的な制約の中で情報を設計しますが、Webでは更新頻度や閲覧性を考慮した動的な設計が求められます。

 

たとえば、「トップメッセージ」「現場の声」「働き方改革」「制度の紹介」「人材育成」など、情報のジャンルをあらかじめカテゴライズし、読者が自分の関心に応じてアクセスしやすい構造にすることが大切です。

 

同時に、誰がどの情報を発信するのかといった「役割分担」も明確にしておくことで、情報の鮮度と信頼性を保つことができます。

更新頻度とコンテンツのリズム設計

Web社内報は、定期的に更新されることが前提のメディアです。

しかし、無理のない運用体制が整っていなければ、継続的な発信は難しくなります。

そこで重要になるのが、コンテンツの「リズム設計」です。

 

たとえば、毎週更新する情報と月1回の特集、さらに不定期の速報記事といったように、コンテンツの種類と更新頻度を事前に設計することで、編集側の負荷を分散しつつ、読者にとっても「いつ見に行けば、どんな情報があるか」が分かるようになります。

この「予測できる安心感」が読者の定着につながります。

運用体制とPDCAの構築

情報設計と並行して、運用体制の整備も不可欠です。

 

Web社内報の運用は、企画・取材・執筆・校正・公開・分析・改善という一連のプロセスで構成されており、それぞれの工程において責任を持つ担当者や役割を明確にしておく必要があります。

 

また、発信した情報がどのように読まれ、どのような反応があったかを定期的に確認し、改善に活かす「PDCAサイクル」を組み込むことが、Web社内報の価値を高めるうえで極めて重要です。

 

閲覧数や滞在時間、クリック率などの数値はもちろん、読者の声や現場の変化なども含めた多面的な評価が必要となります。

継続と柔軟性のバランス

完璧な体制を整えようとすると、動き出しが遅くなることがあります。

大切なのは、まず小さく始めて、実際の運用を通じて課題を発見し、柔軟に改善していくことです。

特にWebの世界は変化が早いため、設計も運用も「完成」ではなく「進化」を前提にすることが、持続可能な運営につながります。

Web社内報の情報設計と運用設計は、「設計」と「実践」、「戦略」と「現場」の往復を通じて磨かれていくものです。

そのためにも、チーム内での共通認識や対話を大切にしながら、組織にとって最適な設計と運用を模索し続ける姿勢が求められます。

 

実際のツール比較や選定の視点についてはこちらの記事をご参照ください。

Web社内報の制作・運用をサポートするWeb社内報ツール17選

 

そもそも社内報の目的って何?と迷ったときはこの記事をどうぞ。

【はじめての社内報制作】 第1回 社内報の発行目的と編集方針


Web社内報の制作実務

ここからはWeb社内報づくりの業務についてお伝えしていきます。

制作フローの全体像を把握する

Web社内報の制作は、「企画立案」から始まり、「取材・執筆」「編集・校正」「公開・告知」「評価・改善」といった一連のプロセスから成り立ちます。

紙媒体に比べて更新頻度が高い分、制作のサイクルも短くなるため、効率的で再現性のあるフローを構築しておくことが重要です。

まずは月ごとや四半期ごとのテーマや特集を決め、それに基づいて記事のラインナップを組み立てます。

あわせて、担当者や取材先、掲載予定日などを一覧化して共有することで、スムーズな進行管理が可能となります。

企画とネタ出しの工夫

日常的に情報が更新されるWeb社内報では、ネタ切れを防ぐ工夫が欠かせません。

そのためには、「テーマカレンダー」や「年間企画表」を活用し、季節や会社行事、社会的な話題を軸にあらかじめネタの種を用意しておくとよいでしょう。

また、読者である社員自身がネタの発信源となるような仕組みを取り入れることも大切です。

 

たとえば「投稿コーナー」「現場リポート」「社員アンケート結果の紹介」などを取り入れることで、社内の情報が自然と集まりやすくなります。

これにより、一方通行の発信ではなく、双方向のメディアとしての機能も高められます。

 

誰が書くか、どう書くか

Web社内報の原稿は、必ずしもすべてを広報部門が執筆する必要はありません。

記事の種類に応じて、たとえばトップメッセージは経営層に草稿を依頼し、現場の紹介は当該部署に下書きを作成してもらうなど、分担することができます。

ただし、複数の執筆者が関わる場合でも、文体・表現・語り口など、社内報としてのトーン&マナーを揃えることが大切です。

編集担当者がリライトや整文を行い、全体としての統一感を担保する役割を果たす必要があります。

校正とレビューのポイント

原稿が完成したら、誤字脱字や事実誤認、表現上の問題がないかを確認する校正工程を経ます。

特に人名や部署名、データなどの固有情報については、必ずダブルチェックを行いましょう。

また、掲載前には関係者によるレビューを行い、誤解を生まないか、社内のルールや機密に反していないかなどを確認します。

 

Webは更新後も修正可能という利点がありますが、初回公開時に高い完成度を目指す姿勢は不可欠です。

公開と社内告知の工夫

Web社内報は、ただ公開するだけでは読まれません。

社内イントラ上のバナー設置やチャットツールでの案内、メールマガジンでの告知など、多様なチャネルを用いて周知を図ることが重要です。

特に読者が「どんな情報が更新されたのか」を一目で理解できるように、タイトルやサマリーを工夫したり、興味を引くアイキャッチ画像を設定したりすることで、クリック率を向上させることができます。

 

制作チームの役割分担

Web社内報の制作には、企画編集、ライティング、校正、Web管理、アクセス分析、社内調整など、さまざまな業務が関わります。

すべてを一人で担うのは困難であるため、チームとして役割を明確にし、担当者間での連携体制を構築することが不可欠です。

とくに「編集長」のような全体の方向性をコントロールする存在と、「進行管理者」や「ライター」など実務を担う役割を明確に分けることで、責任の所在が明らかになり、トラブルや行き違いを未然に防ぐことができます。

 

社内報制作に必要なスキルについてはこちらの記事で整理されています。

読まれる社内報を作るために身につけておきたいスキル

 

効果検証と改善のポイント

 

続いて、Web社内報の強みを活かす効果検証と改善についてお伝えしてまいります。

 

届けたあとの反応をしっかり計測し続ける

Web社内報の価値は、制作して公開しただけでは測れません。

重要なのは、読まれたか、理解されたか、共感が得られたか、行動や意識に変化を与えたかといった「届けたあとの反応」です。

 

Web社内報の特性を活かすなら、アクセスログや閲覧数、クリック率、記事ごとの滞在時間など、数値として可視化できるデータを積極的に活用すべきです。

こうした定量データは、読者の関心の高低や興味関心の分布を把握するのに有効です。

特に、一定期間内にどれくらいの社員がどの記事を見たのか、読了率はどの程度かといった情報は、次回以降の編集企画の判断材料となります。

 

定量と定性の両面から効果を見る

一方で、数値だけではわからない効果もあります。

たとえば、「この記事を読んで勇気が出た」「現場の雰囲気が伝わって嬉しかった」「自部署でも真似したいと思った」といった声は、数値では表せません。

こうした社員の「実感」は、社内報がエンゲージメント向上に寄与しているかどうかを測るうえで極めて重要な手がかりとなります。

社内アンケートやコメント欄、フィードバック会などを通じて、データだけでは読み取れない読者の「生の声」を拾う仕組みを用意しておくことが望ましいでしょう。

加えて、イントラネットの掲示板や業務チャットでの反応、記事を話題にした雑談など、現場での反響に注意を払うことも欠かせません。

 

「改善前提」のサイクルを仕組み化する

Web社内報は更新のサイクルが短いため、運用しながら少しずつ改善を重ねていくことが可能です。1回1回を完璧に仕上げようとするよりも、「次回改善できるよう振り返る」意識の方が重要です。

 

たとえば、公開後には必ずチーム内で簡易なレビューを行い、「良かった点」「課題に感じた点」「次回への改善点」などを共有することで、ナレッジが蓄積されていきます。

 

読者の声と制作者の気づきをつなげていくPDCAの仕組みをもつことで、社内報は継続的に進化していきます。

 

組織を動かす「装置」にする

Web社内報の改善は、単なる内容の良し悪しや制作スキルの向上だけでなく、社内報の存在価値や広報部門の貢献度を伝えることにもつながります。

 

とくに、経営層や他部門に対して「このような反応が得られた」「エンゲージメント向上に寄与している」といった成果を可視化して伝えることは、社内広報全体の評価にも影響を与えるでしょう。

 

このように、検証→改善→発信という流れを制作フローに組み込むことで、Web社内報は「読み物」から、組織を動かす「装置」へと進化していきます。

Web社内報を支える体制づくり

 

ここからはWeb社内報の運用体制についてお伝えします。

社内報づくりに欠かせない仮想チームの視点

社内報の意義は単なる情報発信にとどまらず、社員の関心や行動に影響を与える活動です。

そのため、担当者の個人スキルだけに依存せず、組織的な体制で取り組むことが求められます。

 

広報担当者だけが担うのではなく、現場との連携や上層部の理解、協力体制があってこそ、有効な社内報運営が可能になります。

特にWeb社内報は更新頻度が高く、制作にかかる作業量も多いため、役割分担やチーム内での連携が円滑でなければ継続的な運用は困難です。

 

社内報のチームがたとえ少人数体制だったとしても、情報収集から編集、発信、効果検証までをそのメンバーだけで抱えることなく、Web社内報に愛着を持ってくれている方などを含めた仮想的なチームとして運営、運用していくことを意識することが重要です。

 

社内の「目」と「手」を活かす体制設計

理想的なのは、現場の協力者を巻き込んだネットワーク型の運営体制です。

たとえば、各部門に編集委員や広報委員、通信員など、オフィシャルな体制を築いたり、あるいは、「アンバサダー」といった、Web社内報に愛着を持ってくれている方との関係を築くことで、現場の小さな取り組みや社員のリアルな声を拾いやすくなります。

 

また、Web社内報はリアルタイムで更新が可能であることから、現場との情報連携が迅速かつ柔軟であることが大きな強みとなります。

そのためにも、現場と広報が双方向にやりとりできる信頼関係や、気軽に情報提供を依頼できる関係性づくりが鍵となります。

 

上層部の巻き込みが成功の鍵

Web社内報を社内に根づかせるためには、経営層の理解と関与も欠かせません。

社内報に経営者メッセージを掲載することは、単に方針を伝えるだけでなく、社員との距離を縮めるうえでも大きな効果があります。

ときには、現場の声に対して経営者がコメントを寄せるなど、双方向性を演出することで、社員の関心やモチベーションを高めることも可能です。

 

また、Web社内報を戦略的に活用するには、広報の業務として「発信して終わり」ではなく、組織開発やエンゲージメント強化の施策としての位置づけを上層部と共有しておくことが重要です。

Web社内報が単なる情報ツールではなく、経営に資する組織コミュニケーションの一環であることを丁寧に伝えていく必要があります。

外部の知見やリソースを活かす選択肢も

組織内でリソースが限られている場合や、編集スキル、デザイン、企画力を補完したい場合には、外部パートナーの活用も視野に入れると良いでしょう。

特にWeb社内報の立ち上げ段階や、特集企画などでより質の高いコンテンツが求められる場面では、外部の専門的な視点を取り入れることで、社内報の質を一段階引き上げることができます。

 

ただし、外部に依頼する際には、発注者として丸投げするといった、受け身の姿勢になることなく、常に「共創」するといった姿勢で関わり合うことが大切です。

社内の目的や意図をしっかりと伝え、社内報を「一緒につくるパートナー」として協働することで、自社らしさのある社内報が実現できます。

 

Web社内報の「これから」

ここからは、働く環境が大きく変化を遂げる過渡期にある今、Web社内報がどのような機能や役割を担っていくのかといった点についてお伝えします。

変化する働き方とともに進化するWeb社内報

社員の働き方の多様化が進むなかで、Web社内報は「関わり合う」ツール、「つながり」をつくる場所としての役割をますます強めています。

 

物理的に顔を合わせる機会が減ったことで、組織の一体感や文化の共有が困難になる一方、Web社内報は場所や時間に縛られずに情報を届けられるという特性を生かし、離れていても同じ組織に属している実感を醸成するための重要な手段となり得ます。

今後は、働き方の変化に伴い、よりパーソナライズされた情報配信や、個々の関心に寄り添ったコンテンツが求められるようになるでしょう。

これまで以上に「読者視点」に立ったWeb社内報の企画や運営が必要とされます。

読まれる社内報から使われる社内報へ

これまでの社内報は主に「読むもの」としての位置づけでしたが、今後はこれまで以上に「使えるもの」としての価値が高まっていくと考えられます。

そのため、社内ナレッジの共有や、実務に役立つ情報の相互共有、新しいスキルや考え方に関する情報など、業務と接点のあるコンテンツを織り交ぜることで、社員にとっての実用性が向上し、「使いたくなるツール」といったツールとしての期待に応えていく必要があります。

 

さらに、AIやチャットボット、レコメンド機能の活用により、必要な選りすぐりの情報が編集され、すぐに見つけ出すことができる、社内情報の「インターフェース」としての役割も期待されます。

そして、社内ポータルと連動させることで、Web社内報は単なる読み物ではなく、情報アクセスのハブとして機能していく可能性があります。

「共感」と「共創」を生み出すメディアへ

Web社内報が本当に価値を持つのは、社員が一方的に読むだけでなく、主体的に参加し、共感し、共創できる場となったときです。

コメント機能や投稿企画、動画や音声などの多様な表現を取り入れることで、社内報は「つながり」を感じられるコミュニケーションメディアへと進化していくことができます。

そのためには、社内報の運営者が単なる「情報の発信者」ではなく、「共感を生む編集者」としての視点を持ち、社員一人ひとりの声や思いを丁寧に拾い、形にしていく姿勢が求められます。

Web社内報は、企業文化を可視化し、言葉と感情で組織をつなぐ“メディアとしての存在価値”をさらに高めていくでしょう。

 

読者との関係づくりに役立つ情報はこちら。

Web版社内報 「いいね!」「コメント」の活性化アイデア9選

 

読者への届け方や認知向上の工夫についてはこちらをご覧ください。

見られるためのWeb社内報マーケティング(前編)

Web社内報に必要なWeb用語集

いかがでしたでしょうか?

最後に、Web社内報をスムーズに運営するための基本的なWebの用語と、その意味や仕組みなどをご紹介します。

Webの基本用語

以下は、Web社内報の担当者が最低限知っておきたい用語です。

・CMS(コンテンツマネジメントシステム)         

HTMLなどの知識がなくてもWebサイトを更新できるシステム

社内報を自分たちで更新する場合に利用される

・URL

Webページのアドレス(例:https://〇〇〇〇〇〇.com)

記事やお知らせのリンク共有に必要

・サーバー

Webサイトのデータを保管・配信するコンピュータ

社内報の情報の蓄積や表示される仕組みとなる土台

・ブラウザ

Webページを閲覧するためのアプリケーション(Chrome、Edgeなど)

閲覧環境を確認する際に重要

・アクセス解析ツール

Google Analytics など、閲覧数やページ滞在時間を分析するツール

・イントラネット

社内ネットワーク内でのみアクセスできる閉じたWebサイト

よく出てくる関連技術や用語

続いては、やや専門的ですが、会話に登場する可能性の高い用語です。

意味だけでも把握しておくと、Web制作会社やシステム部門とのやりとりがスムーズになります。

・レスポンシブ対応

PC・スマホ・タブレットで画面サイズに応じて表示を最適化すること

社員の閲覧環境が多様な場合に必要

・セッション

Webサイトに訪問してから離れるまでの閲覧者の一連の行動

アクセス数の集計や評価の基準に使われる

・UI/UX

UI=見た目や操作性

UX=使いやすさ・体験全体

読みやすくしたり迷ったりしないようにするための仕組み

・HTML/CSS

Webページの構造(HTML)やデザイン(CSS)を定義する言語

・JavaScript

Webページに動き(ボタンを押すと画面が変わるなど)をつける仕組み

・SSL(HTTPS)

通信を暗号化する仕組みで、URLが「https://」で始まる

・Cookie/キャッシュ

利用者の閲覧情報を一時的に保存する仕組み

社内報に関するご相談、問い合わせはこちらから

関連記事