【社内報のネタ】トップメッセージ~思いや意向を伝える5つの方法~
経営トップの思いや意向を伝える方法について、意図の違いやデザインのポイントをご紹介します。
トップと社員のコミュニケーションの重要度は高まり続けている
社内報の重要な役割の一つとして、経営トップと全社員とのコミュニケーションがあります。
その目的は、経営方針や事業環境の認識、顧客や社会との関係構築に関する意向など、経営トップの考えを全社員にあまねく伝えるとともに、それらのメッセージが伝わる関係性を築き続けることです。また、全社員が仕事の目的を共にし、一体感や結束力を醸成することも含まれます。
多くの目的に対して、各社さまざまな方法を用いて、継続的かつ高頻度で社内報にトップのコメントを掲載しています。
その方法は主に以下の5つに集約されます。
1 トップメッセージ
2 トップエッセイ・ブログ
3 トップの経歴
4 トップ対談
5 トップ座談会
1「トップメッセージ」定点観測と社員の拠り所
トップメッセージの主な目的は、経営方針の理解や浸透、経営方針に基づく実践の促進です。ただ、社内報は定期的な情報発信ツールですので、年に1度発行する統合報告書やアニュアルレポートとは異なり、経営状況の認識や見通しの期間は短くして定点観測的に社員に共有して理解を図ります。
掲載の内容と展開
・経営方針
・事業環境の実態と見通し
・経営方針の進捗や状況
・課題認識と解決に向けた考え
・社員への要請と期待
近年、特に重要なのは「事業環境の実態と見通し」と「社員への要請と期待」です。
社会の変化のスピードが加速し、不確実性や不透明感が増している現在、事業環境に対する共通認識は日ごとにズレが生じるばかりでなく、そのズレの規模は以前よりもさらに大きくなっていると考えられます。
そうした中で社員は常に「拠り所」を求めており、社内報は短期間でその拠り所を全社共通の指針として示し続けられる唯一のツールなのです。
社内報は、社員だけにフォーカスして具体的に伝えられるツールですので、抽象的な表現や「考えるきっかけ」などあいまいなレベルではなく、「何を考えて」「どう行動すべき」かを、トップの言葉で適切、的確に伝えることが求められます。
<トップメッセージのポイント>
・経営状況や見通しの期間は短めに。
・不確実性が高まる現在、社員の拠り所として「何を考えて」「どう行動すべきか」はっきり伝える。
2「エッセイ」「ブログ」ライフスタイルを通じた学びと気づきがポイント
エッセイやブログの目的は、トップの人となりを通じてトップの考え方やその背景を共有することと、トップと社員の心の距離感を縮めてトップがより身近に感じられる状態を築くことです。ポイントは、トップのライフスタイルが感じられる情報と、それを基にしたトップの学びや気づきを伝えることです。
「エッセイ」「ブログ」の伝え方
・体験談
・ブックレビュー
・日々感じること
体験談
現在だけではなく、今につながる過去の体験も含めて、その体験から得た学びや気づきを語っていただきます。ポイントは得た学びや気づきについて、なぜそれらを得るに至ったのか、それらが何に活かされているのかを語っていただくことです。
また、仕事やプライベートでの体験を織り交ぜることで、社員にとってはトップの日常やライフスタイルを知ることができ、心の距離感を縮めるきっかけになります。
ブックレビュー
本からの学びや気づきを伝えていただくことはもちろんですが、その他に、いつ、どのような理由でその本を手にしたのかを語っていただくことも大切です。
さらに、より象徴的に語るために、強い影響を受けた一行を紹介していただくと、記事としても興味深い内容にすることができます。
日々感じること
先の二つに比べて、トップの思いが強く打ち出されることが特徴です。日々感じることについて、説明的な文章ではなく、エッセイやブログらしい、徒然なる情緒性にあふれた語り口が望ましいです。
<エッセイやブログのポイント>
・「体験談」「ブックレビュー」「日々感じること」で伝える。
・トップのライフスタイルが感じられる情報を盛り込む。
・トップの学びや気づきを伝える。
3「経歴」紆余曲折を時代背景や当時の価値観で演出
トップが交代した際に、経歴を紹介する特集を組む企業は多いと思います。掲載にあたっては日本経済新聞の「私の履歴書」をイメージしていただくと良いのではないでしょうか。
エッセイと同様に、トップと社員の心の距離感を縮めることが目的ですが、違いはエッセイがトップの言葉でその目的を果たすことに対して、経歴はトップの生い立ちや成り立ちの物語を通じてその目的を果たすことにあります。
伝え方にバリエーションは必要なく、あらかじめ経歴をもとにトップにヒアリングして、トップの「らしさ」やマインド、スタンス、アイデンティティを形成するに至った象徴的なできごとをもとに章立てし、記事を書きます。
プロットは起承転結で構成し、「起」は記事の中心テーマとなる象徴的なできごとを、「承」で時代背景や当時の人たちの価値観、「転」ではできごとそのものと、問題や紆余曲折、「結」では結果と、今との関係を語ってまとめます。
<経歴のポイント>
・イメージは「私の履歴書」
・今のトップに至る物語で社員との距離を縮める
・構成は奇をてらわず「起承転結」が基本
4「対談」トップ自身の学びや気づきにもつながる人選が重要
外部有識者や著名人との対談を実施する意図は、経営方針や事業環境、社会の動向を、外部視点も含めながら伝えることで、深い理解を促し、トップと同じ視座で社会や事業を見るきっかけを提供することにあります。また、トップご自身に新しい気づきや学びを得ていただく機会にもなり、経営にとってさらに有益かつプレミアムなツールとして社内報を成長させることにもつながります。
対談は、「何を語るか」というテーマに加え、「対談の流れ」をしっかり計画しておくことが重要です。初対面でも豊かに語り合うためには、掲載する内容を具体的に双方に伝えておくことがカギとなります。そのために仮台本を作成しますが、事前準備として対談相手の過去の記事や発言を調べる必要があります。また、対談相手は優先順位をつけて複数候補を選定しておくのが望ましいでしょう。
外部の方との対談は、人選やスケジュールなどハードルが高い部分もありますが、実現できると、社内報の価値や社員からの期待は一気に高まりますので、ぜひ実践していただきたいと思います。
人選案
・社会課題に関する有識者
・ESGを語れるアナリスト
・ステークホルダーの代表者
・業界新聞の記者
・企業経営に関する学識者
・先進的な企業の経営者
・社会活動を行っている芸能人
・CMに起用している芸能人
<対談のポイント>
・トップの学びや気づきも促せる
・事前準備がなにより重要
トップ対談の実践でのポイントについてはこちらへ
5「社員との座談会」社員の体験を軸に展開していく
社員との座談会や車座、タウンホールミーティングを記事にする目的は、社員の視点で経営方針やトップの意向、思いを伝えることです。
テーマ設定と事前質問
経営方針をテーマに、社員の活動や意思、意欲、希望、意気込みなどについて、社員が自身の体験によって生まれた疑問や実感をトップに質問し、トップが答える展開にします。
事前に質問を募り、参加者ごとに質問内容を決めておくと、不安解消と同時にスムーズな進行につながります。
質問内容は、上長にも確認し、トップにもあらかじめ伝えておく必要があります。
ファシリテーション
有益な記事のために、極めて重要なカギとなるのが司会者のファシリテーションです。
トップと社員が語り合う場合、どうしてもトップのコメントが多くなってしまいます。社員はトップの前では緊張してしまい、トップの話を「聞く」スタンスになるため、会話になりづらいのが実態です。
そこで、司会者は黙りがちな社員に話を振り、時にはトップに対してもタイミングよく話を受け取りコメントを切り上げ、スムーズに話題を進めたり切り替えたりして、段取り良く会を進めなくてはなりません。
また、会の始まりには、参加者の緊張をほぐすためのアイスブレイクを行うことも司会者の役割です。
参加者の気づきや学び
最後に一人ひとりから気づきを語っていただくか、後日改めて寄稿していただきます。参加して得た気づきや学びが、社員間のコミュニケーションにおいても重要ですので、まとめとして加えたり、参加者のプロフィールと併せて掲載したりするなど、必ず掲載することをおすすめします。
<座談会のポイント>
・ファシリテーターの仕切りが重要
・社員の緊張をほぐしてからスタート
デザイン:要点を大見出しやリード文で示すことが必須
トップの思いや意向を語る記事は、コーナータイトルではなく、見出しやリード文に目が向くようにデザインして、要点をしっかり伝えることが大切です。
トップメッセージの写真が毎回同じだったり、証明写真のようなものを使ったりすると、トップの思いや意向を伝えるという目的にあわないデザインになってしまいます。毎回異なる写真を掲載することが大切です。誰かに話しているようなポーズの写真は、社員ではない他人にメッセージを発信しているように見えてしまうこともあり、トップメッセージの写真はカメラ目線が基本となります。もちろん、カメラ目線の写真とともに他の写真を配置する場合は、インタビュー中の写真も問題はありません。
エッセイやブログは、イラストの方が親しみやすく、ほっこりした印象になり、トップと社員の心の距離感を縮める目的に合っています。似顔絵はもちろん、話題に合ったイラストを入れることもおすすめです。
対談は、いかに対談感を出すかということとテーマに合う表情の写真を用いることが重要です。パラグラフに合わせて真剣なまなざしや、笑顔を適切に配置し、表情で記事の動きを生み出したり、誌面に深みを持たせたりして、社員の興味を惹きつけましょう。
まとめ
トップに関する記事は、社内報のなかでも重要なコンテンツであると同時に、もっとも読まれるコンテンツです。社内報の価値を高めていくためにも、読まれる社内報にするためにも、内容や伝え方、見せ方を工夫して、常に新鮮な誌面になるようにしていただきたいと思います。
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