社内報コラム

社内報制作会社の賢い選び方

社内報制作会社の賢い選び方

近年、社内報は内容や見せ方、ツールの連動といったことだけではなく、社内報の役割から大きく見直す動きや、社内だけではなく社外とのコミュニケーションに活かすといった進化を遂げています。

こうした中で、「社内報の制作を外注したい」「今の制作会社を変えた方がいいのかもしれない」と考える担当者も増えています。

しかし、いざ調べてみると、社内報の制作会社は編集やデザインを専門にしているところもあれば、Webのシステム構築に強い会社、企画や運用面まで包括的にサポートする会社など、種類も得意分野もさまざまです。

また、費用や実績など目に見える部分だけでは、どこが自社に合っているのか判断しづらいのも現実です。

「失敗しない制作会社選び」とはどういうことなのか。

何を基準に、どんな視点で、どうやって選べば良いのか。

 

この記事では、これから社内報の制作会社を探す方や、いまのパートナーを見直そうと考えている方に向けて、社内報の制作会社の適切な選び方についてお伝えしてまいります。

社内報の制作会社を変える主なタイミング

社内報の制作会社を変えるきっかけは、会社によってさまざまです。

よくあるのは、次のようなケースです。

・会社の規模や体制が変わり、これまでの運用が合わなくなった

・制作を担当する部署が変わり、進め方を見直す必要が出てきた

・内容やデザインがマンネリ化してきた

・発行サイクルや校正フローなど、制作進行上の課題が解消されない

・現在の制作会社では、企画や編集体制に限界を感じるようになった

一見すると、これらは主に「困りごと」から生じるタイミングに見えます。

しかし、制作会社を変える最も適切なタイミングは、必ずしも「困りごと」だけではありません。

むしろ、社内報を「もっと良くしたい」、「次のステージに進みたい」と感じたときこそ、社内報の制作会社を変える最適なタイミング。

つまり、制作会社を変える理由は「問題の解消」だけではなく、「可能性の拡張」でもあるということです。

 

特に近年では、紙媒体からWeb社内報へのシフトや、社内報の閲覧データを活用した効果検証型の運用など、ITや分析の視点を取り入れた発行体制へ移行する企業も増えています。

そうしたとき、既存の制作会社がその新しい方向性に対応できない場合や、対応できてもスピード感や視点が合わない場合には、思い切ってパートナーを変えることが、次の成長を生み出す転換点になります。

では、どんな視点で社内報の制作会社を選べばよいのか。

次にそのポイントを見ていきましょう。

最も大切なのは「誰と作るか」 

ここからは、社内報の制作会社を選ぶときに意識しておきたいポイントをお伝えします。

多くの方が最初に気にするのは「価格」や「実績」でしょう。

もちろん、それらは大事な判断材料です。

 

ですが、金額や実績だけで判断すると、あとで思わぬギャップを感じることがあります。

たとえば、見積もりが安くても修正対応が限定されていたり、逆に高額でも自社の文化や目的に合わない提案をされてしまったりするケースです。

また、「有名企業の社内報を担当している」という実績があっても、それが自社に合ったノウハウや対応力であるとは限りません。

 

では、最も重要な判断軸は何か。

それは、「パートナーとして誰と仕事をするか」という視点です。

つまり、社内報の制作会社選びとは「人を選ぶこと」。

 

実はこれは、制作の現場でいう「ディレクション(direction)」の考え方に通じます。

ここで少し、ディレクションとは何かについてお伝えします。

ディレクションとは、単なる進行管理ではなく、目指すゴールに向けて課題を整理し、最適な方法で解決に導くプロセス全体を指します。

その中でも最も重要な要素が「人選び」、つまりキャスティングです。

キャスティングとは何かについて、映画やドラマをイメージするとわかりやすいでしょう。

 

映画やドラマで監督(ディレクター)はまず、作品の世界観や表現を実現するために「誰に演じてもらうのが最もふさわしいか」を考えて俳優を選びます。

キャスティングを誤らなければ、作品は成功に近づき、逆に間違えれば、どれだけ脚本や演出が良くても期待した成果は得られません。

経営学者ピーター・ドラッカーもまた、著書の中で「組織の成果の八割は、人の配置(キャスティング)で決まる」と述べています。

社内報もこれと同じです。

 

「何を作るか」「どう見せるか」の前に、「誰と作るか」という選択が、その後の成否を大きく左右します。

 

それほど、誰とチームを組むかという点は重要です。

つまり、社内報の制作会社を選ぶという行為は、最も重要なディレクションの一部そのものなのです。

制作会社を比較するときは、「どんなデザインが得意か」「どんな実績があるか」だけでなく、「どんな人たちが、どんな姿勢で仕事に向き合っているか」を見ることが大切なのです。

特に社内報は一度作って終わりではなく、発行を重ねながら育てていく継続型のメディア。

 

「私たちと社内報の成長を一緒に考え、支えてくれる人たちは誰なのか」。

この視点こそが、社内報の制作会社を選ぶ上で、最も重要な視点なのです。

では実際に、その「誰と作るか」をどうやって見極めれば良いのでしょうか。

実際に担当する人と直接会って見極める

ここまでは、社内報の制作会社を選ぶ際に、「どんな会社か」ではなく、「誰と仕事をするか」、つまりキャスティングが最も重要だということをお伝えしてまいりました。

ここからは、どうやって最適な人を選べば良いのかについて見ていきましょう。

 

まず、制作会社の提案書や過去の事例だけでは、相手の本質は見えてきません。

重要なのは、実際に担当する人と直接会い、この人が本当に最適なパートナーになり得るのかを見極めることです。

では、どうやって見極めればよいのでしょうか。

先述のピーター・ドラッカーは『現代の経営』や『マネジメント』などの著書の中で、「人を選ぶことはマネジメントの最も重要な仕事の一つ」であり、「人の強みを見極め、それを生かすことが成果を決める」と述べています。

 

特に『マネジメント』では、次のように語られています。

「人を選ぶときに見るべきは、過去の実績や肩書きではなく、その人の強みと、それを発揮できる環境にあるかどうかである」。

この考え方は、社内報の制作会社選びにおける「キャスティング」にも通じます。

提案書や実績だけでは、その会社や担当者の本質的な力や姿勢は見えてきません。

つまり、制作会社といった枠組みではなく、実際に担当する「人」と実際に会って話し、その人の姿勢や考え方、向き合い方を感じ取ることが大切です。

■キャスティングで見るべき3つのポイント

  • しっかりと聞く姿勢があるか

話をよく聞き、こちらの課題を理解しようとする姿勢があるかどうか。

自分の意見を押し付けず、共に考えようとする人かどうか。

  • 課題を共にする意識があるか

制作を単なる「受託業務」と捉えず、「御社の問題」ではなく「私たちの課題」として語る、課題を自分ごととして捉え、解決策を共に探る姿勢があるか。

  • 成長を一緒に描ける人かどうか

社内報は一度作って終わりではなく、継続的に育てていくもの。短期的な成果だけでなく、次の発行、次の成長まで視野に入れた話ができる人かどうか。

つまり、「どんな会社か」よりも、実際に担当する人と対話し、「どんな姿勢で仕事に向き合っている人か」を見ることが何よりも大切なのです。

実際に信頼できる人を見極めたうえで、次に確認したいのが、その人が所属する制作会社の「タイプ」や「強み」です。

どんな会社に所属しているかによって、サポートできる範囲や得意分野が大きく変わります。

社内報の制作会社のタイプと強み

ここまでは、社内報の制作会社を選ぶときの、最も重要なポイントについてお伝えしてまいりました。

ここからは、社内報の制作会社のタイプについてお伝えします。

社内報の制作会社といっても、実は得意分野やスタンスは会社によって大きく異なります。

「どこに頼んでも同じようなものができる」と思われがちですが、実際には制作会社のタイプによって、得意とする領域や提供できる価値が大きく変わります。

ここでは代表的なタイプや強みを整理し、それぞれの特徴と、どんな企業に向いているかを見ていきましょう。

タイプ1:編集・デザイン特化型

社内報の編集やデザインに強みを持ち、誌面やページ単位のクオリティを追求するタイプです。

特集構成やコピー、ビジュアル表現に優れており、「読み応え」「見栄え」を重視する企業に向いています。

ただし、発行目的の整理や全体戦略といった上流工程までは対応していないケースも多く、「どう作るか」には強い一方で、「なぜ作るか」「何を伝えるべきか」の設計を社内で担う必要があります。

 

〔こんな企業に最適〕

・社内報の方向性がすでに明確で、デザインや表現を磨きたい

・毎号の完成度を高め、見た目や雰囲気を一新したい

タイプ2:企画・運用支援型

社内報の企画立案から運用改善、アンケート分析などを含めて支援するタイプです。

単なる制作業務だけでなく、「どう読まれるか」「どう浸透させるか」までを視野に入れた提案を行います。

こうした会社は、広報戦略や従業員エンゲージメントの観点を踏まえて、社内報が経営をサポートするコミュニケーション施策の一環として捉えているのが特徴です。

 

〔こんな企業に最適〕

・社内報をより効果的に活用し、発行の目的を明確にしたい

・経営層や他部門との連携を強化したい

・データや調査をもとに改善を進めたい

タイプ3:Web・システム開発型

Web社内報の構築や、閲覧データの分析環境の整備など、デジタル領域に強いタイプです。

UI/UX設計やセキュリティ、CMS開発など、技術的なノウハウを活かしてシステム面から社内報を支えます。

ただし、社内報としての編集・企画の知見が少ない場合もあるため、発信内容やトーン&マナーの部分は社内側で設計する必要があります。

 

〔こんな企業に最適〕

・紙からWeb社内報への移行を検討している

・アクセス解析やデータをもとに運用改善を行いたい

・社内ポータルやイントラネットとの連携を図りたい

タイプ4:トータルディレクション型

編集、デザイン、運用、分析、Web構築までを一貫して手がけ、全体最適を図るタイプです。

企業の課題や目的を踏まえ、媒体の設計から制作、発行後の分析・改善までを一気通貫で支援します。

特に、制作会社を「パートナー」として長期的に伴走したい場合や、社内報を企業文化づくりの中心に据えたい場合には、このタイプが最も適しています。

 

〔こんな企業に最適〕

・社内報を軸に社内コミュニケーションを再設計したい

・現状の発行体制の見直しや活性化を図りたい

・長期的な伴走パートナーを求めている

ここまで、社内報の制作会社のタイプを4つに分けてお伝えしてまいりましたが、制作会社のタイプに「優劣」はありません。

大切なのは、自社の課題や目的に合ったタイプを選ぶことです。

たとえば、「デザインを刷新したい」が目的なら編集・デザイン特化型で十分です。

一方で、「社内報を通じてエンゲージメントを高めたい」といった経営的テーマを扱うなら、企画・運用支援型やトータルディレクション型の方が適しています。

つまり、「どんな成果を求めているのか」を明確にすることが、最適なパートナー選びの第一歩なのです。

 

では、自社に最も合う制作会社とは、どうすれば出会えるのでしょうか。

ここからは、社内報の制作会社選びにおいて欠かせない「コンペ」の上手な進め方についてお伝えします。

コンペは答え合わせの場

社内報の制作会社を選ぶ際、「コンペ(企画提案)」を行う企業は少なくありません。

複数の会社から提案を受け、比較検討することで、自社に合った制作会社を選びやすくなるという点では、非常に有効な方法です。

ただし、コンペを「プレゼンで競わせる」場だと捉えるのは本質的ではありません。

本来のコンペは、相談やコンペの依頼を通して行ったコミュニケーションで得た実感の「答え合わせ」の場であり、「誰が最も良く理解してくれているか」を確認する機会なのです。

また、コンペで制作会社を決定する際、プレゼン内容だけで判断してしまうと、その後のコミュニケーションや制作で、提案からは見えてこなかった問題に直面することが少なくありません。

そういった問題を最小限に抑え、期待することがしっかり組み込まれている提案を受けるためには、コンペまでに複数回の打ち合わせややり取りを経て、相手の考え方や姿勢をある程度理解した上で臨むことが大切です。

そのような理解をもとに、提案内容を通じて「自社の考え方をどれだけ正確に理解し、形にしてくれているか」「こちらの意図をどう咀嚼して表現してくれるか」を確かめる。

それが、社内報の制作会社を選ぶ上でのコンペの本来のあり方なのです。

プレゼンテーションで見るポイント

コンペで注目すべきは、企画書の完成度や見た目の新しさではありません。

それよりも大切なのは、次の3つの観点です。

  • 依頼内容の目的や課題をどれだけ的確に理解しているか

事前に共有した情報や背景を、どのように反映しているかを見る。

  • その理解をどう構造化して企画やデザインに反映しているか

企画の内容やデザインの見せ方だけでなく、「なぜそう考えたのか」という背景やプロセスを確認する。

  • 一緒に働く姿勢や価値観が合うか

会話のトーン、質問の仕方、仕事への熱量など、資料ではなく「人」から伝わるものを感じ取る。

この3点を意識して見ることで、「提案の良し悪し」だけではなく「相性の良し悪し」まで判断できます。

コンペを成功に導くための準備

次に、コンペを「答え合わせ」の場として機能させるための、事前の準備についてお伝えします。

事前に目的と課題を共有しておく

社内報の目的(例:エンゲージメント強化、風土醸成など)と、現状の課題を整理し、参加各社に同じ情報を伝える。

事前面談やヒアリングの場を設ける

提案前にディレクターや編集担当と話す機会を持ち、相手の理解力や姿勢を確認する。

パートナーとしての資質を見る評価軸を持つ

「企画内容」「デザイン」「価格」「サポート体制」「実績」だけではなく、「理解度」「姿勢」「熱量」など、評価のポイントに含めて、パートナーとして本当に最適かどうかを見極めるためのポイントも加えた判断軸を用意しておく。

最適なパートナーに出会うために

コンペは「選ぶ場」であると同時に、企業と制作会社の双方にとっての「出会い」の場でもあります。

自社の社内報への思いや方向性を誠実に伝えることで、相手も本気で応えてくれます。

つまり、良いコンペはお互いを理解し合うプロセスの延長線上にあるということ。

価格競争ではなく、理念と姿勢のマッチングこそが、最適なパートナーと出会う鍵なのです。

「この会社は、私たちの思いをどう理解し、どう形にしてくれるのか」。

その一点を確かめる場としてコンペを設計すれば、自然と最適な制作会社に出会えるはずです。

制作会社を変えるかどうかを迷っている方へ

社内報を取り巻く環境は、会社の方針、働き方、社員の価値観など、さまざまな要因によって日々変化しています。

社内報の制作会社を変えるかどうかは、単に「今の会社に満足しているか」「不満があるか」で決めるものではありません。

大切なのは、自社の現状と今後の方向性を踏まえて、これからの社内報に何が必要かを整理し、それを自社の運用体制の中で実現できるのか、それとも制作会社の力を借りて実践していくのかを見極めることです。

 

そこで、社内報の運用を見直す際に整理しておきたい9つの観点を挙げました。

これらを「今の自社にどれだけ必要か」という視点で振り返ることで、これからの社内報をどのように進化させていくべきかが見えてきます。

 

社内報運用チェックリスト

・会社の方針や動きをもとに社内報の内容や構成を見直していく必要がある
・社員間のつながりや働き方の変化を踏まえて社内報の役割を再定義する必要がある
・社員の意識や価値観の多様化に合わせて伝え方を多面化する必要がある
・紙・Web・動画など、複数の媒体を組み合わせた発信が求められている
・KPIを設定してPDCAサイクルを適切に回していく体制を整える必要がある
・社員に会社の目指す姿をよりタイムリーかつ柔軟に伝えることが必要になってきた
・社内報の制作や運用で新たなノウハウやスキルが求められるようになってきた
・他社事例や業界トレンドを把握して自社の社内報の運用や内容に活かしていきたい
・社内報を軸に自社の広報機能や発信力そのものをもっと強化していきたい

これらの項目のうち、多くに「必要だ」と感じながらも、社内のリソースやスキルだけでは実現が難しく、今の制作会社でも十分に対応できないと感じる場合は、新たなパートナーを検討するタイミングかもしれません。

一方で、「必要だ」と感じた項目を今の制作会社と一緒に取り組めそうだと思う場合は、

これらを「今後に向けた社内報の課題」として共有することで、より強く、実りあるパートナーシップへと発展させることができます。

制作会社を変えるか否かは、社内報を次のステージへ進めるための取り組みです。

まずは、これからの社内報に何が必要かを整理し、その実現を誰とどのように進めるのが最善かを考えることから始めてはいかがでしょうか?

最後に

社内報の制作会社を選ぶことは、単に発注先を決めることではなく、これからの社内報をどのように育てていくかを考えることでもあります。

これまで見てきたように、制作会社を選ぶ際に重要なのは、「何を作るか」や「どんな見せ方をするか」だけでなく、課題を共に整理し、最適な形で解決へ導いてくれるパートナーを選ぶことです。

その意味で、制作会社選びはディレクションの起点であり、今後の社内報の成果を左右する最初の分岐点とも言えます。

社内報は、情報を届けることが目的ではなく、その情報が社員の理解や共感を生み、行動につながっていくことに価値があります。

つまり、「伝わる」だけで終わらせず、社員同士や会社との「つながり」を育んでいくことが、社内報の本質です。

 

りえぞん企画は、そうした「つながり」を生む社内報づくりを大切にしています。

それは、特別な手法ではなく、一つひとつの情報がきちんと届き、理解され、共感へと変わっていくプロセスを丁寧に積み重ねることだと考えています。

制作会社を選ぶ際は、「伝わる」だけでなく「つながる」社内報をともにつくっていける関係かどうか。

その視点を持つことが、これからのパートナー選びの確かな基準になるはずです。

この記事が、皆さまの社内報を見直し、より良いパートナーと共に新たな一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。

 

【おすすめ記事】
Web社内報を強化するための制作会社の選び方

社内報に関するご相談、問い合わせはこちらから

関連記事