社内報コラム

【エンタメの世界はインナーコミュニケーションのヒントであふれている】第6回 ギャップと多角的な視点。意味の無意味化がもたらすもの

【エンタメの世界はインナーコミュニケーションのヒントであふれている】第6回 ギャップと多角的な視点。意味の無意味化がもたらすもの

赤ちゃんが喜ぶTV番組『シナぷしゅ』は、プリミティブなコミュニケーションとギャップによる魅力が盛りだくさん

平日の朝7:30。

朝の支度に追われる時間に、なんとも肩の力が抜けてしまいそうな「シナシナ  シナぷしゅ」というシュールな歌と共に始まるのが、乳幼児向けTV番組、テレビ東京の『シナぷしゅ』です(子育て経験者の方はよく、ご存知かと思います)。

『シナぷしゅ』は、民放初の乳幼児向け番組として、2020年にレギュラー放送が始まりました。「0歳からの映画館デビュー」として、『シナぷしゅ THE MOVIE』が2023年に第一弾、今年の5月には第二弾も公開されています。

乳幼児向けではありますが、大人も引き込まれる魅力がいっぱいの『シナぷしゅ』。そこにはインナーコミュニケーションにおける、ヒントの鉱脈がありそうです。

ギャップ、ギャップ、またギャップ

そもそもの始まりは『シナぷしゅ』のプロデューサー(2児の母)が、テレビが害悪のような話し方をする母親たちに対し、YouTubeの子ども向け動画が何十万回も再生されている現実とのギャップに興味を持ったところから始まったそうです。

そんなギャップを感じたところから始まった『シナぷしゅ』にはギャップの面白さが詰まっています。

『シナぷしゅ』は乳幼児向けのシンプルな内容に見えますが、大人が見ると、そのシュールな表現や予測不能な展開に意表を突かれることもしばしばです。子供には当たり前のことが、大人には新鮮に感じられるという認識のギャップが面白さにつながっています。

“ぷしゅぷしゅ”をはじめとするキャラクターたちは、その愛らしい外見とは裏腹に、大胆な行動や、意図が読めない動きを見せることがあります。この見た目と行動のギャップが萌えポイントにもなっています。

子供にも分かりやすく、シンプルに構成されているコーナーが、大人が深読みしてしまうことを誘い、表層的な分かりやすさと奥深い(かもしれない)テーマのギャップに、知的好奇心をくすぐられてしまいます。

『シナぷしゅ』にはさまざまなコーナーがありますが、例えば「浮世絵らぼ」というコーナーでは、子供向けのシンプルな実験内容なのに、大人向け浮世絵キャラクターが実験者を演じるというギャップが目を引いていました。

他にも、BGMの使い方に面白いギャップがあり、独特のユーモアを演出しています。その一例として「どてっ」というコーナーを見てみましょう。

「どてっ」のコーナーでは、いろいろなものが倒れるだけのシンプルな映像(背景には何もありません)に、「どてっ」「ぱたっ」「バタン」などの声を当てていますが、BGMでは例えば「ボレロ」を使っていたりします。「ボレロ」の特徴は、同じ旋律が繰り返され(リフ)ながら徐々にクレッシェンドしていくところにあります。

壮大でドラマチックな曲調のボレロと、さまざまなものが倒れるだけという映像の動きのギャップはシュールで、ただただ倒れていくだけという映像のリフに「ボレロ」のリフがシンクロし、いつのまにかギャップが心地よくなってくるという仕掛けにもなっています。

おそらく、このシンクロ効果が乳幼児にも心地良く、大人ともども見入ってしまうのではないかと想像します。(余談ですが、知人の一歳になるお子さんは、トーキングヘッズがかかると踊り出すそうです。)

これらのギャップを生み出すには、多角的な視点が重要です。「あれもこれも、こうしてみたらどうだろう」「こっちから見たらどうみえるだろう」などなどの試行錯誤を積み重ねた結果が、子供だけでなく大人も『シナぷしゅ』が楽しめる要因の一つを生み出したと言えるでしょう。予定調和ではない、意表を突くギャップの面白さがこの番組の魅力なのかもしれません。

そこに意味は必要なのか?

例えば、先に述べた「どてっ」のコーナーには何の意味があるのか? と、問われたら、こう答えます。「意味はありません」。

それは、一種のプリミティブコミュニケーションだからです。インナーコミュニケーションにおける難しさのひとつに、意味の過剰があると私は考えています。すなわち、報告書、通達、目標管理などのプレッシャーがもたらす、本質の隠蔽です。

『シナぷしゅ』というコンテンツが我々に問いかけているものは、意味の手前に立ち返ることによって、論理的な説明など不要な、ただただ、事象そのものが強烈なインパクトを与えるのではないか? ということなのかもしれません。

意味のない、予定調和のない、事象。そこに遊び心や余白を取り入れることで、創造性や自発性を刺激するインナーコミュニケーションが生まれるかもしれません。

直接的な体験、心地よい反復、そして予期せぬギャップの絶妙なブレンド。そこには意味など不要な、より本質的で感情に訴えかけるエンゲージメントを生み出すことができる、何かの鉱脈がありそうです。

 

『シナぷしゅ』は忙しい朝にオンエアされていますが、YouTubeチャンネルもありますので、一度のぞいてみてはいかがでしょうか。ハマってしまっても責任はとれませんが…。

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