「祝う」だけで終わらせない! インナーコミュニケーション起点の周年事業戦略(後編)
前編では、周年事業をインナーコミュニケーション起点で活用する意義について解説しました。従業員が企業のビジョンや方向性に共感し、組織としての結束を高めるために、周年が有効な事業機会となり得ます。
後編では、具体的な事例や事業成功のポイントを紹介します。
インナーコミュニケーション起点の周年事業の事例
周年事業をインナーコミュニケーションの一翼と捉え、従業員のエンゲージメントを高めるため、そして組織の成長につなげるためのアプローチには、どのようなものがあるのか見ていきましょう。
事例① A社/意識改革イベント
企業:県内で十数店舗の小売業を展開する企業
背景:企業理念を一新したものの、店舗ごとに業務姿勢に温度差があり、目標達成に向けた意欲の違いが目立つことが課題
取り組み:従業員一人ひとりの意識向上を図るため、周年を活用し全従業員がリアルで参集する社員総会を開催
リアルタイムの「答え合わせ」で意識共有
オープニングコンテンツとして、これまでの企業の歩みを代表や経営陣が本人役として出演するヒストリー映像を放映。その後、どのような「想い」で新たな理念策定に至ったのかについて、代表自らが台本なしで30分間の熱い演説を行いました。
またそれぞれの事業部門が、理念を体現する具体的な取り組みを発表し、部門をまたいだ課題や施策の共有機会を設けました。イベントの最後には「社員パーティー」を催し、従業員たちが受け取った企業の「想い」を、経営陣や仲間同士と語らう場を提供。全従業員がリアルタイムで自分たちの向かうべき道について「答え合わせ」の機会をつくったことで、役職や社歴、雇用形態に関係なく、全員が会社組織の一員であることを改めて意識づけたのです。
これにより目標達成への意欲が高まりました。未来へ向けた組織づくりの施策として、注目したい好例です。
事例② B社/仲間とのつながりを体感する社員総会
企業:従業員約数千人の大手企業
背景:従業員意識調査で、社会認知度も高く事業規模も大きい半面、従業員は所属意識や一体感を持ちづらい状態であることが分かった
取り組み:毎年小規模で行っていた社員総会を、周年のビッグイベントとして開催。数千人が収容できるスタジアムを貸し切り、全従業員参加のもと、自社の規模感を物理的にも体感できる企画演出を盛り込んだ
社内報を活用し従業員を「巻き込む」
スタジアムには細部に至るまで企業カラーやロゴを用いた装飾を施し、そこに約数千人の従業員が一堂に集まることで、仲間の熱量を体感できるイベントとして演出。その他にも、事前に定期発行している社内報でイベントの告知を行い、実施してほしい企画についてアンケートを取るなど、イベントへの参加意欲や期待感を高める施策も行いました。当日は、事前アンケート結果に基づいて、経営陣と同じ年代従業員のクロストークの他、有識者により自社の歩みを紐解くトークセミナーなどを開催。それだけではなく、周年記念号としてイベント直前に発行した社内報を従業員が持参することで、投票に参加できる企画なども盛り込みました。
イベント後には、多くの従業員から「たくさんの仲間の顔が見られてうれしかった」「誇りを感じた」といった声もあり、一体感醸成に大きな成果を感じるイベントとなりました。
周年事業を成功させるポイント
では、単に従業員参加型のイベントを開催し、ユニークな企画を実行すれば周年事業として成功するのかというと、決してそうではありません。開催の規模や事業内容に関係なく、周年事業自体を成功させるためにはいくつかのポイントがあります。
1.周年事業の目的(ゴール)を明確にする
周年を「祝う」だけで終わらせないためにも、目的を明確にすることは重要なステップです。インナーコミュニケーション起点の課題は企業によってさまざまです。先述の事例のように、理念浸透や一体感醸成など自社の課題や状況に合わせて目的を設定し、具体的な施策や企画に落とし込みましょう。
また、数十年に一度の機会です。事業の企画に担当として、若手従業員を積極的アサインすることで、次世代の人材育成にもつなげることができます。そのためにも、なぜ周年事業を実施するのか、どのような価値を持つのか、最終的な目標は何かを明確に設定することで、参画する従業員も事業に関心を持ち、自立的に参加することが期待できます。
2.事業の全体設計と準備
目的やゴールを設定しても、それに向かうための道順は一つではありません。実施する施策や企画の規模感が大きくなるほど、連携する部署も増え、準備期間も長くなるのは当然です。どの部署が主管となり、どのタイミングでどの施策を行うのか、役割分担とスケジュールも踏まえて全体設計をし、準備を確実に進めていくことが重要です。
【全体設計のイメージ】
3.社外広報への活用
前編でもお伝えしたとおり、周年事業をインナーコミュニケーションに生かすことで、従業員が社内で良い波及を生み出し、さらに顧客や取引先など社外ステークホルダーへの発信者となります。しかし、それだけではなく、取り組んだ施策などを積極的に社外広報に活用することで、企業の社会的価値や存在感を高めることもできます。
各種コミュニケーションツールへの転用
インナーコミュニケーション起点で制作した記念誌やビジョン映像を、社外ステークホルダー向けに編集することで、企業の歴史や理念、ビジョンを理解してもらうためのツールとして活用できます。また、経営層と従業員の対話は、採用パンフレットなどに活用することで、自社の目指すべき姿と求める人材像を分かりやすく学生に伝えることもできるでしょう。
Webニュース・業界紙出稿
周年事業の取り組みや成果を、Webニュースや業界紙に積極的に掲載することで、社会的な認知度やプレゼンスを向上させることができます。特に、人的資本経営が重視される昨今においては、インナーコミュニケーション起点での周年事業によって企業文化の醸成や定着に対する成功の取り組みは、企業の価値や魅力を向上させることにもつながります。
まとめ
いかがでしょうか。このように周年は、単なる祝賀の場にとどまりません。自社の課題から明確な目的を持ってメッセージを発信し、従業員とコミュニケーションすることで、周年を事業として戦略的に活用することができます。今回ご紹介した成功事例やポイントを参考に、企業の価値向上と成長を後押しする周年事業に取り組みましょう。
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